第46話 予定外の祭り
何故か毎度、毎度、長距離移動をすると、何かしらのトラブルにあってしまうが、今回もフェルド王国の王都の手前の森の中で、盗賊に囲まれてしまった。
しかし、おかしい事に、その盗賊団は同じような装備を身につけた百人程度の一団だった…
『面倒臭い香りしかしない…』
馬車の屋根で見張りをしていたミヤ子からの報告で、後ろからつけられていたのは知っていたが、なんとも厄介なヤツにからまれた…
とりあえず、ミヤ子に、
麻痺らせれる?と心の中で聞くと、ミヤ子は、
『お安いご用ですわ、王様。』
と言ってフワリと飛び立った。
道を塞ぐ一団に気づかないフリをして近づき、俺は、注意を引くために、
「なんですか、貴方達は?!」
と、わざとらしく騒ぐと、
「商人だろ?!食糧を大人しく差し出せ!そうしたら、苦しまずに殺してやる!!」
先頭の馬に乗った一団のリーダーっぽいムキムキのオッサンが、ハイリスク・ノーリターンの提案をしてきた。
俺は、
「盗賊にしては、揃いの鎧で…本当に盗賊ですか?」
と、恐る恐る聞くフリすると、
「ふっふっふ、勘のいいガキは嫌いだ…我々の存在を見たものは、生きて返すわけには行かない…」
と言っているが、
勝手に出て来て、勝手に見せたのはソッチなのに…と呆れる俺は、引き続き、
「貴方方は何処かの騎士さんですね?」
と、怯えてるっぽく聞いてみた。
ムキムキのリーダーは、自分に酔いしれながら、
「おっと少年、お前さんのボディーガードの白い熊も今、弓兵が狙っているから変な真似をするなよ。
我らは〈ワルド王国〉の騎士団だ。
逆らっても少年一人でどうこう出来るモノではない。」
と…アイツの中では死にゆく予定である俺に冥土の土産をくれまくる。
『アホだ、自分からペラペラと…』
俺が心底呆れたその瞬間、
「敵襲!」
「告死蝶だぁ!!」
と騒ぐ声が聞こえる。
ミヤ子から、
『リーダー以外全員に痺れ鱗粉の散布完了しましたわ。』
と、報告が有った。
パタパタと倒れていく味方を見て動揺しだすムキムキのオッサンに、馬車の御者台から跳躍で飛びかかり、雷鳴剣の峰に雷撃を集めて首筋に叩き込んだ。
しかし、それからが大変だった…
クマ五郎とガタ郎も召喚して、道の端に土魔法のピットホールで深さ5メートルどの大穴を空けて、装備をひん剥いたワルド王国騎士をポイポイとクマ五郎とクマ美に頼んで放り込む。
ガタ郎は既にパンイチで後ろ手にロープでくくられたリーダーのオッサンの肩に乗っ取り、首を甘噛みしてもらっている。
ガタ郎は、
『ほれほれ、動くと首チョンパでやんすよ。』
と楽しそうだが、ワルド王国の騎士団長はビビり散らかしている。
全ての騎士をひんむいて穴に放り込みが完了するのに数時間かかった。
騎士団長と副騎士団長だと言う二人と、流石に男だらけの穴に放り込むには気が引けたので、武器と鎧のみ没収した女性騎士三名を卵鳥の時以来使っていなかったサスペンション無しの荷馬車を取り出して乗せる。
穴のパンイチ団体に、
「良い子で待ってろ!
変な真似したらウチの告死蝶のミヤ子のお肉ドロドロ鱗粉の餌食になるからね。
マヂで餌に成って食われるのが嫌なら穴から出ない様に、穴の中なら自由にしてて良いから!」
と忠告して、ミヤ子に見張りをお願いした。
そして鳥小屋の時の木材の残りをアイテムボックスからだして、
『コイツらワルドの兵士です。
悪さをしてました。
餌を与えないで下さい。
個人的な恨みを晴らさないようにお願いします。』
と看板を立てて、フェルド王国の王都を目指して、クマ美のキャンピング馬車と、クマ五郎の旧式荷馬車で移動している。
本当に俺は、目的地にすんなり行けない呪いにかかっているかもしれない…
駄目で元々で、教会の偉い神父さんにクリアをかけてもらおうかな?などと思いながも、頭の中の地図を記録と検索のスキルで呼び出して確認しながら、夜の間ずっと移動して、朝一番にようやくフェルド王国の王都フェルドナに到着し、
門兵さんに、
「ワルド王国の騎士団をここから半日ほどの森で捕まえました。」
と報告すると、門兵のオッサンが、
「でかしたぞ!五人か?」
と言うので、門の横に全員分の装備をアイテムボックスから放り出して説明した。
あまりの量に驚いた兵士は、
「騎士団呼んでくるから待ってろ!」
と城に走って行ってしまい、待つこと約一時間、檻馬車三台と暑苦しいオッサン率いる騎士団が現れた。
「青年が捕まえたワルドの騎士団とはどいつだ?」
と聞くので、荷馬車のパンイチオヤジを指差すと、暑苦しいオッサンは、満面の笑顔になり、
「これは、これは、ワルド王国の英雄、銀狼騎士団のバーンズ騎士団長と懐刀の知将タムル副団長ではないですか!
我が国の領土を踏み荒らしてくれたのを追い返して以来ですな…
オイ、牢獄にご案内しろ!!」
と配下に指示を出して、俺に、
「青年、あとはヤツの手下を捕縛に向かう、案内を頼む。
今宵は良い酒が飲めそうだ!」
と、ご機嫌な暑苦しいオッサンの率いる騎士団の列を連れて森へ向かった。
パンイチ祭りを回収に、また森に帰ってきたのだが、ミヤ子はきっちりパンイチ達を見張ってくれたらしく、全員穴の中で大人しくしていた。
うるさいのは、フェルド王国の騎士団長の暑苦しいオッサン〈ザック〉さんだけだ、
「がははははっ!ヒィ、腹痛い、腹痛い!!
おい、皆見てやれ、戦場の狼と言われた、銀狼騎士団員が丸ごとパンイチで穴の中だぞ!
むせる戦場を駆け回る地獄の狼達が…ププッ…パンイチで、ギュウギュウ詰めって…
あ~、絵師のオヤジを連れてくれば良かった。
おい、だれか絵の上手いヤツ、この看板ごと描いて後で絵師のオヤジに渡しておけ。」
と、ご機嫌である。
むせる戦場って、どこのボトムズ乗りだよ…と、呆れながら大穴に縄ばしごを下ろして、一人ずつ檻馬車に詰め込み、全員穴から出したので、用済みに成った穴を少しでも埋めようと、端を崩す為にスコップをアイテムボックスから出すと、ザック騎士団長さんが、
「ポルタ殿、待たれよ、穴はこちらで埋めるゆえ、そのままで頼みます…ぷフッ、絵師のオヤジを連れてきてスケッチさせますゆえ…」
と、言っている。
俺が、
「パンツ祭りを絵画にしてどうするんです?」
と呆れて聞くと、
「コイツらには我が騎士団は散々裏をかかれて痛い目に逢わされましたので、王の許しが出れば、騎士団の礼拝堂に飾り、倒された仲間のあの世での酒の肴にしてもらう予定だ。
ぷっ、ヨシ、パンツ祭りという代名にしよう。」
と、満足そうにフェルドナの街に戻った。
結局夜に街に着いたので、高そうな宿に泊めてもらい、翌日、ザックさんと部下の方々のが宿に迎えにきて…何故か王様に謁見となった。
今度は覆面のヤツが斬りかかって来てもシバかずに逃げよう…と心に誓いながら、お城の廊下を進み、謁見の間に通されると、王様とフェルド王国の貴族達が総立ちで俺を迎えてくれた。
王様は、
「待っておったぞ、ポルタ殿。
ワシはフェルド国王、カーベイル・イル・ラ・フェルドである。
報告を聞いたが、そなたの様な若い冒険者が、あの銀狼騎士団を全員無傷で捕縛するとは、何の冗談かと…いま、こうやって我が目で見ても信じられないが、確かに銀狼の一団は牢に入っておった…ワシは昨夜から驚かされ通しだ…
しかし、そなたが捕縛した銀狼達は、ワルド王からの密命で、潜伏し、2ヶ月後にワルド王国は復興もまだな〈ヨルド〉の町を再び襲い、我らの軍が防衛に向かった隙に手薄になった城に攻め入り好き勝手する予定だったらしい…
我が国を救ってくれてた事、心より感謝する。」
と王様が頭を下げたとたん、ザッという音と共に貴族の方々が皆頭を下げている。
俺は、慌てて、
「王様、お顔をお上げください。
私は、襲われたので返り討ちにしたまでです。」
と答えた。
そのあと色々と話を聞くと、今回の戦はワルド王国が宣戦布告もなく魔の森を越えていきなり攻めてきたそうで、一度は国境のヨルドの町を占拠されたのを、フェルド王国の総力をあげて押し返す事ができたのだが、多くの者が命を失ったそうだ…
貴族の当主や長男に次男…酷い貴族はその全てを失い、今、国はガタガタらしい。
そんな中で、潜伏していた敵国の戦闘狂のエリート集団を一網打尽にして、敵の進軍予定も知れたのだ。
皆、口々に
「感謝してもしきれない」
と話してくれた。
そして、俺が、この国に来た理由をたずねて来たので、正直に、
「食糧難と聞いて、食糧を運んで来たのと、王国軍が大変な状態なので、魔物の間引きが間に合わないだろうから、出稼ぎに来ました。」
と伝えた。
すると、
「有難い事に、今年は、魔物が何故か極端に少ないので、出来れば早い目にヨルドの町に食糧を届け欲しい。」
と宰相さんにお願いされた。
魔物は少ないのか…遠征先ミスったかな?と思いながらも、兎に角、食糧を届けてからその後を考えようとしたら、お城で歓迎と労いのささやかなパーティーが開かれて出席することになった。
食糧難の町の為に食糧を送っているので、王都でも食糧は足りて無いらしい…
しかし、有るもので何とかパーティーを開いてくれた気持ちが嬉しい。
そのパーティーで、ウチの商会のヘンリーさんの営業ネットワークがこの国まで来ている事と、帝都のマリアーナ姫とサムさんの結婚式のパーティーで皇帝陛下が面白可笑しく、2人のキューピッドになった冒険者の話をしていたと聞かされ色んな意味で驚いた。
ある貴族さんからは、
「蜂蜜の商会の会長様でしたか…ヘンリーさんからは会長はお若い冒険者だと伺っておりましたが…これ程お若いとは…」
と言われたり、王様からは、
「まさか、噂の冒険者に逢えるとは…姫にフラれたそうじゃの…よいよい、ポルタ殿はまだ若いゆえ…」
と、同情された。
あの糞皇帝…酒の肴に面白可笑しく、要らんところを粒立てて…次回、帝都に行ったら本気でカサカサ祭りを開催してやろうか!?コッチはもう、拠点の森に闇の一族が済んで居るんだ、
現地採用の非正規従魔に闇の一族を指名するなど怖くも何とも無くなったんだぞ!!とプンスカ怒っていると、王様やザック騎士団長が、
「どうした?」
と、聞いてきたので、帝都でのクソ皇帝からの仕打ちを酒の肴として話すと、王様は、
「けしからん!
アイツは貴族学校の頃から悪ふざけが過ぎる!!同級生のワシからビシッっと言ってやる。」
と言ってくれた。
こうしてパンイチ祭りの後夜祭的なパーティーが終わった…
しかし、お酒が飲める様になったが、龍鱗魔銀の守りの腕輪の効果で毒無効が発動して全く酔えなかった。
酔いたい夜だったのに…気づいたの翌朝だった…
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