第60話 完成披露パーティー
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冬になると、ドラゴンが引っ越すからと急いでやって来たのだが、あの日、1日がかりで登った山が、雪のある無しは有るにしても、今回は、ビュンと、ひとっ飛びで山頂近くまで登ってきたので、
『あの時の苦労は何だったのか?…』
と、思ってしまう。
しかし、騎士団と到着した山頂が既に騒がしい…
どうやら、ドラゴンと他の冒険者との戦闘が起こっているのか?と思っていると、
「ポルタ様、ここは我らにお任せ下さい。」
と隠密騎士団が偵察に向かった。
そして、暫くして、
「ポルタ様、なにやら冒険者がしくじったらしく、ドラゴンのターゲットとなり、配下のレッドドラグーンに追い回されております。」
と報告してくれた。
ミヤ子に麻痺らせて一網打尽計画だったのに…と作戦を滅茶苦茶にされた事にガッカリする俺だが、既に巣から離れて高速で飛びまわっているターゲットを麻痺らすのは困難だし…どうしよう?
しかし、もたもたしている暇もない…
ドラゴン程ではないが、ブレスも吐くドラグーンに、冒険者達がこんがりジューシィーに焼かれる前に助けなければ!
と判断した俺は、
「魔法騎士団はアースウォールなどで、ドラグーンから冒険者を守りつつ、隠密騎士団が冒険者を回収!
回収後は素早く離脱!
第一・第二、ワイバーン騎士団は山頂手前の岩場でアイテムボックスみっちみちに岩を収納後に上空で待機、合図と共に奴らの上空から岩をばら蒔け!
では、作戦開始!!」
と指示を出すと、騎士団達は、
「はい!」
と応えて、各部隊が作戦行動に移る。
マサヒロの翼を借りて盾と雷鳴剣を構えて、レッドドラゴンの指示で冒険者を追い回しているドラグーン八体の前を飛び回り注意を引く、
俺の囮に食いついた先頭の二匹を引き剥がす事に成功し、
魔法騎士団がその隙に壁を出して冒険者を守り、
怪我をしながらも走り回りクタクタの冒険者達を隠密騎士団が疾風アゲハを冒険者に装着させて離脱させる。
そして、魔法騎士団と隠密騎士団は協力して、ドラグーン六体の翼のみを狙い機動力をそぐ為に行動する。
魔法攻撃に麻痺矢での攻撃に加え、ガタ郎の子供達による親譲りのチョンパ系の攻撃がドラグーンを襲う…
ドラグーンもブレスを撒き散らして応戦するが、魔法騎士団のウォール系の魔法と隠密騎士団の回避性能にあしらわれている…
一点集中ならば突破されたかも知らないが、ガタ郎の子供達の撹乱作戦と翼膜チョンパ攻撃に苛立ち冷静に対処出来て居ないようで、一匹、また一匹と地面に落ちていくドラグーン達、
退避が終わった疾風アゲハが戻り隠密騎士団とドッキングして舞い上がり、魔法騎士団もワイバーンで作戦空域から離脱する。
麻痺したり、翼を破かれた六匹は、畳み掛けてこない敵にキョトンとしている。
その間も俺は、二匹を引き連れたままレッドドラゴンに向かう…
そして、ワイバーンとドラゴンが一塊に集まった所でファイアランスを…空へと打ち上げる…
ビビってヤケクソの魔法を放ったと思ったのか、ドラゴン達は余裕の表情で俺を噛み千切ろうと口を開けて迫ってくる。
そして俺は…マサヒロごとミルトの街へと転移した…。
いきなり消えた俺に驚くドラゴン達と、翼を使えなくなった六匹のドラグーンの上に、遥か上空からワイバーン騎士団がアイテムボックスから取り出した岩の雨が降り注ぎはじめるのだった。
俺は、ミルトの街の入り口からまた時間をかけて山頂を目指すと、既に討伐は終了しており、
美味しい所はアベル騎士団長率いる第一ワイバーン騎士団に持っていかれていた。
ドラグーンは、騎士団のアイテムボックスに収まったが、ドラゴンはギリギリ入らずに俺を待っている状態だった様で、俺がドラゴンを収納して、振り向くと、助けた冒険者の一人が、
「えっ?ポルタの坊主か?!」
と驚きの声をあげる…
泥だらけで、少し焦げているが、忘れもしないゴブリンキング戦の時の一番手柄、鋼の肉体のメンバーである。
俺が、
「お久しぶりです。
鋼の肉体の先輩がた…大丈夫でしたか?
怪我ならポーションとか有りますよ。」
と声をかけると、斧使いのリーダーが、
「なんだい、ポルタ!
冒険者辞めてどこかの軍に入ったのか?」
と聞いて来たので、俺は、
「冒険者を辞めたつもりは無いけど、貴族になっちゃったから…俺…」
と答えると、鋼の肉体のメンバーは、アワアワしながら、
「お、お貴族様でしたか!?
ヤバい呼び捨てにしちまった…」
などと慌てている…俺は、
「いいよ、そんなの、
一緒にゴブリンの巣に潜った仲でしょ。」
と伝えると、やっと安心したのか、鋼の肉体のメンバーは脱力して、
「いやぁ~、もうダメかと思ったよ…
ファイアドラグーン1体の納入依頼だったけど、ヘマしちまってデカ音を出したら、ドラゴンにバレて、一斉にドラグーンに追い回されて…
冬前に一発当ててのんびりするつもりが…違約金だな…コリャ」
と、がっかりしていたので、ドラグーンを騎士団に言って一つ分けてあげた。
鋼の肉体のメンバーは恐縮していたが、
「フェルド王国のヨルドの街に一度遊びに来て、それで、気に入ったら皆にオススメしといてよ。
その宣伝費としてドラグーン一体なら安いもんだから、待ってるよ。」
と言って別れた。
山を降りて行くリーダーが、
「冬の間、飲んだくれている奴らも誘って遊びにいくから!」
と手を振っていた…
夢の狩人のメンバーも来るのかな?…それならば、旨いもの漬けにしてやるか!などと考えながら、ミルトの街に戻り、再び俺はポーションでチャプンチャプンになった腹を擦りながらヨルドへの転移を繰り返した。
そして、年が明けてすぐに、新・ヨルドの街で皇帝陛下を招いてのパーティーが始まった。
数日前に帝都から使者がヨルド街に到着し、それから数日がかりで、転移を持った使者さんが魔力タンクにマジックポーションを多様して皇帝陛下ご一家(奥さま多数)を連れてお見えになる…
フッフッフ、皇帝陛下が奥さまを全て連れて来ても対応できる様にロイヤルスウィートルームにはメインベッドルームの他に五つのベッドルームがあるので大丈夫だろう…知らない間に嫁が増えていないかぎりは…と、知らない間に夫人が増えている可能性も考え少しドキドキしたが、あの時の三名のお妃様で、少し安心した。
公務員である転移スキル持ちの職員さんが頑張り続けて、ガイナッツ国王と王妃さまや、ガイナッツ騎士団長のボルトさんに、
アルトワ王国の国王夫妻に、ご隠居の先王様に、個人的に仲が良いロックウェル伯爵夫妻を連れて来てくれた。
パーティーには未だ1日有るが、皇帝陛下をはじめ皆さんは、貴族宿に泊まり街を堪能している。
そして、あの極寒の魔王城から魔の森に建設中の新・魔王城に先駆けて完成した魔王国宰相ルキフグス様の館に、ペガサスに乗りやって来たシシリー魔王様御一行も何故かパーティー前から街を満喫し、俺の屋敷に入り浸っている…
シシリー様が、俺にべたべたしても、睨む軍務関係の方々がいないのは有難い…
皇帝陛下と魔王陛下のはじめての直接対談が、バーガーショップ、マックのイートインスペースなのは如何なモノか?とは思うが、何故か二人は馬が合う用で、奥方さまも交えて楽しそうに観光をしている。
時間が有るからと、ウチの騎士団を護衛に付けて、シシリー様案内のもと、馬車にて、新・魔王城の建設現場も視察に向かわれたし、両国の仲を深める大切な時間を提供できたと思う。
パーティー当日の朝には、カーベイル国王様をはじめフェルド王国の貴族の方々がザック騎士団長護衛のもとヨルドに到着した。
カーベイル国王陛下から、
「我が家お抱えの絵師に描かせたポルタ君の肖像画だ、屋敷にでも飾ってくれ。」
とデカ絵をプレゼントして貰った。
中には昔の自衛隊のポスターの様に明日を指差す俺の背後にタンバをはじめ各種昆虫系魔物が、キシャー!っと威嚇する絵画が出てきた…
『フツーに怖ぇぇぇよぉぉぉぉ…
夜見たらチビッ子が眠れなくなるヤツだよ…』
と思うも俺は、少しひきつりながら、
「ありがとうございます、カーベイル様…」
と礼を述べると、カーベイル様が、
「ワルド王国との戦いの様子を描いたと言っておったぞ。」
と教えてくれたが、一緒に来ていたワルド国王は複雑な顔をしているし、絵を見ながら息子のリード王子は、
「虫の勇者様…良く生き残れたと、その絵を見ただけでも私はしみじみ思います。」
と、呟いた…なんかゴメンね…トラウマだよね…美味しい物食べて忘れてね…戦場跡には慰霊碑を立ててお供え物もしてるから…と、こちらが気まずくなる贈り物を受け取り、
その後、公爵様に、侯爵様、伯爵様に、子爵さんに男爵さん…挨拶だけでも日が暮れそうだった。
パーティーまでの時間、貴族の方々は整備された街を回り、他国の騎士団長のザックさんやボルトさんはワイバーン騎士団などに興味津々だった。
そしていざ、パーティーが始まると、我がヨルド家のとっておき料理の数々の御披露目も兼ねたテーブルに人だかりが出来ており、パッと見は凄く盛り上がっているが、なんとも静かに黙々と食事をする、なんとも異様な熱をおびたパーティーになった。
パスタ工房やチーズ工房が出来たので、各種パスタは勿論、ミルキーカウの大牧場が順調に生産してくれるミルクのおかげで、グラタンにクリームシチューや冬のパーティーに芯から暖まるメニューを揃え、ゴング爺さん達とこっそり蒸留したワイン等の蒸留酒を男性にはお湯や、水で割ったモノを提供し、酒豪にはロックで出したり、ご婦人方にはジュースに少し混ぜてカクテル風にお出しした。
製法を聞かれたが、
「ウチの街に留学に来る酒蔵の人にしか教えれませんし、この酒を作る為の装置はウチの鍛冶師に弟子入りした者にしか製作を許可しませんので、留学のご検討はお早い目に。」
と言っておいた。
だが、来てくれたお客様に一本お土産にヨルド酒と名付けた蒸留酒を渡して酒飲みをヨルド呼び込む広告とした。
自分で飲んでしまう酒飲みも居ると思うが、大概の酒飲みは、飲み仲間に珍しい酒を飲ます事も楽しみのひとつにしている事が多いし、たとえ現物を飲み干したとしても、その後の飲みの席でヨルド酒の話題がでれば、飲んだことのない酒の話を聞いた酒飲みは、飲みたくなるのが性だ。
一応皆さんには、
「この酒は試作品ですが、樽に入れて寝かせれば、寝かせるほど旨くなります。」
と言っておいたが、酒豪たちはすでに、ガツンとくるアルコールの刺激にヤられて、
「金は出す!樽で売ってくれ!!」
と騒いでいる…フッフッフ、コリャ儲かる香りがするぜ…酒蔵を増設せねば…とニヤリと微笑む俺は、その他にも人を呼び込み、口コミを加速させる作戦を考えている。
すると、パーティーの最中から酒蔵の人間を留学させる相談や鍛冶師の誰かを蒸留装置の作成の為にゴング爺さんに弟子入りさせる算段を各国の方々があちこちのテーブルで話している。
正直、酒なんて材料や水、作り手の数、違った旨さがあるので広がってくれた方が楽しみが増えるが…
(蒸留酒発祥の地ヨルド)をすりこむ為には留学制度は必要な手段だし、ついでにウチの旨い物を広める広告塔にも使える…
ただ、料理に酒だけで驚いてもらっては困る!
転移スキルを使い、夜な夜な拠点の菓子職人コルトさんを連れてきては元料理長ロウさん達と再現したスイーツの数々がまだ控えているのだ…
奥さま達のお茶会に稲妻級の衝撃を与える程の品々がダース単位で出てくる予定なのだ!
さぁ、とくと味わうがいい!ヨルドの新型の性能を!!
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