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死の宣告

牢屋に入れられた翌日から、私は尋問という拷問を受けることになった。

鎖でつながれ尋問室へと連れていかれる。


他に仲間がいないのか、本当に私が教祖なのか。

私が実行したのかもしれないが、中身が違う為本当に何もわからない。

まだ仲間がいる、ノア王子が危険だと訴えても、言い逃れているとしか思われなかった。


両手を縛られ吊るされて、証言をしない私に何度も何度も鞭が振り下ろされる。

永遠とも思える時間。

ビシィッッ


「ああああああああああぁぁ、はぁ、はぁ、犯人はもう一人いるわ。何度も言うけれど、ノア王子が危ないの!リリーも犯人なのよ!」


背中に鞭が触れるたびに、ひどい痛みと悲鳴が轟く。

その姿をあざ笑う騎士たち。

私が一緒に仕事していた同僚の姿もそこにあった。


「ふんっ、戯言を。リリーが犯人などありえない。調べはもうついているんだ。入国したのはガブリエルが手配し間違いなく二人。徹底的に洗いなおしたが、黒の教団はお前たち以外入国していない。それにお前を捕らえたのは彼女だぞ。まぁ、どうでもいいが。お前のことは十分に苦しめろと上からの命令だからな」


ビシッ、バチッ


「やあああああああああああ、あ”あ”あ”ッッ、はぁ、はぁ、そんなッッ、だけどこれは本当のなの、ノア王子が……ぃやぁ、ああぁぁぁ、ああああああ”あ”ぁ”」


「はぁん、まだまだ元気そうだな」


バシンッ、バチッ


「ッッ、ああああああああああああああああ、くぅ……うぅ……。このまま死んでもかまわない。だけどリリーを野放しにしちゃだめなの。お願い聞いて……誰でもいいから、ノア王子に伝えて……ぃやああ”あ”あ”ぁ”」


「まだ言うのか、強情な奴だ、さっさとくたばれ」


鞭が振り下ろされるたびに、痛みに失神しそうになる。

だけど私は気力で耐えながら、何度も何度も訴えかけた。

私が死刑になるのは構わない。

だけどこのままリリーを野放しには出来ない。

少しでも私の言葉が届けば……ノア王子が救われる。

今の私にできる事は、死を受け入れた上での抗議。

中身が入れ替わったなんて……誰も信じないから。

リリーが私たちの仲間なのだと、そう伝える方法を思いつかなかった。

ノア王子を助けたい、その信念だけで耐えてきたが……結局何も変わらなかった。


背中は蚯蚓腫れでジンジンと痛む。

治る前にまた尋問が始めり、背中はひどい有様だろう。

今は何時なのかもわからない。

どれぐらい時が経過しているのだろう。

日の当たらない地下室での生活。

永遠ともいえる苦しく惨めで苦痛な時間が過ぎ去っていく。


食事は最低限のものしか与えられず日に日に衰弱し、戦う気力が削がれていく日々。

起き上がることすらできないほど衰弱したある日、牢屋に一人の騎士がやってきた。


「お前の処刑は明日に決定した」


死刑宣告。

騎士はニヤリと口角を上げると、横たわる私を見下ろしていた。


「リリーは私たちの仲間よ……リリーに気を付けて……ノア王子にどうか……」


重い口を動かし何とか言葉にするが、騎士は唾を吐きかけ、侮蔑の表情を浮かべ去っていった。


★おまけ(ノア王子視点)★


ようやく犯人が捕まり、トレーシーは隣国へ帰国した。

直接手を下せないことを悔しがっていたが、こちらで十分に痛めつけ処刑すると説得し帰らせた。

何事もなく隣国へ到着したとの報告を聞き、平穏な日々が戻ってくる。

彼は今から大変だろう、荒れた国を立て直すのだから。


リリーは僕の婚約者となり、宿舎を出て城で生活することになった。

やはり以前好きだと話していた小説と同じセッティングをして正解だった。

即答してくれたのはビックリしたけれど、それが彼女の答えなのだ。


無事に引っ越しが終わり、僕は彼女の部屋へカーネーションの花束を手にやってくる。


「リリー、いいかな?」


扉を開けると、ドレス姿の彼女は椅子に腰かけている。

前回は白色を送ったから、今回は桃色。

青色のカーネーションがあれば完璧だったんだけれど、ないものはしょうがない。

彼女へ花束を渡すと、なぜか眉を寄せた。


「カーネーションですか……地味な花ですわ。できればバラとかのほうが嬉しいのですけど」


その言葉に目が点になると、彼女の瞳を見つめる。


「バラ?」


「えぇ、バラは派手で美しいですもの。一つ一つの花びらが高貴でしょう~」


うっとりとした表情を浮かべながら、リリーいらないと花束をテーブルへ戻す。

つい先日カーネーションを嬉しいと言っていたはずだけどれも。

この短期間でバラが好きになったのか、それとも前回は僕に遠慮して言えなかったの?

いや、彼女の表情に嘘はなかったと思うんだけれど。


彼女はとても分かりやすい。

感情がすぐに表に出るから。

だけど今の彼女は……表情が上手く読み取れない。

僕は苦笑いを浮かべると、突っ返された花束を手に戻した。


「そうだったんだ。なら次はバラを持ってくるよ。そういえばランチはもう食べたかな?ウサギの料理が評判の店をみつけたんだ、よかったら」


「ウサギの肉……?あはは、そんなものいりませんわ。甘いものがいいですの」


うん……好きな食べ物はウサギのステーキだったはず?

僕はノートを取り出すと、パラパラとめくる。

そこにはやはり好きな食べ物は兎のステーキと書かれ、甘いものは苦手だとのメモも添えられていた。

僕は首をかしげながらも笑みを作ると、リリーへ問いかける。


「ねぇ、好きな色は?」


「もちろん黒ですわ~。何にも染まらない美しい色」


どういうこと……?

僕のメモとすべてが違う。

それに雰囲気もなんだかいつもと違うように感じる。

僕の知っているリリーではない。

いったいこれは……?

僕は彼女を見つめたままに固まると、仮面のような笑顔が映ったのだった。

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