第53話 一夜限りのカサカサ祭り
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会議が終わり、何故か皇帝陛下のご指名で、俺はまだ、会議室に残っている…
現在部屋に居るのは、
〈皇帝陛下〉
〈アルトワ国王〉
〈ガイナッツ国王〉
〈フェルド国王〉
と俺の五人である。
『何の集り…?』
と思いつつ、よく分からないメンバーに首を傾げていると、皇帝陛下が、
「ポルタよ、そなたはどうする?」
と聞く…
『なにを、どうするの?』
ますます解らない俺は、
「何をです?」
と率直に聞くと、皇帝陛下は、
「何処の所属となるかだ。」
と、さも当たり前かの様に答える…俺が、
「所属?」
と聞き返すと、皇帝陛下は、
「そなたの功績も大きくなり、今回の魔族との件がどのような形にしろ、先陣をきり交渉に当たると宣言したのだ。
そなたに後々、領地や爵位を与える場合の所属先を決めねばならない…
まぁ、帝国直属の所属になれば、今日のメイドの中から好きな者と縁談をとりつけてやろう。
すべて、花嫁修行に宮殿でメイドをしている貴族の娘達だ…」
と自慢気に話す…
『はい、アウト、こいつは駄目だ。』
と、皇帝のアホに心底呆れつつも、
『はい、はい、ここに残ったメンバーは俺の所属先候補ね…』
と理解した俺は、
「私は現在、アルトワ王国に住んでおります。
ロックウェル伯爵様にも大変良くして頂き恩義があります。
そして、ガイナッツ王国には、我が商会の収入源の、特許の登録の際に大変世話になった鍛治工房があります。
さらに、フェルド王国には、間接的とはいえ既に領地もあり、カーベイル様はお話の解るお人です。
困りました…甲乙着けがたい…
しかし、帝国には全く恩義も何も…何なら期待感すらない!!
色仕掛けを仕込む暇があったら、先ほどの無駄な会議が要らないぐらいの案が出せたでしょ!?」
と怒ると、ずっと頑張って我慢していたらしいカーベイル様が、
「アルフ!いい加減にしないか!!
お前は昔から、見栄っ張りで、調子に乗りやすい癖がある!
国の一大事と呼び出した若者を自分の派閥に取り込む為に色仕掛けを…会議でもろくな意見も出さずに…」
と、怒っている。
皇帝陛下は、
「イルよ、そうは言うが、あれぐらいの情報では、何も解らないから決めようがないではないか…」
と少し拗ねる。
しかし、カーベイル様の怒りはおさまらない。
「解らないなら何故調べない?
まだ帝国に魔王軍が来てないから焦って無いのか?
違うぞ!対話の意思を示した時点で、もう相手との関係は始まっている。
お前はいつも初めで間違える!
困ってから考えるから取り返しが着かなくなるし、困ってから無理やり事を進めるから人が離れる…
心当たりが有るだろうアルフ!」
と皇帝陛下を叱っている。
『流石は同級生、もっと言って下さい。』
と、俺は心の中で、フェルド国王のカーベイル様にエールをおくる。
シュンとなる皇帝陛下が、
「イルよ、今回の件…余はどこで間違えた?…」
と聞くと、カーベイル様は、
「そもそも、マリアーナの件からだ、こじれてから悩んで、運良く現れた少年を、道具の様に使い、投獄、生け贄、晒し者と…
その者の功績も称えず、労いの言葉も無く、大帝国の皇帝の所業とは思えない…
娘の事が落ち着いてホッとしたのは解るが、弛んどる!!」
とガツンとかましてくれた。
もう、カーベイル様が皇帝で良いじゃん!と思っているのは俺だけでは無いと思う。
そして、カーベイル様は、続けて、
「アルフよ、そなたにはキツイ罰を受けてもらう。
気楽に考えて、困るまで物事を放置し、行動が遅れる度に、流れる涙、失われる命がある。
いつでも、他者を敬い、生きている幸せ、平和の有りがたさを知らなければならない…」
と言いながら立ち上がり、皇帝の肩をポンと叩く…
皇帝陛下は、カーベイル様の言葉がブッ刺さったようで、
「あい、解った…如何なる罰も受けよう…」
と決意した顔で答える…
すると、カーベイル様か、
「よーし、本人もこう言ってるし、ポルタ殿、例のアレを思う存分ヤってやれ!」
と俺にいう…
あー、そういえばパーティーの時に例の祭りを開催するか悩んだ事を話したな…と思い出し、
「解りました。」
と俺が決意するが、
何の事か解らないアルトワ国王のお爺ちゃんはポカンとしているし、
俺が何をするかを理解してしまったガイナッツ国王は青ざめている…
そういえばボルト騎士団長経由で祭りの構想はガイナッツの方々には伝たわってたな…
しかし、思えば何故もっと早くヤらなかったのか…と今になって思ってしまう。
俺は、皇帝陛下に向き直り、
「それでは、皇帝陛下…先に命に関わる罰ではないとだけ伝えておきます。
場所は…どうしましょう?
俺が、入れられた牢屋にでも一晩入って貰いましょうか…」
と、俺が言うと、皇帝陛下が、
「牢に一晩か…子供の時に、父上から良くやられたお仕置きだ…
本当に牢に入るだけで良いのだな?」
と聞くので、俺が、
「はい、陛下はただ牢屋に入って一夜を明かすだけです。」
と答えたが、それを聞いたガイナッツ国王は声を出さずに『マジか。』と言っているが…
『マジだ。』
カーベイル様もイタズラっ子の目になっている。
アルトワ国王様…巻き込んでごめんね…でも…
ここに、第二回、お仕置きカサカサ祭りの開催を宣言します。
ということで、夕方迄に許可を得て地下牢に行くと、階段を降りたとたんに、
『王よ、ご帰還を心よりお喜び申し上げます。
我が一族4500、王のご期待に応えられますように日々鍛錬をして参りました。』
と排水溝の奥から聴こえる…
増えてない…前は三千だったよね?1.5倍だよ…と、思いながらも、俺はアイテムボックスからアルバイト代の食糧を取り出して床に山のように積み上げて、そして、依頼内容を伝える。
〈攻撃はしない〉
〈考えつく限りの恐怖を深夜から翌朝まで宜しく〉
〈走り回り、飛び回り、たまによじ登っちゃって〉
〈食糧は参加した皆で分けてね〉
と、お願いすると、
『御意のままに…』
と排水溝から無数の気配がして、
『皆、やるぞー!』
とリーダーらしい奴の声の後で、
『応ぉぉぉぉぉ!!』
と無数の声が聞こえる…俺は、
「では、決行は深夜であとは宜しく!」
と言って階段を駆け上がる。
すると後ろでは無数の気配が食糧を運び初めていた…
『気配とカサカサ音だけで怖ェェェェ!』
と逃げる様に牢に降りる階段を駆け上がり、準備万端ととのった。
その夜、シルクのパジャマを着てナイトキャップを被り、枕を小脇に抱えた皇帝陛下が、近衛騎士団と、フェルド国王と、心配して残ったガイナッツ国王と共に現れた。
フェルド国王が、近衛騎士団に、
「これは皇帝陛下が受けなければならない試練だ、叫び声が聞こえても、鳴き声に変わろうとも、助けを呼ばれても、何人も地下に降りることは、負かりならん!良いな!!」
と指示を出している。
皇帝陛下は、
「イルよ、大袈裟な…
余は、子供では無いぞ…地下牢が怖いわけは無い!」
と、余裕の表情で階段を下る。
メイドと近衛騎士が一緒に降りて、板のベッドにフカフカの布団を用意し、
「お休みなさいませ、陛下」
と告げて階段を登ってくる。
ガチャンと鍵の掛かる音が鳴り、
「では、陛下失礼致します。」
と言って近衛騎士も階段を登ってきた。
俺達は用意されたソファーに座り、地下牢に向かう廊下で、祭りの始まりを待っていた。
見張りの騎士と、
ワクワクしているフェルド国王と、本当にやるのか?と、心配そうなガイナッツ国王に、少し眠たい俺…
そして、草木も眠る丑三つ時…夜祭は、皇帝陛下のハイトーンボイスから始まった。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!」
「止めてくれぇぇぇぇぇ!」
との声に近衛騎士達が動こうとするが、
フェルド国王が、
「狼狽えるな!我が友は今、己と戦って居るのだ。」
と皆を制止する。
いや、いや、戦うどころか、ボロ負けの声がしますよ…と俺は、思うが、
「どれだけ増えるのだぁぁぁ、まだ増えるぞ!どれだけぇぇぇぇぇぇ!!」
と、下の牢屋にジェネリックのIKKOさんがいるらしい。
そして、ガイナッツ国王は皇帝陛下の悲鳴を聞いて、アワアワと青ざめている。
それでも、1.5倍、メガ盛りカサカサ祭りは続き、皇帝陛下の声もカスレはじめて、
「らめぇぇぇぇ、パジャマの中は…らめぇぇぇぇっ!!」
との声を最後に聞こえなく成った。
影の中で休んでいるガタ郎に、
『悪い、祭りの終了を伝えてきて。』
とお願いすると、
『了解でやんす。』
と言って、影のから出て階段を降りて行く
流石に暗殺クワガタが降りて行ったので近衛騎士達も後を追って地下に降りるが、騎士団の悲鳴もこだまする羽目に成った。
ごめんね騎士さん達…
無事に?
第二回、お仕置きカサカサ祭りも終了し、たった数時間でかなり老け込んだ皇帝陛下が担がれて上がっ来た…
理由は言わないが、今からお風呂に行くらしい…
メイドさんが、
「お部屋が用意して有ります。」
と言ってくれたので、その夜は宮殿で泊まらせてもらったのだが、翌朝、少し遅く起きると、メイドさんから、
「ポルタ様、午後より会議が御座います…ご用意を…」
と言われた。
流石は大帝国の皇帝陛下だ、あの祭りのあとでも、仕事をする気力が有るとは…と感心しながら会議に出席すると、
昨日とは別人のような、的確な指示を出す皇帝陛下がそこには居た。
「魔王領との交渉はポルタ殿に一任する。
彼の判断で、魔の森に魔王軍を迎えたとしても、我々が先んじて用意をすれば、もしも、魔王軍な策略だったとしても問題はない、
それよりも、本当に助けを求めて足掻いて居るのなら一刻も早く助けに向かうべきだ!
フェルド王国とワルド王国、それに魔の森に面している〈ヨーグモス王国〉はこれより数年がかりで構わないので、国境の守備を固めつつ、万が一に備えよ、
残りの国は、戦後で疲弊しているフェルド王国と新たに仲間に成ったワルド王国の支援を頼む。
勿論、帝国からも支援を行う。
皆、それで良いか?」
と…信じられないくらいのリーダーシップを見せる皇帝陛下…
しかし、会議の最中で資料の紙をめくる、カサッという音が鳴る度に、ビクンと成るのはご愛嬌だと思っておこう…
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