第41話 完成待ちと地竜狩り
アゼルとメリザはワイバーンの雛に付きっきりで世話している。
アゼルのワイバーンはメスの〈サーラ〉
メリザのワイバーンはオスの〈ノリス〉と名付けてそれは、それは、可愛がって、ノーラさんの名前からもらったネーミングらしい。
まぁ、1ヶ月では飛び回れる様にはらないだろうが、それでも宿を借りてから二週間ほどで、二匹のワイバーンは、ギリギリ手のひらサイズだったのが座布団サイズにまで育っている。
このペースで行けば半年もすれば二匹は厩舎行きになるだろう…
想定外なクマ美という新入り熊も仲間入りしたので、帰ったらミルキーカウ牧場の隣に柵を増設して、冒険担当従魔の運動場兼、離発着場にするかな…
牧場の厩舎もまだまだ空きがあるが、いずれは大牧場にして〈チーズ〉に〈バター〉工房も作りたいし、お菓子工房を作っても良いかもしれない。
我が家のテイマー人数も増えたので、繁殖力のスキルで沢山卵を産む〈卵鳥〉という魔物の上位個体〈クイーン卵鳥〉をテイム出来れば群れとして沢山の卵鳥が飼えて、卵の安定供給が可能となるし、プリンが再現できるかもしれない…
山を買って、温泉が手に入れば、温泉蒸しプリンや温泉玉子だって夢ではない!
夢が膨らむはかりではあるが、山より先に酪農エリアを増やす為に森の北側の草原エリアを買って開拓する手もあるし、何なら農地も開墾して小麦畑にしたらお菓子工房用の材料が全部そろうので、原材料費も抑えられる。
『おぉ、良いぞ、良いぞ!』
我が家には馬や、熊がいるから馬鍬を用意出来たら耕し放題だ。
妄想で楽しくなるが、その前に依頼をこなしてBランク冒険者を目指さねば、Cランクパーティーのドラゴンスレイヤーなど悪目立ちが過ぎる…
だけど、アゼルとメリザは当面は、冒険せずに子育てに専念するらしいので、冒険者パーティー〈ウチの大家族〉はメンバーが育休の為にまた俺ひとりのソロ冒険者として頑張っている。
現在は、クマ美とクマ五郎とセミ千代の熊ファミリーでミルトの街から東に三日間ほどの高原地帯に地竜の肉の納入依頼を受けて来ている。
クレモンズさんが、
「依頼を受けてのドラゴン狩りならBランクに一発昇格…」
と、言っていたので、ドラゴンは厳しいが、飛ばないし、ブレスも吐かない地竜ならばギリギリ、セミ千代のパニックボイスとシロクマ達に押さえ込んでもらったら何とか成りそうだから来てみたのだ。
しかし、日に日に仲良くなるクマ五郎とクマ美にセミ千代がヤキモチでも焼くかと心配したが、セミ千代は、
『親びん、姉ごぉ、お散歩楽しいね。』
と、遠目にはシロクマの夫婦と色違いの小熊が背中にしがみついているみたいだ。
仲良く成って良かったよ…と安堵する俺だが、しかし、こうなると俺の異物感が気になる、熊の親子をストーキングしている気分だ…
などと考えながら、高原地帯の散歩して地竜を探していると、高原ネズミという繁殖力旺盛なカピバラサイズのネズミを追い回して倒している地竜を見つけた。
今回の依頼は、あくまでもお肉だ…
あまりシバき回したりしたら肉が駄目になるので、一撃でシメる必要がある。
ネズミ群れの何匹かを倒した地竜は現在それらをムシャムシャと美味しく骨まで全て頂いている最中で、この高原地帯の絶対強者は、何に怯える事もなく悠々と食事を楽しんでいるご様子…しかし、我々にすると、食事に集中して警戒が薄れている今がチャンスと、全員が配置につき、先ずはお食事中の地竜にセミ千代がパニックボイスを当てると、地竜は恐怖を覚えたのか食事を止めて、身を低くして目だけで辺りをキョロキョロ見ている。
しかし、地竜がビビる相手は飛べるタイプのドラゴンぐらいで、上ばかりを気にしながら伏せている地竜の横っ面をシロクマ二頭で左右から押さえ込む。
更にパニック状態になる地竜に俺は、高速移動で駆け寄り、
「いち、にー、の、さん!!」
と掛け声をかけて、雷鳴剣の切っ先に集束スキルでサンダーの魔法を集めて、地竜の目玉の奥の奥…ヤツの脳ミソを目掛けて剣を突き立てようと構える。
感電しないようにタイミング良く飛び退くクマ五郎とクマ美を、横目で確認した俺は、スキルで強化した身体能力の全てを使い、奴の目玉に雷鳴剣を突きたてる。
下っぱといえどドラゴン一族の地竜君は流石に正面からまともに斬りつけてもその硬いウコロに阻まれ、傷をつけることすら大変であるが、いくら鍛えようと固くなりようのない目玉は、俺にも突き刺せる。
深々と突き刺さった雷鳴剣の切っ先から爆る稲妻が地竜の視神経を伝い、脳を駆け巡りショートさせるが、最後のひと暴れで吹き飛ばされてた俺は岩に強か叩きつけられて、魔鉱鉄の鎧が見事に破損してしまい俺自体も、かなりのダメージに悶えている。
「クッソ!痛ってぇ…」
と、消え入りそうな声で文句を言いながら、初のライフヒールは自分にかける羽目になった…
マジックポーションを取り出して、何度もライフヒールを使い回復する頃には、クマファミリーに囲まれて、かなり心配されながら立ち上がり、
「大丈夫だよ。」
と軽く無事を伝えながら獲物をアイテムボックスにしまって討伐完了と成った。
帰りの馬車の御者台の上で千切れたアーマーリザード革やガリガリに擦れた魔鉱鉄の肩当て部分を軽く擦りながら、
「今までありがとう」
と労いの言葉を身につけている鎧にかけながら街まで戻った。
地竜の肉の納入も済み、無事にポイントが貯まってBランク冒険者になれた。
長かった…パンと干し肉一枚で飢えをしのぎ、野宿をしていた最底辺から、一人前の冒険者としてのスタートラインに俺は、ようやく立てたのだ…
地竜は肉以外も丸ごと売り払い、依頼達成報酬と皮等の買い取りで大金貨30枚近く手に入れた。
肉の納入もなかなかの報酬だったが、魔石や血、心臓などの臓器まで、錬金術師や創薬ギルド等に高値で卸されるらしく、ポイントと料金の両方で凄くお得な依頼だった。
夢の狩人の皆さんが依頼を1つ2つこなせば、冬場に仕事しなくても過ごせるのがわかったよ…
まぁ、俺は家族の為に冬も働くけどね。
クエストを終わらせた俺は、装備が壊れたのをゴング爺さんに見せたら、
「あと一週間程度で新しいのが完成するから大人しくしとけ。」
と言われたので、ミルトの街をブラついている。
冒険にも出ずに、やることがあるのか?と思っていたが、観光やショッピング、それに教会でスキルチェックなど案外やることが盛りだくさんだった。
アゼルとメリザは飽きもせずにワイバーンの世話を頑張っているので、俺は単独行動を楽しんでいる。
俺のレベルがドラゴンを倒した事もあり、レベル58にまで上がり、テイマースキルもレベル4に上がって従魔の枠が20に成っていた。
現在の従魔は9匹なので、あと11枠…急に増えたな…枠…
あと、虫の王もレベル4に上がって、自分のレベルより上のレベルの虫魔物にもお願いが聞いて貰い易くなったようだ…と言っても、レベルの問題では無くて、基本的に虫には可能な限り出会いたくない気持ちもある。
だいぶ免疫がガタ郎達のおかげでついたとはいえ、一気に『虫好き!』みたいにはなる訳がない。
最近になって、前よりだいぶ我慢できる様になったぐらいだから…
それから、ミルトの街を巡り、あとは、食糧の補充やガイナッツ王国は鍛冶の国なので、日用品の鍋やフライパンをお土産に買ったりとショッピングを楽しんで過ごした。
そして、全ての装備が出来上がったとゴング爺さんの工房から伝言が届き、クマ美の引く馬車でワイバーンも連れてゴング爺さんの工房に向かった。
ゴング爺さんが、ギンギンの目で待ち構えていて、
「ポルタよ、最高傑作が出来たぞ!」
と自慢してきた。
俺の装備は、
〈龍鱗魔銀の鎧シリーズ〉
ミスリルにグリーンドラゴンの鱗の粉末を混ぜて鍛えあげた、少し緑がかった鎧で、ドラゴン革と柔らかいドラゴン革を上手く使い分けて物凄く動き易く、装甲部分の金属もミスリルなのでとても軽い。
〈防御力上昇〉
〈魔法防御力上昇〉
〈耐久力〉
〈修繕〉も付与されている。
グリーンドラゴンの鱗の効果で付与しなくても〈風属性耐性〉がある装備で、ミスリルの特性で魔力を流せば一定時間防御力が上がり、魔法耐性も合わせて上がるすぐれ物だ。
そして同じ素材と同じスキルの〈龍鱗魔銀の盾〉と、
同じ素材を使用した〈龍鱗魔銀の魔力の腕輪〉は、上質な宝珠を使用した大型外部魔力タンク
〈魔法攻撃力上昇〉
〈魔法防御力上昇〉に加え、
〈魔力吸収〉という、攻撃を当てた敵から魔力を奪うスキルも付与された逸品である。
そして、
〈龍鱗魔銀の守りの腕輪〉は、
〈即死無効〉
〈精神攻撃耐性 大〉
〈毒類無効〉
〈防御力上昇〉がついた、頼もしい作品であり、ビューティーさんが作って、ペアさんが付与を盛ってくれた最高傑作の一つだそうだ。
装飾品達を装備して、前の物はアゼルとメリザにお下がりとして渡した。
アゼルの装備は、〈龍鱗魔銀の槍使いの鎧〉
槍使いの為に盾が使えないので、籠手の装甲が厚めの鎧でスキル性能的には、俺のと同じだが、成長を見越して柔らかいドラゴン革などで、俺の物よりも調整がきく設計だ。
そして、〈風牙の槍〉は、グリーンドラゴンの牙とミスリルを混ぜた金属で作った槍で、風魔法〈バースト〉の効果で突き刺した刃先から魔法が発動し、内部で圧縮された空気が爆発してダメージを与える。
〈攻撃力上昇〉
〈貫通力上昇〉
〈耐久力〉
〈修繕〉
とグリーンドラゴンの牙の効果で風属性の攻撃が上昇する効果がある。
メリザは、
〈龍鱗魔銀の胸当て〉と〈ドラゴン革の服〉
〈ドラゴン革のブーツ〉と〈ドラゴン革のフード付きマント〉
と軽さを重視した動き易いドラゴン革の装備にドラゴンの魔石をなどな素材を加工した染料でシックな黒に染めてある上品な見た目に、
〈防御力上昇〉
〈魔法防御力上昇〉
〈耐久力〉
〈移動速度上昇〉なども付与された装備で、それに加えて、メリザがこっそりビューティーさんに依頼していた、〈守りの首飾り〉は、金とミスリルの合金に大粒の宝石を使った、
〈防御力上昇〉
〈魔法防御力上昇〉
〈即死無効〉
〈毒耐性中〉
の効果の首飾りであり、それと、ドラゴンの角とミスリルで作った〈風の杖〉は、
〈集束〉のスキルで魔法を1点に集める事のでき、
〈魔法攻撃力上昇〉
〈魔力吸収〉も付与された魔杖である。
ゴング爺さんは、
「装備だけならAランク冒険者にも負けんぞ、あとは中身の力量だけだな!」
と、満足そうに語り、タッグさんが、
「そのうち要るだろうから頼んで作っておいたよ。」
と、アゼルとメリザにワイバーンの鞍を鎧の残りのドラゴン革で作った物を渡してくれた。
確かに少し気が早いきもするが、アゼルとメリザは物凄く喜んでいたし、
よし、拠点に戻るか!
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