第65話 ブレる目標と、ブレない意見
素材調達はとても順調に進んでいるが、しかし、ウチの騎士団が変な方向に進みはじめている…事の発端は、アサシンバイパーを探す為に帝都から西に向かった森の入り口付近でバトルホースという、スピードこそ出ないが、パワーと防御力に優れた、どこぞの世紀末覇者の愛馬みたいなデカい馬の群れを見つけて、
「騎馬隊作るなら、まとめて連れて帰りましょう。」
と騎士団から提案されたのが、きっかけとなり、
まぁ、騎士団全員テイマー持ちだし、従魔の譲渡も可能だし、なにより騎士団員のテイマースキルも上がり契約枠の数が増えたみたいで、
『テイムしてみたい!』
っていうのが本音だろうが、
「やってごらん。」
と、俺が許可すると、騎士団達は、群れを囲い込み、野菜を片手に説得をはじめること一時間、交渉や説得?を根気強く繰り返し、そして結局、ヨルド騎士団は群れのボスを…タコ殴りにし、武力にて、20頭のバトルホースのテイムに成功した。
アベル騎士団長は、
「やはり武の者…拳で語るのが一番でした。」
と言っていたが、前半の一時間はなんだったのか?…とツッコミたくなる俺がいる。
見張りを森の入り口に二人置いて、バトルホースを見張らせてアサシンバイパーを狩りに向かうが、とても珍しいカーバンクルというオデコに宝石が埋まったフェネックみたいな魔物を見つけて、
「珍しいからテイムしましょう」
と騎士団が騒ぎだし、
「どうせならダイヤにルビーにサファイア、各種取り揃えたい!」
などと、言い出してなかなか森奥まで進めない…
あとは、バカデカい象の魔物や
軍用狼にするからと森狼の群やら、テイムしては入り口に待たせた仲間に預けるのを繰り返していると、森の入り口がちょっとした動物園状態になるほどの従魔が集まり、
何とかアサシンバイパーを見事探しだして討伐したのに、
帰り道でも、「あれは連れて帰る」、「あれは要らないから素材に」などと、スカウト&デストロイを繰り返す騎士団達…
「そんなに従魔いる?」
と聞くと、
「ちゃんとお世話するから!」
と、小学生が動物を拾ってきた時みたいな言い訳をする騎士団員達…
俺の前世の育て親と言うべき爺さんも、
「飯、糞、寝るを面倒みれるなら何を飼っても良い!」
と言ってたし、この世界での育て親の爺さんは、
捨てられてた俺を拾って育ててくれた…だから、俺も家族が増える事には寛容でいたいと思っている。
なので、了承すると、騎士団達は、
「ヤッター!」
と喜び、益々従魔を増やしていった。
後半は、アイツらはまだだから…と、実用性よりコレクター精神で従魔を集めて、最終的には大名行列の様に帝都まで移動し、
帝都で中古の荷馬車を何台も購入して、バトルホースに引っ張らせて、ヨルドまで騎士団員数名で運ぶ事にした。
象等は荷馬車に乗らないので、のんびり象のペースでの移動でヨルドを目指す。
俺を含めた騎士団のメンバーは転移で一足先にヨルドに帰り、
領内の土地に、サファリパークの様な施設の建設にとりかかった。
アリス達一族総出で広大な土地にエリア毎に空堀で区切り、掘った土で壁も作った。
「もう、こうなりゃ自棄だ!」と、このなんちゃってサファリパークもファミリー商会の傘下に入れて、従業員も雇い、管理施設も建てて、馬車で巡る順路も作り、『ファミリー従魔牧場』と命名して、隣の酪農村とも合併させた。
サファリパークと牧場体験が出来るテーマパーク、乗馬体験や乳搾りに新鮮なミルクを使ったアイスクリームの販売など、観光地として力をいれる事になってしまったと言った方が正しい様な感じになってしまった。
ウチの知恵袋サントスさんと、商会の支店長ヘンリーさんを巻き込み、
「将来は、従魔の育成に馴れた人員を増やして、交配や訓練で馬魔物を育てて、競馬を開きたい。」
と夢を語ると、サファリパークの話を最初は渋っていた二人だったが、競馬の話を聞く彼らはしだいに悪い笑みを浮かべて話に乗ってきたのだった。
ヘンリーさんは、
「馬魔物の名産地から技術指導員を引き抜きます!」
と意気込み、
サントスさんは、
「配当金の倍率計算に長けた人材を今から育成し始めます!!」
と、やる気に成っていた。
この世界の娯楽は、まだまだ開拓の余地があるから今のうちに唾つけとかなきゃね。
商業ギルドに動物園やサファリパークに競馬の登録ができれば、マネされても少しは特許使用料でヨルドが潤うし、観光客が増えて、旨いご飯文化が近隣の国々に広まれば、商会の食品工房も潤う!
ただ、騎士団員が妙に凝りだして、ガイナッツの樹海エリアとか、アルトワの高原エリアとかと、地域毎のエリアを再現して、極めつけは広大な土地を深い堀りと壁で囲み、人工的な森や池を配置し、比較的弱くて繁殖力の強い魔物を放し飼いにして、(狩りパーク)という擬似、初心者冒険者用の狩場を作ってしまったのだ。
カリパークといっても、決して、借りたまま盗む訳ではない…
外から強い魔物も来ない、安全な狩場で、入場者は、何でも一匹までなら狩って、お持ち帰り出来る仕組みだ。
合言葉は、
『手ぶらで来れて、お土産も出来る!』
何も狩れ無くても、(牙ネズミ)一匹保証付き。
駆け出し冒険者の練習にも、狩りが出来る強いパパを見せつけるチャンスにも…
と、幅広い方の要望に答えられるテーマパークとなって、レンタル武器や防具も取り揃えている。
若い冒険者のレベル上げや、ここの獲物を狩って冒険者ギルドに行ってもFランク迄ならランクアップ出来るように冒険者ギルドにも話はついている。
ちなみに、最低保障の牙ネズミはこちらで討伐して、両耳を切ってあるので、冒険者ギルドに提出してもポイントにならないので、あくまでも駆け出し冒険者が自分て倒した獲物のみ冒険者ポイント換算して貰えるのだ。
安全だが、参加料金と解体代金で殆ど手元に残らないので、Gランクの証明書を提示すれば、大銅貨五枚で入場出来る事にした。
宿が無くても牙ネズミの肉を売れば、素泊まりの宿に1泊出来るし、角ウサギが倒せたら翌日の入場料までまかなえる…
空いた時間で近場で薬草でも摘めば飯も食える。
ちなみに一般利用者は小銀貨二枚とレンタル装備一式が小銀貨一枚である。
ヨルドの街の次世代の冒険者や、一般から兵士団に入りたい人の訓練にも役に立っ…?!
と、まぁ、素材集めに出ただけなのに…まるで主旨がブレはじめている!!
しかし、ヨルド騎士団のメンバーは、途中テーマパークの開園に力を注ぎつつも、遠征を繰り返して、半年がかりで素材を集めて、騎士団と兵士団を再編成した。
そして、装備も完成し、
ワイバーン騎士団は十五名に増員し、
装備も金剛亀の甲羅の粉末を混ぜて鍛え上げた、金剛魔銀の軽鎧と、グリーンドラゴンの皮で作った龍革の服にバージョンアップさせた。
各員にドラゴンの牙を使った〈耐久〉・〈切れ味〉の付与付きのミスリルの剣を持たせ、
ワイバーンの鞍も防御力に特化した地竜革の物にかえた。
魔法騎士団は十名に増員し、
龍革の服に龍革のフードマントと金剛魔銀の胸当てに金剛亀のライトシールドも追加し、ドラゴンの角の杖には魔力向上と魔力吸収を付与してもらった。
そして、隠密騎士団は、
エクストラポーションで現場復帰した二人を加えて総勢九名に増員した。
金剛魔銀の鎖かたびらに、例のミヤ子の粉で柔らかく仕上がったドラゴンの革を漆黒に染めて作った龍革の忍び装束に、
ドラゴンの爪を使った忍者刀には耐久力と麻痺攻撃を付与してある。
あと、全員に新たに〈コブン〉の子供とも契約してもらいバリアーを盾の様に使える様にした。
フルアーマー隠密騎士団はバリアーの盾と疾風アゲハの翼、それと、ガタ郎の子供も右手に装着すれば、鉤爪として殴れる上に、発射してロケットチョンパ攻撃も出来るという、隠れる必要が無いぐらいにゴリゴリの攻撃力と防御力を手に入れた集団になった。
これで、手足を奪われる心配が減るはずである。
そして、新たにバトルホース騎士団十二名
リーダーとサブリーダーは、現・ワイバーン騎士団と同じ装備で、
以下十名は、旧・ワイバーン騎士団のお下がりを手直しした装備に、
全員にグリーンドラゴンの牙を使ったミスリルコーティングの槍を標準装備とし、槍にはストーンバレットという石を打ち出す魔法スキルを付与してあり宝珠も一つ埋め込んであるので、何発かは、魔力も使わず石の弾丸で遠距離攻撃も可能になり、
馬に馬鎧を着せれば敵陣に突っ込んでも怖くない特攻隊の完成となる。
騎士団は兵士団からくり上がり採用で増員し四十六名となり、
兵士団は、残りの四名を第一と第二の兵士団の団長と副団長に任命して、新規の兵士八十名を募集して新たに編成した。
もう、ついでなので、
魔王国からも魔族のやる気の有る者を集めて鍛えて、ヨルド騎士団が遠征で集めすぎた素材を使い、簡易の魔王軍も編成したので、魔の森での暮らしも少しは楽になるだろう…
ファミリー牧場と狩りパークのオープンセレモニーに合わせて、ワイバーン部隊の編隊飛行を披露したら住民はかなり喜んでくれたが、ご招待したカーベイル国王は、
「あれが、噂に聞く岩を落としてまわるワイバーン部隊か…戦場の布陣や兵法も有ったものではないな…」
とワイバーン騎士団の統率のとれた動きに少し引いていた。
装備を新しくして更に強くなった事を伝えると、カーベイル様は、
「ポルタ君…独立して王国作るときは、一声かけてね!?
独立戦争とか絶対止めてよ…フェルド王国が潰れるから!
すぐに建国認めるから絶対だよ…」
と真剣な目で訴えられた。
「帝都の誰かさんにならいざ知らず、恩のあるカーベイル様に軍を差し向ける事はしませんよ。」
と俺が答えると、
「可哀想だからアルフリードの奴にも止めてあげてくれ…」
と頭を下げられた。
ケチンボ皇帝陛下なんて…と、少し思わなくもないが、エクストラポーションの恩も追加されたカーベイル様の頼みだから仕方ない
『…命拾いしたな!ケチンボ皇帝…カーベイル様に感謝しな!!』
と、思いながらも、やっと様々な事が一段落した俺は、何ヵ月にも渡り棚上げにしていた問題にとりかかる事にする。
そう、婚礼の準備だ…
しかし、微妙に引っ掛かる第2婦人問題だが、正直、シシリーさんだけに集中してしっかり向き合いたいし、皇帝陛下の様にベッドに並べて端から順番とか人として信じられない…
シシリーさんと、ルルさんに、シェラを館の食堂に呼び出して、お茶しながら話し合いをもったのだが、何故か現在、3対1の構図に成っている。
まず、シシリーさんと結婚したい俺と、
いっその事なら三人一緒が良いとの女性チーム…なぜ全員と結婚することになっているのかがまず分からない…
気になって話を聞けば、帝都にいる間に、
「皇帝陛下や奥さま方に、勇者の末裔の血筋は強い武器になるから、次世代の事も考えて奥さんも複数娶らせて、いっぱい産みなさい…」
と、言われたらしい。
『皇帝陛下も大概だが、奥さま方も要らんこと吹き込むなや!』
と呆れるおれだが、
その後、意味不明な女性陣によるアピールタイムで、
「私は、救いだされた」だの
「アタシだって父上と村人全員助けられた」とか
「私が一番長く好きだし、蜘蛛の魔物から助けてもらった」など、
あーでもない、こーでもない、と会議をした結果、三人は勝手に(ドロー)という意見になり、全員優勝となった…
『んなアホな!俺の意見わい?!』
と、難色を示した俺に、シシリーさんが、
「仕方ありません、本日は一旦終了として、
シェラさんのお姉さんのメリザさんも合わせて後日五人で話しましょう!」
と、更にカオスな提案をされた…
しかし、早く結婚しないと、面倒なお見合い話が殺到しているし…かといって、けしからんボディーの頑張り屋のルルさんは良いとして…
問題は妹なんよなぁ~…う~ん…
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