第59話 完成!発展!ヨルドの街
着工から約二年、18歳の夏にヨルドの街が一応の完成を迎えた。
三千人は住める程の場所に四百人程しか現在は住んでいない為にスカスカ気味ではあるが、領主館にギルドに教会等々、施設は充実している。
二年も有ったので、戦争孤児なども含め街の子供は単純な事務処理能力ならば文官職の方々よりも早くて正確な者まで出て来た。
九九が無かった世界って…今までどうしていたのやら…
よく解らない板の上に石を置いて計算をしている文官さん達にもどかしさを覚え、
木工職人のマット爺さんにお願いして、ソロバンを作ってもらい、文官さんに教えた。
簡単な足し算、引き算からスタートして、九九を教えて、掛け算と割り算を教えていく…
理屈を理解するのは大人の文官さん達は早くて、子供達に教えられる様になるまで2ヶ月とかからなかったが、
流石は頭が柔らかい子供達の方がソロバン自体の上達は早かった。
なので、子供達はもう、どこのお店の店番のアルバイトでも出来る、街の頼もしい戦力となっている。
現在は全ての店がファミリー商会のお店扱いだが、街に人が溢れる様になれば、徐々に一人立ちして雇われ店長からオーナーへと出世して個人事業主として頑張って貰う予定だ。
あと、嬉しい事に戦争で散り散りに避難していた潰れた村の住人達がパラパラと戻って来てくれて農家の数が増えた。
〈小麦村〉〈野菜村〉〈酪農村〉の3つの村共に拡張し、食糧生産力が上がり、そして、食糧が安定供給出来る様になり、新たに葡萄畑や果樹園の整備が出来て、農家のバリエーションが増えた。
今後はヨルド産のワインや果樹酒、ホップを育てて、ビール工場を作るのも良い…
キンキンに冷えたビールが飲みたい…
ぬるいエールしかない酒場で、キンキンに冷えたビールを出して、酒飲みを驚かせたい!
等と考えていると、次から次へと、一緒にソーセージも食べたい…燻製文化は有るに、腸詰めは見たことが無い!と思いつき、ヨルドの街のリーダー会議を召集して、職人チームと、今回は街の食堂の料理人と商業ギルドマスターを主体とした。
こんなの他の町はにありますか?無かったら特許出して名産にしましょう会議を開催した。
案の定、腸詰めはまだ登録されて無かったので、
前世の記憶を記録と検索のスキルで絞り出して、ミンサーをゴング爺さんに作ってもらい、アタックボアにタックルボアなどの小型、中型の猪の肉や腸を使って、各種スパイスの配合を変えて試した結果、かなり旨い商品が出来た。
勿論特許を取り、新たに旧ヨルドの街にソーセージ工房を作り、ソーセージの普及に合わせてミンサーも普及すれば両方の特許使用料で追加収入になる。
ウチの酒場では、クールのスキルを取得した店員を配置し、良く冷えたエールを提供するようにして、たまたま来た冒険者に、ソーセージとエールを提供すれば、各地に噂が広がるのは間違いないだろう…
その後もパスタやピザ、そしてロックウェル伯爵家にプレゼントした唐揚げとトンカツのレシピも、ロックウェル伯爵にも一丁噛んでもらい、正式に特許を出して、
ウチの、唐揚げとトンカツの売上の一部をロックウェル家に納める形をとり、かわりに、「アルトワ王国のロックウェル伯爵家直伝!唐揚げ専門店、貴族鳥」の様に
貴族の味を庶民が楽しめる…みたいな付加価値を付けさせてもらった。
ロックウェル伯爵もノリノリになり、
「我が家の料理長が弟子に後を譲り隠居するから、トンカツ専門店をポルタ君の町で開かせたい!」
となり、新たに店が増える事になった。
いっそのこと揚げ物専門店にして、串カツや魚のフライも作ってもらい、ヨルドの街のフワフワ天然酵母パンにはさみ、
カツサンドにフィッシュフライバーガーなども作ろう!と、盛り上がり、元、ロックウェル伯爵家料理長〈ロウ〉さんのお店(揚げたロウ)と、
パン屋の〈ミック〉さんの息子〈マック〉君が一人立ちし、
パンは父親の店からと、揚げたロウからフィッシュフライやトンカツを仕入れて、マックさん特製のソースと、二つの品をドッキングさせた(バーガーショップ、マック)をオープンすることにもなった。
名前も名前なので、ミンサーも使ってミートパティも作り、色んなバーガーもついでに考案した…
勿論〈マックさん特製のビックなアレ〉もある。
これらも、特許を出し、レシピ使用は暖簾分けのみとしたので、フランチャイズが広まれば広まる程儲かる。
そして、料理長だったロウさんが加わった事により、ヨルドの食文化の発展は加速し、俺がレシピを教えて、ロウさん達が再現する。
しかも、ロウさんが息子や弟子や料理人仲間を集め、ロウグループを作り、ファミリー商会の傘下に入ってくれたので、揚げたロウ以外店舗は商会完全出資で用意して、(パスタ専門店、茹でたロウ)や(焼き鳥、串焼きの持ち帰り専門店、焼いたロウ)など…食の都としての機能はかなり整ったが、米が無い事が悔やまれる…ヤケクソで小麦を炊いたが…
コレじゃない!感が凄く、余計に米が恋しく成ってしまった…
そして、街も完成して、食べ物も充実した18歳の秋、ヨルドの街に遊びに来てくれた、
フェルド国王カーベイル様から、
「街が出来たのなら、皇帝陛下を呼んでやってくれ…
出来たか?出来たか?とコッチに連絡をよこすのだ…例の祭り以来、アルフリードなりにポルタ君に気を遣っているらしいが、いささか鬱陶しい…
完成披露パーティーを開けば、アレも落ち着くだろうから…頼む…」
と、お願いされて、執事のテムズさんを中心に、おもてなし隊を結成して、今年の社交のシーズンに完成披露パーティーを開く事にした。
帝都やガイナッツ王国にアルトワ王国と、転移を使い招待状を配り歩く…この時ばかりは、転移の便利さを感じる。
帝都住んでいる帝国貴族ならば、帝都の貴族を片っ端から呼ぶのがマナーらしいが、俺は、出向しているので、フェルドの貴族を中心として、帝都の方は、皇帝陛下と公爵様など有力貴族に、
『どうせ来ないでしょうけど来れたら来てね。』
みたいな招待状を出すだけで良いらしい。
パーティーの日は、ウチの街の貴族宿を丸々おさえてあるので、皇帝陛下に我が町の技術の結晶のロイヤルスイートルームを味わって貰おう。
他の貴族達の部屋も用意したので、腹一杯食べさせてぶっ倒れても大丈夫だ。
皇帝陛下には、新型スプリングマットレスに冬場に飛んでくる鳥魔物のフカフカの冬毛と、
ウチの隠れた名産品、非正規従魔である抱き枕サイズの芋虫達に出してもらった糸をつむいだ(ヨルドシルク)で作った寝具とパジャマにナイトキャップも用意してある…
『フッフッフ、宮殿の布団では満足出来ない身体にしてやるよ…皇帝陛下さんよぉ…覚悟しておけよ!!』
と、皇帝陛下の使う一流の品すら霞む程の我ヨルドの技術力パンチを御見舞いするべく用意をすすめている。
順調に進む準備の中で、俺は、
「さて、歓迎料理の目玉はどうするかな?」
とブツブツ言いながら考えていると、何故か最近メイド服を着て俺の身の回りの世話を手伝ってくれている鬼娘のルルさんが、
「ポルタ様、前回拠点に転移で里帰りさせて頂いた時に、父上に美味しい茸の採取をお願いして有ります。」
と言ってくれた。
俺が、
「それは有難い!」
と喜ぶと、ルルさんは目をつむり「ん…」っと、何かを待っている…
「何?」と俺が聞くと、
ルルさんは、
「ご褒美のチューです…」
と答えた…
俺が、
「誰から教わったの…そんなこと…」
と呆れて聞くと、
ルルさんは、
「メイド長の〈シーラ〉師匠です。」
と、答え…そして、まだキス待ちを止めない…仕方がない…と、近より…俺はそっと…
彼女の頭を撫でてやった。
「ありがとねぇ~」
と撫で撫でしていると、
「う~ん、いけずぅ~」
と、くねくねする鬼娘…
『これもシーラさんか…』
と呆れつつ、
「シーラさんは今日のおやつ抜きで…」
と、俺が呟くと、同じ部屋にいた執事のテムズさんが、
「承知致しました。」
と、静かに応えてくれた。
…シーラさん…(二人きりの時にするように)って言わなきゃ…ルルさんが、テムズさんの前でもチューすると思ってるよ…二人っきりでもそんなハズイ事しないのに…と、詰めの甘い我が家のメイド長に頭を悩ませる事があったのだが、しかし、良いキノコが手に入るのなら、良い肉も手に入れたいな…と思いつき、加工したソーセージも良いが、
『レアな肉で驚かせたい…』
と、テムズさんに相談したところ、
「ドラゴン肉ですかねぇ~」
と言っていたので、
『騎士団を連れてドラゴン狩りにでもいくか!?』
と、いうことになった。
街の警備は、パパチンこと ドド師匠に鍛えられた兵士団が居るし、騎士団が出払っても残されたワイバーンの世話は、何故か家畜全部に好かれるドテが頑張ってくれる。
さて、あとはドラゴンの住み処なんて心当たりが…あっ、有るな!
冬には獲物の居る暖かい地域に引っ越して春に帰ってくるドラゴンの情報を一匹知っている事を思い出した。
そう、ガイナッツの王都側の山にレッドドラゴンが居るらしいのだ…
ウチの騎士団の力を知らしめる良いチャンスかも知れない!
となり、騎士団に出撃命令を出す。
…と言っても、マジックポーションを握り締めて、俺が三人ずつ転移するしかない…
ポーション水腹でチャプンチャプンになりながら7往復…騎士団二十名を運び終えた。
ワイバーン騎士団は勿論ワイバーンを召喚しての移動だが、
魔法騎士団もワイバーンをテイムしている。
ある意味ワイバーン騎士団でないのは、隠密騎士団と俺だけだ…
残りは疾風アゲハを召喚して、ドッキングして空を飛ぶ…
久々のマサヒロが、
『王さま、太りました?』
と聞くので、
「成長したか、鍋いっぱい程のマジックポーションのせい…だと思いたい…」
と答えておいた。
まぁ、飯が旨くて食い過ぎている気もしないでは無いが…
「ヨシ、暴れてカロリーを消費するぞ!!」
と、意気込み、騎士団は、各自〈従魔召喚〉で呼び出した相棒にサドルを装着し、
全員で山の頂上を目指し飛び立った。
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