第58話 久しぶりの冒険と騎士団
現在、久しぶり…本当に、久しぶりの冒険に来ている。
諸々の許可も出て、ヨルド騎士団長の〈アベル〉さんと、副団長の〈シルバ〉さんと、我が騎士団の女性騎士の〈メル〉さん…
メルさんに関しては、男ばかりの旅が、むさ苦しいからと領主権限で無理やり参加してもらった訳じゃないんだからね!
彼女はアイテムボックス持ちだし、弓の名手だからなんだならねっ!!
…という事で、この三人と一旦帝都に転移して、
スキルショップに寄り、皇帝陛下からもらった貴族になる為の支度金の中から、三人に、我が騎士団の基本スキルにしたい
複合スキルのフィジカルと、
ワイバーン騎士団の創設に
テイマースキルと、
ワイバーン騎士団には運搬作業もして欲しいので、
アイテムボックスと、
空は寒過ぎるとアゼルとメリザが言っていたので、
耐寒を取得出来る様にスキルを買う。
騎士団長アベルさんと副団長のシルバさんは既にフィジカル既にを持っていて、
騎士団員のメルさんは、すでにアイテムボックスを持っているので、少し節約出来た。
浮いたお金で、ワイバーン狩りに行く途中のガイナッツ王国の王都ミルトで…というか、タッグさんの所でビューティーさんに無理を言ってワイバーンのサドルをさん三人前お願いしてから、
忘れない様に、街の入り口で転移登録した後に、クマ五郎のキャンピング馬車で、以前も行った、南の森の奥にあるワイバーンの巣に来ているのだ。
以前来た時から一年以上が経っており、あの惨劇が嘘の様に数多くのワイバーンが巣を作っていたのでホッとしながらも、今回は殲滅する訳では無いので、端っこの一塊のみをターゲットにしてミヤ子の麻痺粉でシビレているワイバーンの親の隙間からタマゴを物色していく…
アイテムボックスに入る卵はもらって、入らない場合はそのままにパパとママに育ててもらう為に巣に残す。
タマゴを全て没収した親は、シビレている間に縄で縛り、帝都で購入したテイマースキルで騎士団チームに後でテイムを試みて貰う。
そして、近所の巣をゴソゴソしている俺達に、狩りから帰って来たワイバーンが、
「グゲェェェアァァァァ!」
と警戒音を出しながら襲いかかると、そんな時はガタ郎の羽根チョンパ攻撃で墜落してもらう。
久しぶりの活躍で、
『いゃっふぅぅぅぅ!でやんすぅぅぅぅ!!』
とハッスルしているガタ郎を
あいつ色々と溜まってるのかな?…と、少し心配しながら眺めつつ、落ちてきたワイバーンを皆でボコしていくという狩りを続け、結局、タマゴを十個とワイバーンを八匹と、スマキにしたパパママワイバーンを三家族分ゲットした。
クマ五郎とクマ美を召喚する…ちなみに息子のゴロリは従魔契約をすると、色も形も変わらなかったが、小さな四本腕のシロクマの子供は、なんと、喋れる様になり、すっかり拠点の子供組に溶け込んでしまっている。
おかげでクマ五郎夫婦共に出勤しても大丈夫になっているのだが、俺があまり冒険出来なくなってしまい二人は久しぶりの出勤に気合いが入っている様子で、麻痺してスマキ状態のワイバーンをヒョイと担いで安全な森の中まで、エッチラオッチラ運んでくれた。
麻痺粉を逃れ、後から巣へと戻ってきて俺達を襲って来た為に、親を討ち取ってしまったワイバーンの巣のタマゴもチェックして、アイテムボックスに入らないタマゴは、ご近所の両親共に巣で麻痺っているワイバーンの夫婦にソッと預けておいたので、そろそろ麻痺から覚める頃だから、引き続き暖めてくれるだろう。
さて、ここからが問題なのが…
騎士団チームに森の奥でスマキワイバーンをテイムして貰うのだが、しかし、正直、従魔にする普通のやり方など、試した事がない…
〈ぶん殴って力の差をみせる…〉
〈優しく接して心を開かせる…〉
〈運任せで名付けしてみる…〉
色々と試して駄目ならば、残念だがワイバーン素材が増える事になり、タマゴのみを持ち帰る事になる。
麻痺から覚めたワイバーン達が騒ぐが、ロープでスマキにされて動けないワイバーンに向かって、
アベル騎士団長が、一番反抗的な一匹に、「静かにしろ!」とワンパンを入れてから、にらみ合いをする。
次第に静かな戦いはアベル団長の気迫が勝り、ゆっくり目を閉じて頭を下げるワイバーンに、
「ガッツが有る奴は嫌いじゃないぜ、宜しくな〈サンズ〉…」
と言って一匹と契約をかわした。
副団長のシルバさんは、比較的おとなしいワイバーン夫婦の前に行き、
「俺は、あんまり暑苦しいの好きじゃないんだよ…
二人とも、グーパンとか嫌だろ?
なぁ、お互いの幸せの為にさぁ…」
と、目の前にアイテムボックスから肉を取り出して並べて
「食えよ。」と、やっている。
まだ、時間がかかりそうだ…
騎士団員のメルさんは何とかロープをほどこうと試行錯誤しているワイバーン夫婦に近付くが、どうしようか悩んでいる。
俺は、幸運のペンダントをメルさんに貸してあげて、
「これを装備して、いきなり名前を付けを試してみて。」
とアドバイスをした。
メルさんは、幸運のペンダントを身に付けると、ワイバーンに手をかざして、「ペス!」と昭和の犬みたいな名前を呼ぶ…
あぁ、可愛そうにアイツは〈ペス〉になったみたいだ…
副団長のシルバさんは、
「メルちゃんズッルいよ!
俺なんて、反応の薄いワイバーンに30分以上話しかけてるんだぜ?!」
と拗ねていると、スマキのワイバーン達が、可愛そうな子を見る目でシルバさんをみている…
シルバさんは、スマキの一体に近づき、「お前は解ってくれるか〈ブラザー〉」とスマキのワイバーンを撫でる…
『ん?あれ、あれテイム出来てない?』
と、俺を含めて皆気がついているが、全くテイムした事に気づいていない様子で、ブラザーと既に名付け終わったワイバーンに、
「お前さん、いい加減心を開いてくれよ…頼むよ…」
とお願いし続けているシルバさんを眺めながら時間を過ごした…
無事に、ワイバーンのスカウトに成功した俺たちは、また数日がかりでクマ五郎キャンピング馬車で〈ミルト〉の街まで戻り、ビューティーさんからワイバーンのサドルを受け取った。
勿論、馬車移動中はワイバーンは「ついておいで。」と指示を出して、馬車を追って飛んでもらったのだが、街の近くでワイバーンに襲われて逃げている馬車かと思われて、冒険者が加勢に来るという軽いトラブルはあった…
これ以上のトラブルを避ける為に街の外でアベル団長達三人と、六匹のワイバーンには留守番をしてもらい、俺がクマ五郎馬車でダッシュで注文してあったサドルを受け取って来たのだ。
ここから彼らは、空を飛びヨルドを目指す事になる。
俺は、一足先に戻り、ワイバーン牧場を整備するために転移をしたのだが…
残った騎士団から団長達だけお出かけしたのが羨ましいのか?、
我が家の文官長のサントスさんに交代で軍事訓練も兼ねて、討伐に行きたいとお願いされてたらしく、サントス彼らのガス抜きを相談された。
結局、団長達がワイバーンで帰ってくる前に、ワイバーン牧場の準備はサントスさんと、アリス達にお願いして、
サントスさんの調べてくれた必要スキルメモを持ち、俺は転移スキルを使いトンボ帰りで再び帝都に飛んでスキルスクロールを買いに向かう事になり、
ヨルド騎士団は、
〈フィジカル〉・〈テイマー〉・〈アイテムボックス〉・〈耐寒〉
を基本スキルとして戦に備え、
ヨルド兵士団は、
〈フィジカル〉
を基本スキルとして治安維持を目指す。
そして、強く成った皆さんにご近所で素材回収を依頼すれば、騎士団と兵士団の装備も整えられるし、街で消費するお肉も手に入る事になる…
という事で、帝都に飛んでスキルを買い漁ったが、流石にレアスキルのアイテムボックスなどは仕方ないとして、コモンスキルの複合で手に入るフィジカルといえど流石の帝都といえど数が揃わなかったので、ガイナッツ王国の王都ミルトとアルトワ王国の王都クレストにも転移して、スキルスクロールを揃えてヨルドに帰る。
総勢50名に、スキルもりもり改造を施し、
兵士は五人一組で一週間交代で近場で鉱物資源回収と魔物討伐を行う遠征を依頼して、兵士団専用お出かけセットとして、マジックバッグとツルハシやスコップのセットを渡してある毎回アイテムボックス持ちを一人参加させれば鉱石の仕分けもスムーズであろう。
そして、騎士団は三人一組で、俺の転移を使い現金収入と、装備の強化の為にしばらくは魔物素材を狙いに冒険に出る予定だ。
サントスさんのアイデアで、アゼルとメリザに指名依頼としてミスリルを中心に鉱物資源を採掘を依頼した。
あの二人も少しでもポイントが入れば、早く昇格してヨルドの町に手伝いに来てくれるかも知れない…
という事でスキル等、だいぶ散財したが、普通は街の整備に工賃などの人件費や材料代が必要だが、ウチはかなりソコが節約できているので他の部分に回せる…アリス様々だ。
そして、そんな生活をしばらくしていると、ここ一年近く俺は、冒険者だったのにろくな依頼や討伐をしなかったのに、ここ半年はアホみたいに地竜狩りなど大型魔物の討伐で騎士団のレベルアップや素材集めを行い、街の完成を待たずして、我がヨルド騎士団とヨルド兵士団がの装備が完成した。
騎士団二十人のうち
十名はワイバーン騎士団として、地竜の鱗とミスリルを鍛えた軽くて強い〈竜鱗魔銀の胸当て〉と〈竜鱗魔銀の兜〉に、地竜の皮にミヤ子のお肉ドロドロ鱗粉をかけて柔らかくした〈ドラゴン革の服〉を正式装備とした。
グリーンドラゴンの鱗を使った俺の龍鱗魔銀シリーズには劣るが竜鱗魔銀シリーズもかなりの強度だ。
騎士団の中でも魔法の得意な五名は、魔法騎士団とし、地竜の皮のドラゴン革の服と竜鱗魔銀の胸当ては変わらないが、ゴング爺さんが持っていたグリーンドラゴンの柔らかくした皮でフード付きマントをお揃いで作ってもらった。
そして残り五名の騎士団員は魔法騎士団と同じ装備だが、色を黒に染めて、
索敵、諜報、潜伏に特化した騎士団とした。
彼らは追加で隠密系のスキルとテイマースキルで、
俺の従魔の二世と契約してもらった。
そう、影に潜れるクワガタだが大きさや顎の形も微妙に違うガタ郎が、拠点の森で手当たり次第に様々な種類のメスクワガタを強いオスの魅力で落としまくり産ませたという子供と、
マサヒロは俺の知らない内に拠点の森に移り住んできた疾風アゲハのメスを奥さんに貰っていて、最近羽化して飛べる様になった彼の子供達である。
従魔召喚も取得した空も飛べるヨルド隠密騎士団の誕生である。
ホントに、久しぶりに拠点に帰ったらノーラ母さん以外に子供組も複数名ドッキングして空を飛んでいたのでビックリしたものだ…
知らない間にマサヒロまで…芋虫だったのに20匹近い子供のパパだったよ…結婚するなら教えて欲しかったが、虫達には、お付き合いとか結婚の発想は無いのか、クマ五郎ファミリーが特別らしく、他の方々は恋のシーズン中に出会って気に入れば即交尾という何ともアレな感じらしい…知らないうちに、拠点の近所の森でも、我が家の非正規従魔達が二世を産み数を増やしているのだろう…めでたい事だが、何故か少し痒くなったのは黙っておく事にする。
さて、我ヨルド騎士団の胸当てには、それぞれイメージキャラクターがチーム毎に付いている。
第一ワイバーン騎士団五名には〈蜂〉
第二ワイバーン騎士団五名には〈蝶〉
魔法騎士団五名には〈クマ〉
隠密騎士団五名には〈クワガタ〉
と、俺の従魔をモチーフにしたシルエットが刻印されている。
カッコいい…
ちなみにだが、我がヨルド家の紋章は皇帝陛下から贈られたのだが…蜜壺である…蜜壺にハドソンマークの様な蜜蜂のシルエットが有る、なんとも戦場で見たら、十人中30人にナメられそうな、迫力に欠けるユルダサいデザインだ…
蜂蜜だけにナメられるってダジャレか?!
ハドソンならあれか?どこぞの名人の冒険する島のゲームみたいに、(バグってマリー)が上を飛んでる間は無敵とかにしてくれよ!
…皇帝陛下のデザインセンスが終わってらっしゃるのは解ったので、せめて、胸当てのマークは、紋章以外でカッコ良くしたい騎士団の静かな抵抗だろう…
兵士団30人には、ワイバーンの皮と魔鉱鉄の鎧セットを支給し、胸には蟻のシルエットが刻印された装備を着て街の安全を守っている。
そして、五人一組のチームリーダーには特殊装備の麻痺攻撃を付与した十手を預けてあり、暴れる奴は麻痺らせて投獄である…
勿論、牢の地下には例の一族専用の控室があり、いつでも祭りが行える体制を整えている。
二度と悪さをしたく無くなれば良いとの思いからだ…しかし、叶うならば祭りが開催されることの無いこと願う俺だった…
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