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仲間になりたそうに見ないで下さい  作者: ヒコしろう


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第43話 油断と後悔と

母屋で集まり、商会の全体会議を開く事にして、拠点の区画整理と、拠点の新施設案とを話し合う。


職員は勿論、蜂蜜生産チームのマリーと、工事担当のアンリも含めて色々と決めた。


まず、道を舗装して、母屋までの道の左側はパーシーさんの家が有るので、そのまま居住区画として整備し、道の右側には、蜂蜜工房と事務所があるので、右手奥の山の敷地迄を職人町にする予定にした。


その職人町に沿って山の温泉までの道を整備して、山道の右手は段々畑の様にして、花畑、栗畑、葡萄畑と蜂蜜用の花畑と果物や木の実の畑を植えて日当たりをきにしながら植物を栽培する事にして、アンリ達に管理してもらうこととなった。


山道左側は下の一帯は全てを花畑として、上の温泉までの一帯はそのまま森の状態で活用して、ハニーとマリーの一族の居住地にしてもらい、蜂蜜の生産と、山の野良魔物への警戒や討伐を頼む。


母屋のある丘の左エリアは今まで通り牧場区画としてライラさんにおまかせして、


母屋での右手を新たに開根して、手前を家庭菜園として活用し、中程に鳥小屋と、奥には新たに柵で囲み従魔専用の厩舎を作り、従魔達の運動場として活用しワイバーンやクマ五郎とクマ美達大きな従魔の住み処とする。


そして、母屋の奥側の広い森は、基本的にはそのままで、薪や建材用に残して、非正規組の住み処兼、ガタ郎達〈樹液ーズ〉の食堂とする。


将来的には拠点の更に左側に広がるの草原エリアも買って、農地にするのが次の目標だが、今は既にあるエリアの整備を最優先として、道の舗装などの工事の監督はノーラ母さんにお任せした。


暫くワイバーンの世話をメインしたアゼルとメリザに自宅周辺で出来るアルバイトとして、アンリ達が、道を作る為に引っこ抜いた森の木をアイテムボックスを使い移動させて、建材として乾かす様に一ヶ所にまとめておいて貰ってあるので、あとは、大工さんに温泉小屋や厩舎を建てて貰うだけだが、将来的には木工職人さんも商会に招きたい…

まぁ、今はすぐにでも温泉を仕上げたいので、ポプラさんに大工の親方との交渉をお任せした。


段々畑の様にした湯船は一番上は熱々なので、三段式の湯船を作り、徐々に冷ます方式をとった。


源泉から一段目にお湯を流して満タンになったら二段目へ、そして三段目辺りでようやく入りごろになる湯船は現在、野ざらしのままで、脱衣場すらないので、多少お金が掛かっても早く整備したい。


アンリ達も大工の皆さんが温泉まで行ける様に、急ピッチで山道を舗装してくれている。


あと俺の方は、冬までに妹のシェラ鍛えて、春に鳥小屋が出来た頃にはクイーン卵鳥をテイム出来るようにするのが目標とした。


シェラに、


「明日から暫く冒険者をして、

目標はクイーン卵鳥のテイムだけど、頑張れるかい?」


と聞くと、シェラは、


「ポルタ兄ぃ、私頑張る!」


とやる気十分に答えてくれた。



ー 翌日 ー


メリザのお下がりの装備を身に纏ったシェラと召喚したクマ五郎のキャンピング馬車でクレストの街を目指す。


クマ五郎を拠点に返す為に最初に召喚しないと駄目なのが一手間だが、コレをしないと行く先々でクマ五郎の厩舎代金がかかってしまう。


クレストの冒険者ギルドでシェラの登録をして、窓口の職員さんに、


「スライムとかの初心者向けの魔物はどこら辺がお薦めですか?」


と聞くと、


三ヶ所ほど初心者向けの狩り場を教えてもらった。


どこかで話を聞いていたのか、ギルドマスターのダサいマントおやじのエイムズさんが、


「ドラゴン狩りがスライムかよ!」


と冷やかしてきた。


俺が、


「妹がテイマーのスキルを授かったので、少し鍛えようと思いまして…」


と答えると、


エイムズさんは、首を傾げながら、


「ポルタの妹って、あの無鉄砲そうな弓使いじゃないのか?」


と、聞いてくる。


メリザは周囲から無鉄砲と思われてるのか…当たってるかも…などと俺が考えていると、妹は、


「シェラと申します。ポルタ兄さんをはじめ、アゼル兄さんとメリザ姉さんもお世話になっております。」


と、挨拶をする。


エイムズさんは驚きながら、


「本当にお前の妹かい?えらいシッカリしてるけど…」


と聞くので、俺が、


「俺達孤児で、血は一滴も繋がってませんが、シェラは間違いなく俺の可愛い妹ですよ。」


と答えると、


エイムズさんは、


「あの弓使いの妹とお前さんは血を分けた兄妹みたいに、見えたけどな…」


と、しみじみ考えているが、急にシェラの方を向いて、エイムズさんが、


「シェラちゃんだな。

兄貴のハチャメチャに付き合わされて困ったら俺に相談しろよ。」


と言っていた。


何で俺が、ハチャメチャなのか?!と、なんだか釈然としない気分のまま初心者向けの狩り場に向かった。


ハチャメチャとは失礼な…俺は、こんなに堅実なのに…と、あのダサマントに怒りを覚えるが、それよりも冬までにシェラを強くして、クイーン卵鳥のスカウトが出来るまでが、とりあえずの目標なので、今はそこに集中する事にした。


さて、どのくらいまで強くすれば、クイーン卵鳥をスカウト出来るのかよく分からないのが本音だ…

卵鳥自体は、角ウサギより少し弱い程度の魔物だが、必ず群れで居るために、群よりも確実に強いとクイーン本人に思わせないとテイムは難しいんじゃないかな?とも思う。


下手なレベルでシェラを卵鳥の群れに近づけたら、皆で攻撃したら行けるかも?とか思われて一斉に攻撃されたら厄介だし…

どこぞのジムで、バッジもらったら在る一定のレベルの魔物が命令を聞くとかならシェラにジム戦をやらせるが…

この世界では、別に冒険者のランクだけ上げても直接、従魔のスカウトには関係ない…

あくまでも、ご主人様の配下になりたいと、思わす何かがいるのだ。


卵から孵して親と思わすとか手は色々とあるが、やはり配下にして制御するには、単純な力関係という物差しが有った方が良い…と、いう訳で、シェラは現在、真面目に俺のサブウエポン、ゴング爺さん作の魔鉱鉄の槍を、スライムにサクリと刺すお仕事を頑張っている。


「ポルタ兄ぃ、スライムって何匹倒したらいいの?」


と、流石に飽きたのかシェラが聞いてきた。


まぁ、かれこれ半日、スライムばかりをサーチ&デストロイしてるからな…と考えたが俺は、妹に


「よし、シェラ、次は牙ネズミを狙ってみるか?

血とか出るけど大丈夫か?」


と、俺が聞けば、シェラは、


「アゼル兄ぃやメリザ姉ぇの狩ってきた獲物をさばいてるから大丈夫!」


と答える。


妹は武器の扱い方もそこそこちゃんとしてるし、装備もメリザのお古だがちゃんとしているので、このまま角ウサギと戦っても良い勝負をしそうだ。


それにシェラは魔物をさばいて料理してるから血を見てパニックになることも無さそうだし…


『よし、移動してみよう。』


と、水辺のエリアから、冒険者ギルドの職員さんに教えてもらった草原エリアに移動して索敵をかけて獲物を探し、そして、ガタ郎に獲物を追い立ててもらって、現在はガタ郎とコンビで槍を構えて牙ネズミと戦っているシェラ…

何とも真面目な槍さばきだ。


彼女は空いた時間も俺の教えた我流の槍さばきを綺麗な形で繰り返しているぐらいの真面目な性格なので、


コレはちゃんとした師匠…せめて槍術スキルの在るアゼルに教わった方が良いかもしれないかな?いや、アイテムボックスに有ったから槍を使ってもらっているが、もしかしたらシェラは他の武器の方が得意かもしれないし…もしかしたらシェラは、俺に気を遣い頑張っているだけで、そもそも冒険者家業は嫌いな可能性だって…などと、あまりに単調な作業に色々な事を考えてしまう。


ギルドの宿をとり、かれこれ一週間、シェラは角ウサギも倒せる様になり、Fランクに上がった。


Fランクの昇格のお祝いとして、シェラにダンジョンショップに予約していたお見合い市場で好きな武器を選んでもらった。


すると、手にするのが片手剣ばかりだった。


理由を聞いたら、


「槍は持ち運びが大変だし、防御力に不安が在るから片手剣と盾が使いたい。」


と、シェラが答えた。


なるほど…


ちなみに、シェラが決めた装備は、


鋼のショートソードで、〈切れ味〉と、〈インパルスショット〉という、6割程度の斬撃を20メートル程飛ばせるスキルが付いた使い勝手の良い品だった。


確かにこれならば、盾で守りながら遠距離攻撃で戦える…

シェラには時間停止付きのマジックウエストポーチをダンジョンショップで購入して渡して、


俺の使わなく成った〈ミスリルコートの盾〉もプレゼントした。


シェラはマジックウエストポーチより大きな盾がニュンっとポーチに収まるのが不思議な様で、何度も出し入れしている。


ひとしきり繰り返して満足したのか、


「ポルタ兄ぃ、ありがとー」


と喜んでくれた。


アイテムボックスから最近ずっと彼女が使っていた槍もシェラに渡すと、


マジックウエストポーチに入れてみるシェラは、槍もニュンと収まったのを確認して、


「おぉ?!」


と驚いていた。


確かにどう考えても入りそうでない大きさの物が収まるからビックリするよね…わかるよ…と、マジックバッグあるあるをやっている妹であるが、これで、彼女の武器も決まって、折角Fランク冒険者に成ったから、次は森に行って跳ね鹿やアタックボアでも狙うかな?

暫くその辺の相手でレベルを上げて自信をつけてからならば、クイーン卵鳥のスカウトも簡単に出来るんじゃないかな?

もしかしたら真面目でがんばり屋のシェラだから、案外雪が降る前にクイーン卵鳥ばったり遭遇してアッサリと従魔契約が出来るかもしれないかもな…と思い、翌日から森での狩りをしている。


やはり、シェラは器用で頭脳派だ。


ガタ郎が追い立てた跳ね鹿が高いジャンプをしたのを見計らい、着地地点にインパルスショットを打ち出して、足を切り払い、機動力を失った鹿に盾を構えて近づき仕留めている。


凄く順調なシェラの訓練に、俺は少し調子に乗って居たのかも知れない。


冬眠前の魔物の食欲…冬用の餌を蓄える為の狡猾な罠が、あちらこちらに有るにも関わらず、気を抜いてしまったのだ…


何かしらの罠にかかったのか、逃げようとしても逃げられない卵鳥を見つけたシェラが、可哀想だと卵鳥に近づく…


俺が、


「罠で狩りをしている猟師さんも居るから触っちゃ…」


と言った途端に


「キャァァァァァァ!」


と、シェラが罠にかかったようで、足に紐が絡まり逆さまに吊るされる。


そして、音も無くスルスルと樹上より糸を伝い降下してくるタンク付き便器程ある蜘蛛が数匹…


『しまった!』と、俺が思う暇も無く、ようやく雷鳴剣を引き抜き蜘蛛に飛びかかる時には、奴らは器用に連携してシェラを手繰り寄せてひと噛みすると、じたばたしていたシェラがピクリともしなくなった…跳躍スキルで飛び上がったが、手の届かない高さまで逃げきった蜘蛛が、俺を嘲笑うようにシェラにユックリと糸を巻き付けはじめる。


「てめぇら何しやがる!!」


と、飛び付けない程に高い樹上で、糸に包まれていく真っ青な顔のシェラの周りの蜘蛛達を睨むと、そこで初めて、木の上に糸にくるまれた何かが無数にぶら下がり、先ほどの数匹がただの先見部隊だと知る…


ワサワサ動く無数の蜘蛛…

普通で有れば鳥肌モノだが、今はシェラを守り切れなかった怒りと悔しさでそれどころではない。


影の中のガタ郎が居るだけで、他の従魔を連れて来なかった事を後悔する。


『旦那様、どうするでやんす?』


と、ガタ郎が指示をあおいでくるので、俺は、


『ガタ郎、シェラを下ろしてやってくれ、俺は、皆を呼び出す。』


と、心で指示を出すと、ガタ郎は電光石火でシェラをパッケージ作業中の蜘蛛を引き裂き、シェラの足から伸びる糸を掴み、顎で切り離す。


ガタ郎が、シェラをゆっくりと地面に下ろすのを横目で確認しながら、俺は召喚と指示を出していく


並列思考を使い二匹ずつ


〈クマ五郎・クマ美、召喚!〉


「二人はシェラに近づく蜘蛛を殲滅しろ。」


と、先ずはタンク役にもなる二人を出して、次に、


〈コブン・マサヒロ、召喚!〉


「コブンはガタ郎に代わってシェラをバリアーで守れ、マサヒロは俺と合体」


ミヤ子のリンプンを使うには間合いが近過ぎるし、

セミ千代も、あの蜘蛛の群が錯乱状態になったら逆に収集が着かなくなるし、マリー達も複数の敵では毒がもたないかもしれないから、拠点組も休みで、このメンバーでいくぞ。


と、冷静に判断する自分と、怒りに震えている自分がいる…


「シェラを何としても守り抜け!

俺は、マサヒロと一緒に蜘蛛を薙ぎ払う!

ガタ郎もこい!!」


と、指示をだして、マサヒロの翼で舞い上がる。


「てめぇらだけは許さねぇ!

1匹残らず叩き殺してやらぁぁぁぁぁ!」


と龍鱗魔銀の盾と雷鳴剣を構えて樹上の蜘蛛に向かい飛び上がる。


「マサヒロは蜘蛛の糸に注意しながら奴らの間を飛び回ってくれ」


と頼むと、背中のマサヒロは、


『了解しました、王さまっ!』


と答えて


百近い蜘蛛と、奴らが張り巡らせた糸の隙間を風の様に飛ぶマサヒロに体を預け、俺は雷鳴剣で飛爪を発動したまま手当たり次第に怒りにまかせて蜘蛛に斬りかかる。


『よくも可愛い妹を…

許さない、許さない、許さない!!』


と、剣を振り回す。


樹上にぶら下がる糸で巻かれた物体が目に入り、


『あれも、シェラのようにされた人かも…』


と、思った俺は、ガタ郎に


「可能な限りで構わないからあの糸の玉を地上に下ろしてくれ!」


と指示すると、


『任せるでやんす!』


と、ガタ郎は目にも止まらぬ早さで奴らの根城を切り裂き、中身の解らない糸玉を次々と回収していく。


その間も俺はかなりの数を斬り捨ててたが、まだまだ居る蜘蛛達…


マサヒロの羽を借りて、蜘蛛の糸で固められた様な木の一番上まで舞い上がると、そこには、下の蜘蛛の母親らしきデカブツが俺に向かい糸を飛ばしてきた。


「アイツが元凶か!ぶち殺してやる!!」


と、俺の大事な家族に手を出した敵に、集束スキルで一点に集めたフレアランスを連続でデカ蜘蛛に叩きこむ。


蜘蛛の糸は火に弱いらしくいとも容易く燃え落ち、デカブツの尻にもフレアランスが突き刺さり燃えあがり、奴はのたうち回る。


しかし、そんなことで許せるはずもない俺は、あからさまな殺意をもって蜘蛛達に攻撃を加え続けるのだが、


そこで異変に気がついた…

四方から黒いうねりが木々の合間をぬってくるのだ。


そのうねりはまっすぐに、俺の元へと集まりながら、四方八方の木々に隠れる子蜘蛛を噛みちぎり、毒針を差し込み、切り裂くいている…

そう、多種多様な虫の軍団が、一丸となり蜘蛛に立ち向かっているのだ。


集まる黒いうねりが、新手の敵ではない事に一瞬ホッとしたが、俺の役目はまだ終わってない、


傷を負い「キシャァァァ!」と前足を上げて威嚇する母蜘蛛…


「てめぇと、てめぇの一族は絶対に許さねぇ!」


と、宣言した俺に応えるように黒いうねりもブワッと勢いが増す。


俺は、アイテムボックスからマジックポーションを出して飲み干して、


「ヨシ!」


と気合いを入れてから母蜘蛛との一騎打ちにうつる。


近づくとよく分からない液体を飛ばす母蜘蛛だが、


『毒無効の装備をつけている俺には効かない!!』


と、反撃に移ろうとする俺だが、しかし背後から、


『僕は、効きます…体が痺れます…』


と報告するマサヒロに慌ててクリアをかけた。


『くそ、地味に厄介だな…』


読んでいただき有り難うございます。

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