第72話 やってやる
ヨルド帰り、一晩頑張って
…って、違うんだからね!
〈列車〉どうしようかなぁ~って、頑張って考えたって意味なんだからね!!
べ、別にイチャイチャを一晩中頑張ったって、言って…
まぁ、この世界に新たなモノが生まれる為に絞り出した結果、
純粋な〈蒸気機関〉じゃなくても良いんじゃない?
という結果に成った。
つまり、手こぎトロッコを作れば何かしらの魔法や魔道具を駆使して、
もっと簡単な〈機関〉が作れないか?と…
以前書いた再現出来そうな知恵のメモをアイテムボックスから引っ張りだして、
新たに〈記録〉と〈検索〉を駆使して前世と、帝都の図書館で目に焼き付けた知識を総動員して考え出したのが、
〈ゴーレム機関車〉だ。
錬金術師がゴーレムコアを使い作り出す〈人造魔物〉で、魔石をエネルギーに簡単な作業をこなす物である。
鉄ヲタ程の知識が有ればよかたのだろうが…
知っているSLの知識をまとめて、書き上げたイメージ図を手に、ゴング爺さんの工房を訪ねると、
ゴング爺さんは朝早くから弟子達と馬車の制作や
装備品の作成に励んでいた…
俺が、
「ゴング爺さん!新しいモノ作って欲しいんだけどぉ~」
と、工房の入り口から声をかけると、
トンテンカンと鳴っていた作業の音が止み、次の瞬間、
〈ドドドドッ!〉っと物凄い勢いで、ゴング爺さんと弟子が雪崩の様に玄関に押し寄せる…
ゴング爺さんが、
「この時を待っておったぞ!
さぁ、早く、ワシに知識を授けてくれ知恵の神の使徒様!!」
〈…そんな呼ばれ方もしてたよね…忘れてた…〉
俺が、
「今度は街と街を結ぶ定期輸送手段というのか…」
と、言いながら紙束をアイテムボックスから取り出していると、
爺さんが、
「馬車の注文かのぅ…」
と、あからさまにテンションを下げるが、
〈ドサリ〉とメモの束をテーブルに広げた瞬間にゴング爺さんも弟子達も目の色を変える。
徐々にテンションが上がる爺さんと弟子に、
一つ一つ説明をすると
「ほう」・「なるほど」・「まさかぁ」
等と言いながら話を聞いた後で、
ゴング爺さんは弟子を連れて工房の奥に消えて、
〈ゴンゴン〉〈カンカン〉と何かを作り始めた。
〈なんか、前にもこんなこと有ったな…〉
と考えていると、
「こんな感じか…?
えっ!…やだ…嘘…スッゴい!」
と…
〈何が凄いのか?〉
そして、暫くゴソゴソしたかと思うと、工房の奥から、
「師ぃぃぃ匠ぉぉぉぉぉ!」
と、〈どこの東方不敗だよ!〉みたいな叫び声と共に
弟子二人が乗った、馬車の部品を利用した手押しトロッコが走って来た。
レールが無いので、暴走気味のトロッコは入り口を突き破り外へと飛び出す…
唖然としてトロッコを見送った俺が振り向くと、
ゴング爺さんと残りの弟子が土下座をしており、
「是非とも我らに〈列車〉を作らせてください!」
と、お願いしているが…
「まず、弟子の二人を助けに行ってあげて…」
と指示した。
そして、
先ほどのトロッコを資料に、
ゴング・マット・ベルトの職人組と
新たにゴング爺さんに拉致られて来た、錬金術師の〈コーナー〉爺さんは
「旨い酒が有るから」とガイナッツから最近呼び寄せられて酒作りを手伝っていたらしい。
それと〈アリス〉を入れたメンバーが
〈列車計画〉チームとして
〈列車〉と〈ゴーレム機関〉と〈線路〉をつくる事になる、
まずは少し小さい物をヨルドのまちからファミリー牧場までぐるりと巡る〈アトラクション〉程度のものから試作して貰う事にした。
ゴング爺さんが、
「時間がかかるかも知れんが任せてくれ。」
と、やる気満々で胸を〈ドン〉と、叩いている。
俺は、
「なら、安心だね…よろしく。」
と告げて、再びオーツの街へと向かった。
オーツの街に〈転移〉して城に移動すると、
〈シルバ〉副騎士団長が、ニヤニヤしながら、
「ポルタ様、もっとユックリでも良かったのに…」
と、言ってきて、
他の騎士団も、〈うん、うん〉と頷く…
…何だか皆の気遣いが返って…辛い…
もう、とっとと終わらせて帰ろう…
帰って、ユックリ暮らす…って…俺の本拠地何処に成るんだ?
ヨルド伯爵だが、三年後にはこの土地の領主になる予定だし…
こっちが本拠地に成るのかな?
…もう、考えるの面倒臭く成ってきたから、
王様とか辞退して議員さんに国の運営を任せてしまおうかな…?
でもそれには、学校を作って…って、これは当面ユックリ出来ないパターンだな…
一旦大人しく王様をやって、国を立て直すのが先だな…
…はい、もう、滅茶苦茶凄い国にしてやりますよ!
やればいいんでしょ!!
という事で〈オーツ〉の街から東に2日程度、騎士団二名を引き連れて、
北には山脈、
西には湖
南には広大な少し渇いた土地が広がり
東には魔の森の端が見える
開拓するには持ってこいな、オーツの街と魔王城のほぼ中間の場所に到着した。
〈来る途中から目をつけていた場所だ。〉
北の山脈からの水が川となり集まった綺麗な湖…
なぜ、〈滋賀〉に縁の勇者達がここに街を作らなかったのか…?
全ての街や村は西側沿岸を中心に南北に配置してある…
魔の森がそんなに嫌いだったのか?…
それとも、琵琶湖の東側出身者で西に広大な水辺が無いと嫌だったのか…?
まぁ、理由は解らないが空いているのなら有効に活用させて貰う事にする。
先ずは土木作業員の現地採用だ…
〈アリス〉達は、この後〈列車〉の目処が立ち次第、〈オーツ〉から〈ヨルド〉に線路を作って貰うので待機してもらっている。
俺は、空に向かい、
「街作りぃぃぃ、手伝ってくれるぅ子!
よぉっといでぇぇぇぇぇ!!」
と叫ぶ…
〈シーン〉と軽い耳鳴りがするぐらいの静けさ…
大声を張り上げて、息を乱した俺の呼吸だけが〈むふぅ~、むふぅ~〉と聞こえる…
騎士団二名の可哀想な子を見るような視線が痛い…
〈ポルタは仲間を呼んだ…しかし、誰も来なかった…〉
みたいなテキストが頭に流れる。
〈…恥っずぅぅぅぅぅ…〉
耳まで真っ赤に成って、〈恥ずか死〉にそうに成った時に、
四方から黒くうねる大群が押し寄せてくる…
〈良かったぁ!〉
と思う反面、
〈ちょっと…多すぎない…?〉
と不安になる…
我先にと先頭を奪い合いながら迫りくる虫達…
徐々に集まり、まだまだ増えていく…
〈魔の森の西より参りました。築城蟻の一族二千でございます。〉
とかは、まだ解るが、
〈周辺の虫、全て集まってみた!〉
みたいな多種多様な虫さん達…数万匹…
〈漏れイブハート〉をビッシャビシャに発動させても気を失いそう…
彼らは、
「陛下のお好きな者にどうか指示を!」
と頭を下げるが…てんとう虫君は何が出来るのよ…
可能ならば先日の俺とシシリーの結婚式で赤・青・黄色の衣装でサンバでも踊って欲しかったよ…
俺が、
「今回は、街作りだから、〈穴堀り〉や〈壁作り〉が得意な者の採用だよ…」
というと、
〈陛下、そこを何とか!〉
と食い下がるカマキリさんやキリギリスさん…
〈何か前より熱心だな…みんな…もしかして、虫の王のスキルがマックスに成った?〉
等と考えれながらも面接を続けて、
塹壕蟻の一家、約1500は〈アリサ〉と名付けて、〈築城蟻〉へと
築城蟻の一家、役2000は〈アーリン〉と名付けて、〈城蟻〉に成った。
そして、初めましての虫さん
岩蜂という、土をこねて、〈接着〉と〈硬化〉のスキルで岩の様な巣を作る蜂一家500の女王に〈レベッカ〉と名付けた…ロックで女王だけに…
すると、ラグビーボールぐらいの大きさから倍以上になり、石まで砕ける強力な顎の〈石食い蜂〉という蜂に進化した。
別に石が主食ではなく、石を砕いてより頑丈な巣の材料にしているだけだ。
中には岩から出てきた鉱物資源のみで巣をつくる猛者もいて、別名〈宝蜂〉ともいわれる。
さて四千は採用したが、あと数万はお帰り願いたい…
〈そこを何とか!〉と仲間になりたそうに見つめる数万の虫…、
既に軽く体が痒く成っているが、
ここは〈ビシッ〉と、
「王命である!
残りの者は、各自の住み処にて日々の暮らしに戻れ!」
と告げると、
少し寂しそうに、
「御意っ」と言って帰って行った…
なんか、少し罪悪感が…
〈街が出来たら、非正規の防衛隊として近所に地下シェルター付きの森でも整備して再度募集をするかな…〉
などと思いつつ、
先ずは開拓村を建設予定地の近くに建てる所からだ。
勿論、蟻と蜂の巣も作らなければならない…
旧ヨルドの街の様に空堀で囲み、堀の壁面から入れる地下帝国に建設虫チームに住んでもらい、掘った土を使い壁と家を建てていく。
そして、
開拓村は割りとすぐに完成した。
完成した頃には〈オーツ〉の街に千人の元貴族達が到着し、住民達と国の為に頑張ってくれていて、
騎士団も一旦引き揚げてきている。
当初住民達が、〈俺に〉反感を持って居たらしく、
「国を取り返すなら民兵に志願します。」
などと、言っていたらしいが、
元王妃一家が中心となりこれまでの経緯の説明と、団結して新たな国を盛り立てるために奮闘してくれている。
おかげで開拓村に職人が旧ヨーグモス王国内からまばらでは有るが集まってくれた。
一度〈ガングロ〉からの報告で、
「市民を集めて〈魔族排斥〉の為に動いていた男爵婦人が、夫の仇を討つために武器を揃えている」
と連絡が有ったので、
ガングロ達〈KGB〉こと、〈監視する〉〈Gの〉〈部隊〉に対処をお願いした…
現在は旧ヨーグモス城の牢にて反省中らしいが、どんなお仕置きをされて居るのやら…
帝都の牢から解放されたとたんに、なぜ投獄されたかも忘れてしまう程の、根強い〈反魔族教育〉と〈俺への恨み〉は、直ぐにどうこうは出来ないのかも知れない…
厄介だな…
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