第73話 春になれば
季節は春…
やっと済んだ…半年…長かった…
まだ全く街は出来て居ないが、街の設計や工事の進行などは、我が家の知恵袋サントスさんにバトンタッチ出来た。
そして、我がヨルドの街の高度な教育を受けた、あのヨルドの街の戦争孤児達が沢山、我が家の新たなる文官職に成ってくれ、サントスさんを助けてくれるので、お仕事がはかどる、はかどる。
新たな街も、ヨルドの街もお任せでも問題なくまわる…
それに、狩りパークで強くなった冒険者達は、普通のクエストもガンガンこなし、冒険者ランクを上げた後、新しい街の兵士団に名乗り出てくれて、現在は、ヨルドの街の兵士長だった経験のある、エドガー騎馬隊長を団長として、タリウスと二人で、仮設の警備隊として新兵の教育も兼ねて工事現場の警備を指揮している。
サントスさんのお手伝いにガングロをつけたのだが、サントスさんとえらく気が合うみたいで、ガングロ情報網で、情報を集めては、二人でなにやら企んでいるようだ。
もう、可能ならば、サントス国王として頑張ってほしいよ…
ただ、凝り性の性格から、サントスさんは、ガングロと一緒に新たに作る街の地下になんだか凄い闇の一族の国を作ってしまっているらしい…
「他国にも情報網をはる!」
と、意気込んでいるが…頼りにはなるが、諜報員がアレなので何か嫌だ…
まぁ、任せたのだから文句は言わないけどね…
そして、
なんと、ヨルドからファミリー牧場とサファリパークの外周をぐるりと巡るミニ列車が完成したと報告が入り見に行ったのだが、
魔鉱鉄のボディーで寝そべったクマ五郎がモチーフだった。
なんで、クマ五郎?と、思ったが…ゴング爺さんの
「可愛いじゃろ!?」
で、俺は質問を飲み込んだ。
魔鉱鉄の黒いクマ五郎がゴーレムで魔石を燃料に動き、アリス達が作った溝に沿って走る様な作りにしてある。
レールは高価だし、補修も大変なので、色々試した結果ミニ四駆みたいなベアリングローラーでカーブを曲がる方式が採用され、ミニ四駆のコースの様な溝ならば、野生の魔物が迷いこんでも逃げ出し易いだろうという理由からだ。
ガタンゴトンではなくて、ゴロゴロと音がするが、これはこれで味がある。
タイヤの溝と車体に付いているローラー用の溝の二段構えでコースアウトの危険性を回避して、乗り心地も色々と試行錯誤された快適なミニ列車はヨルドの新たな名物になっている。
しかし、ここからが本番で、昼夜問わず走り続けて、しかも高速で走れる列車が出来れば、街と街の行き来が盛んになり、物流が楽になるのだ。
ゴング爺さん達列車作成チームが気合い十分で、新たに作られた大きな列車工房でトンテンカンしている…
唯一少し不安なのは、現在やたらデカいクマのパーツを作っていることだ…
テーマパークだからこそのクマ列車では無かったの?
トーマス的なのよりは可愛いけど…まぁ、クマ…可愛いから良いか…と諦める事にした。
いよいよ列車の運行の為の駅の段取りに移るのだが、これはファミリー商会のメンバーを使うことにした。
運営はファミリー商会に委託して将来は各地の物流状況に合わせて、拡大していく予定だ。
ちなみに、現在のファミリー牧場の責任者はライラさんに頼んでいる…
シシリーさんとの結婚式の時に、ファミリー商会、ヨルド支店長のヘンリーさんに、
「支店長も、そろそろどうです?結婚…」
と、聞くと真っ赤になって、
「ふ、ふぁい!そ、そうですね…」
と…本当に敏腕セールスマンなのか不安になるほどキョドっていた。
お祝いにヨルドに来てくれていたヘンリーさんの兄夫婦、ファミリー商会本店の責任者パーシーさんとポプラさん夫婦に相談したところ、
二人はキャッキャと楽しみながらファミリー牧場のミルキーカウ部門をライラ牧場にして転勤を命じたのだ…
それから二人は最近、デートなどを重ねている…
悲しい過去が有るライラさんには、是非とも幸せになって欲しいと願う。
そして、その時についでに、ポプラさんから驚くべき相談を受けたのだ。
なんと、拠点のお菓子部門のコルトさんが、ノーラ母さんにホの字らしい…
いや、ポプラさんホの字って…また古い…と思うが、それよりも、我らがノーラ母さんをだと!
これは確認せねば!!
と、結婚を祝いに来てくれたコルトさんをコッソリ呼びだして、詳しく聞いてみたら、本気の様だった。
俺が、
「昆虫合体して、敵将を討ち取るノーラさんですが、宜しくお願いします。」
というと、コルトさんは、
「そこがまた、良いんです…」
とモジモジしていた。
俺が、
「ライラさんが引っ越しになるから、ノーラ母さんを支えてあげて下さいね。」
と頭をさげると、
コルトさんは、
「菓子作り以外にも本気な私を見ていて下さい!」
と、ニコっと笑っていた…
しかし、ノーラ母さんよりも先に結婚しちゃったのは親不孝だったかな?
まぁ、いろいろ有るが、あちらこちらで幸せなカップルが誕生する良い春が訪れている…。
「いやぁ、春だねぇ~。」
と俺は、咲き乱れる花を眺めながらホッコリしていたら、シシリーさんに、
「ポルタ、次が待ってるよ…」
と言われた…俺がヒョイと見たシシリーさんの後ろには、嫁立候補者が横一列に並んでいる…
「えっ、もうシシリーさんとの新婚生活は終了ですか?」
と驚く俺にシシリーさんは、
「式はいつでも良いけど、私だけ奥さんは寂しい…」
という…留守がちだったし、仲良しの中で立場が違うの自分だけだからなぁ…言い返せないよ…
ルルさんも留守がちな俺に寂しさを覚えているらしく、
しかも、なんとアゼルにまで春が来て彼女が出来た…
まぁ、アゼルは何処でもモテモテだったけど…
しかし、その事によりメリザが焦り、
「私は最後でも構わない」
と健気な事を言っていた。
ジェラも、
『このペースなら何年かかってしまうのか?』
と心配になっているようで、
列車完成に合わせて結婚式をしても良いし、街が完成した時でも構わない…
ただ、寂しかったり、不安にさせたり、放置するのはよろしくないな…と反省して、
デートと云う名の個別面談を行うが、三人共に本気らしい…
ルルさんは、
「ポルタ様、とりあえず私だけ(さん)付けは寂しいです。
皆より距離が有る気がします。」
と言われ、
俺が、
「だったら、俺も(様)は無しでよろしく、ルル」
と言って、「ポルタ」、「ルル」とぎこちなく呼び合うデートをした。
メリザは、
「アゼルがラブラブで気まずいから、依頼にも誘えないし、アタシ、もう、ポルタ兄ぃと行動する!」
とか言い出す…
色々と理由を付けているが、
メリザの性格は誰よりも良く知っている…
これは、『一緒に居たい!寂しいよ~!!』の意味である…
アゼルもよく言ってたな、
「あの、メリザの相手出来るのポルタ兄ぃぐらいだ。」と…
有る意味、一番気心が知れた女性ではある…
シェラは、
孤児院の頃から、アゼルとメリザをずっと羨ましく思っていたらしい。
いつも一緒にいる身内が居て…
そんな中で、いつも俺がシェラと手を繋いだりと、
ペアで遊び回る二卵性双子と、
俺とシェラの組に別れて居ることが多かった事もあり、
将来、お兄ちゃんのお嫁さんになって本当の家族になるのが夢だったらしい…
「院のじゃ無く、本当の家族を作るならポルタ兄ぃとじゃなきゃ嫌っ!」
と、有る意味、プロポーズをされてしまった…
…これは本腰を入れる必要があるな…と覚悟を決めた俺だった。
そうと決まれば、先ずは素材集めだ。
隠密騎士団三名を連れて帝都に転移して、
一人は希少金属等の買い出しを頼み、残りで、カーバンクルの居る森を目指す。
索敵能力の高い隠密騎士団にかかればレア魔物と云えど一発である…
「ニィー?」と可愛らしい鳴き声のカーバンクルをサクッっと狩る…
物凄い罪悪感に襲われるが…仕方ないのだ…許してくれ…
ルビーはルル、
エメラルドはメリザ
サファイアはシェラと、三人用の婚約指輪用のカーバンクル産の最高級の宝石が手に入った。
ちなみに、サファリにもカーバンクルは居るが、流石に住民に愛されている展示魔物を額の宝石欲しさに殺すほどゲスでは無い…だから野生のカーバンクル達…すまん…
というイベントがあり、あとは、婚約指輪はベルト爺さんに依頼するのだが、
結婚指輪は、前回同様にビューティーさんペアさん親子に依頼して、毒無効、精神攻撃耐性の付与された物を依頼する。
転移のリストに新しい街を加える際に、ガイナッツ王国を外して登録しようか?と悩んだが、オーツを外して登録して良かった…
凄腕付与師はペアさんぐらいしか知らないからな…
そして、シシリーさんの時と同じデザインの婚約指輪と結婚指輪が出来たのが夏の終わりだった。
そして、プロポーズをするのだが…
何故か、三人からは、
「もし、プロポーズされるなら三人一緒で!」
と注文されている。
シシリーの時は仕方ないが、
残りのメンバーは、プロポーズで、三人に優劣が現れるのでは?と不安になり、
「可能な限り同じで!」と…
多分、自分に自信の無いメリザ辺りが言い出したのだろうが…
何とも色気の無い注文だ…プロポーズの思い出が1/3に薄まらないか?などと、考えていたら
ルルからは、
「私はシシリーさんと同じカフェでして欲しいです。」
と、お願いされ、シェラは、
「シシリーさんの時のプロポーズの話を聞いて憧れてたから私も!」
と言い出し、
結局、カフェでパンケーキをはさみ、指輪を渡してチューの流れを同時進行で…
本人達はとても幸せなそうだったのだが、
俺は、かなり恥ずかしいかった。
そして、店に居合わせた観客は…かなりドン引きだった…
後日カフェのオーナーから、
「ポルタ様、恋人たちの聖地だったのに、現在は、三股の聖地として、モテたい男性客が増えて、店の味を楽しみに来た女性客に声をかけてフラれては、
御利益が無い!と来なくなり、
常連だった女性は、声を掛けられるのが面倒臭い!と来なくなり…勘弁してください。」
と、泣き付かれた。
何か…ごめんよ…
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