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仲間になりたそうに見ないで下さい  作者: ヒコしろう


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第69話 戦よりも大変な戦後処理

呆気なく終わった俺達と反魔族派閥のアホ達の戦争は、皇帝陛下の到着を待って報告をするだけとなっている。


俺は、暇潰しがてらにアリス達特製の魔の森の土作りの小屋で、サタンサーベル自体を拷問にかけている…


あのあと、自称サタンのサタンサーベルは雷撃を何とか耐えたので、ワイバーン騎士を一人ゴング爺さんの工房に使いに出して、アダマンタイトのヤスリを借りて来てもらったのだ。


直接触れば俺も〈魔王サタン〉の支配下に入って操られる可能性をミゲールさんが教えてくれていたので、直接触らない様に気を使い、


気長に棒ヤスリでサタンサーベルの細い刀身を鼻歌混じりで削っている。


ゴリゴリと削る度に断末魔の様な声をあげる自称サタン…


「もう、止めてくれ!」


と泣きながら懇願するまで拷問を続けてやった。


削り出される金属は、なんとオリハルコンで、既に茶碗に一杯程度、ひと財産ほど削り出している…

半べそで自白をはじめた、自称サタンの話では、

彼は異世界…というか、異次元の魔界から召喚されたオリジナルの悪魔の一人で、大昔の召喚士ソロモン一族に呼び出され、理不尽に攻めてきた敵国を複数の悪魔や魔物と共に退けた太古の英雄の一人らしい…

そして、その後、ソロモン一族の契約者である巫女と結婚して、


その女性が寿命で亡くなると共に魔界に帰される契約だったのだが、その間、愛した女性を守る為に、自分の魂の一部を封じた武器であるサタンサーベルを作り出して彼女に持たせたとの事…


『なんだ嫁さん思いのいいヤツか?』


と、思いながら、俺はヤスリをかける手を一瞬止めて、彼の話の続きを聞く。


見事に敵国を滅ぼした悪魔とソロモン一族は、同じように壊滅的に壊された状態から国を興して初代の王座に着いたのが魔界の王サタンと姫巫女だったのだが、

ある日、異界の門を開けて〈イナゴの軍勢〉を呼び出せる腹心のアバドンに裏切られ、特殊なクリスタルに封じ込められ、しかも異空間へと封印されたとのだそうだ。


そして、王妃の巫女もアバドンの手にかかり国は乗っ取られたと…


そして、困った事に、巫女の命が尽きた瞬間に、サタンの召喚契約が終了して受肉した肉体から精神体に戻るはずが、

既にメインのサタンの魂が肉体ごと、アバドン率いる反乱魔王の力を増すクリスタルの生体部品にされた上に異界に封印された為に、契約が遂行されずにサタンとしての存在は消滅し、


サタンサーベルは悠久の時を呪われたインテリジェンスウェポンとして魔王サタンの魂の欠片を封じたまま生きているらしい…


『少し気の毒に思えてきた…』


そして、元が精神体の悪魔のサタン君は、魂を集めて、切れ端の魂から元の状態…つまり、悪魔の王サタンとして復活して、異次元の魔界に戻り、アバドンの野郎を嫁の分までシバき回すのが目的らしいく、だから、触れた者の野心や欲望を刺激して、魂が沢山集まる戦場を目指していた…との事だった。


そして、サタンサーベルは、


「あの、いい加減ゴリゴリ止めてもらっていいですか?

折角集めた魂がじわじわ刀身の再生の為に使われます。

お願いですから止めて下さい…」


と俺に泣きついてきた。


俺は、


「折角集めた魂が減るのならば、ゴリゴリ祭りは終了してやる。」


と祭りの閉会を宣言すると、サタンサーベルは、


「ありがとうございます、ご主人様!」


と、だいぶ低姿勢に成った。


俺は、サタンサーベルに、


「今の器のおっさんの魂って返せる?」


と聞くと、サタンサーベルは


「えー、返すのですか?」


と、グズるが、(返せない訳ではないらしい…)


俺が、


「一旦返して、多分このオッサン、お前に精神支配を受ける前に、宝物庫破りや、自分に都合の良い密偵を皇帝陛下に差し出してたから、良くて死罪だから、

死刑にされた魂を改め食べたらいい」


と告げると、


「それは名案!決めました。

この、サタンの命、ご主人様に預けます。!!」


と騒ぎだす。


俺が、


「えー嫌だよ、精神支配とかしそうだもん…」


と渋ると、サタンは、


「悪魔の誓いは絶対です。

我が命を差し出しても構いません、

ご主人様とご主人様のお味方には力を使いません。

なので、この悪魔王サタン、一生のお願いです。

我が復活しアバドンをぶん殴れる機会をお与え下さい。

このとおりぃぃぃぃぃ!!」


というが、地面に突き刺さった剣とほぼ石化しているオッサン、


どちらを見ても(どのとおり)か解らない…


俺は、


「魂って、何の魂でも良いの?」


と聞くと、サタンは


「この際スライムでも、ドラゴンでも何でも量さえ満たせれば構いません!

規定量に達したらもう…贅沢など言いませんので!!」


と答えたので、


「分かったよ、お前の解放に力を貸してやる…契約成立だ。」


と答えると、俺の体と、サタンサーベルが光り出した。


驚く俺に、


『契約完了しました。ご主人様』


と心に直接話しかけてきたサタンサーベルと、


「ここは?」


と、言いながら辺りを確認する、ほぼ石像のオッサン…


従魔契約の時も光ったから、何かしらの契約の現象なんだろうな…と俺が考えていたら、


『ご明察です!』


と答えるサタン…

どうも、思考も何もかも筒抜けで、影の中のガタ郎よりもリンクが、強い様だ…


ある意味厄介なやつを仲間にしたかもしれないな…早い目に解放してやろう…と考えると、


『やったぁ、ありがとうございます。』


と喜ぶサタンだが、新婚生活をコイツとシシリーと三人で過ごすのは勘弁だからである…結婚を延期してでも狩りまくって成仏さしてやろう!と、考えていると、


『成仏でなくて、解放ですから!』


と…サタンがツッコミが入る…


俺は、更に『絶対ソッコーで魔界に還す!』と心に強く誓った。



それから、日は過ぎ、忍者の末裔と勇者の末裔は、半月後に到着した帝国軍に引渡し、皇帝陛下達はそのままヨーグモス王国の仕置きに向かわれた…

かなり皇帝陛下はお怒りだった様で、国が一つ消えて、ヨーグモス王国の貴族達は、領地、家財没収のうえお取り潰しになり、多くの罪人や奴隷や平民を産み出した。


一部戦争に反対しヨーグモス城に投獄されていた貴族もいたが、彼らは家財そのままで、領地の村長的なポジションに落ち着き、しばらくは皇帝陛下の天領として扱われるらしい…


そして、忍者の末裔と勇者の末裔の一族、作戦を企てた文官職の一族と戦死した貴族の一家全員が帝都の大監獄に投獄されている…


ある意味勝手に旦那が暴れて巻き添えに成ってしまった奥さんや家族も居たみたいだが、皇帝陛下の決定は絶対だ…

それから、国のバタバタで、結婚式は延期され、二万を超える魂を集める為に俺は、騎士団監視のもと、ヨルドの近場の森や山や水辺に魔物を絶滅させないように気をつけながら狩りまくっていた。


すると、帝都より俺とシシリーが呼び出され、そして、帝都へと転移して、案内された刑場には千人近い罪人が並ぶ…


皇帝陛下が、


「ポルタに魔王シシリー殿、首謀者の極刑は確定だ。

余は、暴君と云われようとも、全員死罪でも構わぬ…

しかし、勝手に攻め込まれ此を撃退した当事者の意見を聞くように宰相から言われてな…

どうする?」


と聞かれたが…


いきなり「どうする?」と言われても…


要は、魔族が嫌いな奴らだが、魔族に助けられたら改心するかも…的な宰相様のアイデアらしいが…面倒臭いけど…ならんだ罪人の中には子供も居るし…助けたいよなぁ…と思いながら、俺は、皇帝陛下に、


「シシリーと二人で少し皆さんと話しても宜しいですか?」


とお願いすると、


「うむ。」とだけ返事をして、そっけない皇帝陛下…


『えっ、陛下は許すの反対?』


まぁ、確かに謀反ではあるけど…と思いながらも、

俺とシシリーは刑場に降りて、縄で縛られた千人の前に立つ…


ヨーグモス第一王妃は俺等を睨みながら、


「魔族を討ち滅ぼすのは我がサカシタの血の宿命と言って出陣した夫を送り出したのは認めますが…何故ゆえ子供達まで…」


と、憎しみのオーラを俺に放ってくる…


『怖ぇぇぇし、シシリーが怯えるから止めてあげて。』


俺は、睨む第一王妃とシシリーの間に立ち、王妃に


「皇帝陛下は全員死罪と言ってるけど、攻め込まれた魔王シシリー陛下が許せば、命は助けても良いと言われて話し合いに来たから…あんまり睨まないであげて。」


と優しく声をかけた。


王妃は、ハッっとして、


「ご無礼を魔王陛下…

許されるならば、私の命と引き換えに子供達はお救い下さい…」


と後ろ手に縛られたまま王妃は土下座をする。


支える腕も無いので、額を打ち付けて尚、


「勝手なお願いとは十分承知しております。

まだ幼い子供の母なので、第二、第三王妃もお許し下さいませ!

私は火炙りでも斬首でも好きして頂いて構いません」


と懇願する。


俺は、第一王妃を座らせて、額の傷口に〈クリーン〉をかけたあと〈ライフヒール〉を使い傷を治しながら、


「旦那さんは皇帝陛下を欺いて宝物庫から物を盗んだ時点でダメでしたが、貴女方はまだ、やり直しができます。」


と言ってあげた。


シシリーは、第一王妃に


「私は魔族に生まれ、最近まで魔族しか知らず、そして、極寒の地で飢えと戦い生きて居たのは、貴女方の先祖の勇者のせいだと聞かされてきました。

しかし、我らが先代の魔王のしたこともまた事実…

どうです?

会ったこともないご先祖の事はポイして、一緒に笑える未来を探しませんか?」


と微笑む。


第一王妃は、涙を流しながら、


「本当に許して…頂けるのですか?」


というと、シシリーは屈みながら話していた王妃の前から、スッと立ち上がり、縛られた人々を見回して、


「私、魔王シシリー・バアル・ゼブブは、皆さんを許します!

不幸な意見の対立で、多くの命が消えました…許せない気持ちも有るでしょう…

しかし、生きて居れば話し合い、理解し合える未来もきっと来ます!!

皆さん生きて下さい!」


と宣言した。


俺とシシリーは刑場の観覧席に移動して、皇帝陛下に、


「全員マルっと減刑でお願いします。」


と告げると、皇帝陛下は、


「千人からの奴隷の管理は大変だろう…」


と渋る。


『どうしても処したいの?ヤバい国だな…』


かなり引く俺だったが、


「ちょっと裏切られただけで首はねてたら恨まれますよ陛下…」


と心配すると、皇帝陛下は、


「いや、奴隷紋を刻むのに一人小金貨一枚かかるし…

ポルタが払うの大変かなぁ~?と、心配してだなぁ…」


と、恐ろしい事を言い出した。


俺が、


「なんで、俺が払うのさ?!

皇帝陛下が出して頂けるのでは?」


と、いうと、皇帝陛下はニヤリと笑い、


「ヨーグモスの国の殆どを領地として、そなたにやる予定じゃから、

領民の管理費ぐらいは出して当然…

良かったのぅ、これで、シシリー殿とバランスが取れたな…

ポルタ国王。」


と、いたずらっ子の目をする皇帝陛下…

大金貨百枚を奴隷紋を刻む為に…嫌すぎる…誰も得しない…何とか成らないか!

と悩むと、腰から下げたサタンサーベルから、


『主人よ、悪魔を召喚して契約の仲介をさせるか?

主人達を裏切れば命を落とす呪いを…』


と提案してくるが、


『はい、却下です。』


そもそも(呪い)って言っちゃってるもの…と呆れる俺に、サタンは、


『えー、生け贄十人程度で出来るのに…』


と拗ねているが、そういう所が、裏切られたり、子孫達が迫害された原因の1つだと思うよ…俺は…

読んでいただき有り難うございます。

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