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仲間になりたそうに見ないで下さい  作者: ヒコしろう


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第40話 新たなる力の為に

さて、何一つ良い思い出がないこの街だが、まさか、こんなに早く再び来ることになるとは…

まぁ、買い物をしたらサッサと帰るから、滞在する気はサラサラないので、トットと用事を済ませる。


スキルショップで武器用のスキルスクロールをまず買う。


アゼルの槍用に中級風魔法の〈バースト〉という圧縮した空気を爆発させる魔法を槍と組み合わせて内部からの破壊を狙うらしく、

メリザの杖用には〈集束〉という魔法の効果を一点に集めて打ち出すスキルで、範囲は狭くなるが威力が上がるスキルを杖に付与することにより、微妙な調節は杖に任せて、本人は魔法に集中することができる様にするらしい。


便利そうだから、俺も購入する事にするが、俺には並列思考スキルがあるから、自分自身が取得して使うことにする。


そして、ドラゴン討伐のお祝いに、アゼルとメリザに〈テイマー〉と〈アイテムボックス〉のスキルスクロールを買ってあげた。


これで卵が孵化しても大丈夫だろうし、荷物も少なくワイバーンに乗れることだろう。


俺っていいお兄ちゃんだな…と、誰も言ってくれないので、自分で誉めておこう…

それとは別に予算を一人大金貨十枚で、好きなスキルを購入することにした。


俺もテイマースキルを取ろうかな?と、思ってペアさんに相談すると、インセクトテイマーもテイマーも従魔の枠は共通だから、あまりお得ではないと言われたので、諦めることにした?


残念ワイバーン騎士というフレーズに中二心が騒いだが…

まぁ最悪、マサヒロとドッキングすれば飛べるから良いか…

それと、今回のビックリ臨時収入は大体大金貨百枚…装備とスキルに半分使って、半分は山の購入貯金だ。


アゼルはペアさんと相談して、何やら真剣な顔で選んでいるし、メリザはアホみたいに、魔法の棚を物色している。


何を買うかは二人に任せよう。


俺も、目当ての魔法スキルを探し、大金貨五枚のお高いスキル、回復魔法の〈ライフヒール〉と、毒や、麻痺、病気、呪いなどを治す〈クリア〉を買って終了した。


これで、兄弟たちの怪我も病気もガッチリサポートできる。


そして、アゼルもメリザも思ったスキルが手に入ったらしくニコニコしている。


さて、この後の予定はガラクタ市場に向かうだけだが、アゼルとメリザは、


「早く孵化させたいからクマ五郎と馬車で卵を温めとくね。」


と、言っている。


もしも今日あたり孵化しても良いようにガラクタ市場に行く途中で、生肉でも仕入れとくか…と、思いながらペアさんと二人で、ガラクタ市場に向かった。


ペアさんの相変わらずの、交渉術に感心しながら、買い漁った商品をアイテムボックスにしまっていく。


流石に二回目という事で、以前の様に置いて行かれそうにはならない。


間近でペアさんの、


「親っさん、知ってるんだよ…裏にもっと良いやつ隠してるんだろ?

出せよ、出して楽になりなよ…まとめて買うからさぁ。」


と、カツアゲのような口調で良い宝珠を見つけたらしく店主と交渉?をしている。


やっぱりペアさんの買い物は見ていて飽きない。


やっと買い物も終わり、あとは、逃げ…いや、帰るだけだ。


この街に居てもろくな事にならなそうだし、クマ五郎キャンピング馬車で、さっさとミルトの街に戻ることにした。


有難い事に、卵を温めるのに夢中で、アゼルとメリザが、


「観光したぁーい」


とか言わなかったので、スムーズに帰路につけ、また二週間の馬車旅が始まった。


特に楽しみもなく、移動、キャンプ、移動、キャンプを繰り返す。


そんなある日のキャンプ中、キャンピング馬車の中で眠っていると、外で寝ているはずのクマ五郎が、


『王さまぁ、起きてぇ、大変だよぉ。』


と、俺を呼んでいる。


眠い目を擦りながらも武器を手に馬車から降りて、クマ五郎を見ると…彼は何かに抱きつかれている…


『やっとみつけた!もう離さない!!』


と、クマ五郎にしがみつき、頭をグリグリしている灰色の塊。


クマ五郎は、ウトウトしていたところを襲われたらしくて、もう逃げれない程にガッチリホールドされ、


『離してよぉ、』


と、モゾモゾしながら逃げ出そうとしている。


もう、何がどうなったているのか?…

俺が、クマ五郎にしがみついている灰色の腕が四本の熊に、


「あのー、ウチのクマ五郎が、ビックリしていますから、一旦離して、お話しませんか?」


と、話しかけると、そこではじめて、俺が居たことが解ったようで、


『はっ!えっ?王さま…ですか?』


と、聞いてくる。


どんだけクマ五郎に集中してたんだよ…と、呆れながらも俺は、


「驚くよりも先に、離してあげて欲しいな。」


と、改めて言うと、渋々ではあるが灰色の熊はユックリとクマ五郎から手を離して、そのままのスピードで流れる様に土下座をする灰色の熊は、


『王さま、彼とのお付き合いをお許し下さい!』


と、頭を下げるのだが、ビジュアル的には土下座と言うより熊の敷物だ。


灰色の熊は、顔を上げると俺に


『何年も探し回って初めてなんです。

四本腕の熊にやっと会えたんです…

恋の季節になっても、私だけ同じ四本腕の熊が見つからずに…私だけ…私…だけ…』


と、泣き出した。


寝込みを襲われて、慌てていたクマ五郎もようやくベアハッグを仕掛けて来た襲撃者を確認し、


『仲間だったんだなぁ!』


と驚いている。


クマ五郎も仲間を探してたし…

四本腕の熊はレア魔物なんだろうな…と納得した俺は、眠いこともあり、

その後は、若い二人におまかせして、本人同士で話し合ってもらった。


結局、二人共に仲良しになったようなので、翌朝一番に起こされた俺は、彼女に(クマ美)と名付けて我が家の仲間に入ってもらう事となった。


目覚めると、四本腕のシロクマが、二頭になっていてペアさんをはじめ、アゼルとメリザが驚いていたが、直ぐに馴れたようで、メリザは、


「モフモフが二倍だぁー!」


と喜んでいたが…セミ千代がヤキモチ焼かないかな?…親びん大好きだから…と心配する俺だった。


ミルトの街に戻って、あとは装備の出来上がりを待つばかりで、ギルド宿を拠点にだいたい1ヶ月、この街で過ごす為に〈クマ美〉の従魔登録をしに冒険者ギルドの窓口に来ている…


彼女は、拠点から召喚していないので送り返す事が出来ないので、拠点に戻るまで俺達と行動を共にする必要があるのだ。


アゼルとメリザも旅の途中で生まれたてワイバーンの雛を登録の為に横で並んで手続きをしている。


帝都からの帰りの馬車の中で、


「生まれそう!」


と騒いで、半日馬車を停めて観察をしていたくらい熱心で、孵化したら…もう、子煩悩になり、流石は孤児院育ち、二人とも幼い者の扱いになれていて、四六時中ベッタリでニヤケながら世話している。


メリザが、


「ポルタ兄ぃだけ従魔と話せるのズルい!」


と言っていたが、話せるのはテイマー系スキルの効果ではなくて、虫の王のスキルの力だからである。


別の窓口で、冒険者宿と厩舎の利用を1ヶ月希望する。


しかし、従魔物と同じ部屋にするのにも、厩舎を借りるのにもなかなかの費用がかかり、それが1ヶ月だとかなりの出費である。


ワイバーンの雛はまだ小さいので、宿屋の大きめの部屋で面倒が見れるが、じきに厩舎でないと無理なサイズになるのは目に見えている。


従魔召喚が二人にもそのうち必要になるかな?と考えるが、それより今は、仮拠点も出来たので、宿屋に移動してぐっすり寝て長旅の疲れを癒そうと冒険者ギルドの出口に向かう途中で、ギルドマスターのお爺ちゃんクレモンズさんに、


「ポルタ君と兄弟の2人も、こっちに来てギルドカードを出して。」


と呼び止められた。


『何かやらかしたかな?』


とビクビクしながら三人ともギルドカードを提出すると、クレモンズさんの指示のもと、女性職員さんが何か魔道具でチェックしている。


クレモンズさんが、


「やっぱりだ、勿体ない…」


と、呟いた。


俺が、「なんです?」と恐る恐る聞くと、クレモンズさんが、


「ポルタ君、パーティー申請してないでしょ?

アゼル君とメリザちゃんは、院の双子ってパーティーだけど、ポルタ君のパーティー登録がいくら探してもないんだ…

おかげで書類提出が出来なくて困ってたんだよ…

いくら探しても居ないし、呼びに行ったらギルド宿も素泊まりでチェックアウトしてたみたいだし…もう!今からでも良いから登録して下さい。

ギルドマスター権限で、パーティー登録を遡って討伐日以前…だいたい私に狩り場の相談をした日にちにしておくから。

初めからしておけばもっと沢山のパーティーとして追加のギルドポイントとか入ったのに…」


と、言われたので、三人で相談して、パーティーの名前を決めるのだが、ルールとして2つの単語を組み合わせるので、1つは〈家族〉が良いとアゼルが、切り出して、メリザは、従魔やマリーやハニーの巣の皆も家族だから〈大家族〉が良いと言って、アゼルもそれに同意した。


さて、困ったのは、何の〈大家族〉か?〈大家族〉の何にするか?の問題なのだが、

拠点がある〈丘〉にすれば、〈森〉組が可哀想だし、孤児院のあった〈エマ〉にしたら従魔の殆どが対象外になる。


悩みに悩んだ末に、パーティー名、〈ウチの大家族〉に決定した。


職員のお姉さんからは、


「本当に、良いんですか?」


と念をおされたが、我が家のルールで家族会議で一度GOが出たものは再度家族会議を開かない限り覆らない。


無事にパーティー登録が済んだのだが…


『これで、何が変わるの?』


と考えている俺に、クレモンズさんが、


「はい、おめでとう、

本当ならドラゴンの解体を依頼したあの日に、この手続きをしたかったけど、驚いて忘れてたよ。

ゴメンね…えー、〈ウチの大家族〉は、ドラゴンを討伐出来るパーティーとして登録されました。

正式な手続きは、本部に書類を提出してからなので、1ヶ月ぐらいはかかるけど、宿を取ったぐらいだから居るよね?」


と、聞かれて、三人とも「はい。」と答えるが、何の手続きか解っていない…


クレモンズさんが、笑いながら、


「単独パーティーでドラゴン狩りを達成するチームは、しばしば聞くけど、Cランク冒険者が最高ランクのパーティーで、しかも三名での討伐なんて、数百年前の勇者様のパーティーだけじゃないのかな…?

話題になるよ。」


と、言っている。


アゼルとメリザは、


「ヤッタァー!」


と、喜んでいるが、俺は、


『何とも面倒臭い事になった…』


とガッカリしていた。


なぜならば、どうせ、ろくでもないイベントのフラグだと薄々解る様になってきたからだ…

念のために、クレモンズさんに、


「えーっと、ギルマス…一応確認ですが、ドラゴン狩りの称号持ちのパーティーのメリットは?」


と聞くと、クレモンズの爺さんは、


「ハッハッハ、決まってるよ。

名声と、強制レイドの場合に手柄をたて易い前線に配置して貰えるぞ!」


と…何処のナニが、メリットなのやら…


『今からでもキャンセル出来ないでしょうか?』


と、頭を抱える俺だったが、しかし、もう遅かった…アゼルとメリザが、


「ドラゴン狩りパーティーだって、」


「数百年ぶりだって、」


と喜んでいる…

とても、書類上も感情的にも、

『やっぱり無しで…』なんて出来る様な雰囲気ではない。


クレモンズさんは、


「ポルタ君、ドラゴンスレイヤーがCランク冒険者では…あれだから、もっと依頼を頑張って下さいね。

依頼でドラゴンを倒したのなら一発でBランクに成れたのに…」


と、言っているが、


「当面は、ドラゴンは殺りたくないです…」


と、答えて俺は、しょんぼりしながらギルドをあとにした。


もう、今日は宿屋で寝よう…。



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