第38話 素材集めに出かけたが
やっと、キャンピング馬車が完成しアゼルとメリザを連れて、ガイナッツ王国の王都ミルトに来ている。
アゼルとメリザの防具の新調がメインでゴング爺さんの工房に来たはずなのだが…
なんか凄いデカくて立派な鍛冶屋が建っていて、職人さんも沢山いる…あれ?道を間違えたかな?…それともゴング爺さんのおんぼろ工房はどこか大手に吸収合併をされてしまったのだろうか?と不安に思いながらも、試しにソッと中を覗くと…作業中のゴング爺さんと目が合った。
すると爺さんには、
「ポルタぁぁぁ!」
と叫びながら工房の中から走って出て来て、サワサワと俺を触りまくったのちに、満足したのか、ピタリと止まり、
「そんなに育ってねぇなぁ!」
と、失礼なことを言って、ガハハッと笑う。
俺は、
「一年でそんなに変わらないよ。」
と言いながら、工房の変り様を聞くと、ゴング爺さんは、
「おい、ポルタ、お前さんにも同じぐらい特許使用料が入ってるはずだろ?
弟子が増えたから、工房だってデカくなるさ。」
と言っている。
確かに土地やら建物やら家族の笑顔やらと散々使ったぐらいゴング爺さんにも入ってるもんな…
半分こだもんな…と納得しながら工房に入り、タッグさん達にも挨拶をしてからウチのアゼルとメリザを紹介した。
そして、まずこの二人の武器と防具と俺の防具をバージョンアップの依頼をアイテムボックスの中の鉱石をゴッソリと出して頼むと、ゴング爺さんに
「ポルタ、お前さん騎士団でも作る気か?こんな量…何十個作る気だ!」
と鉱石の山を見て呆れていた。
ここに来る間際まで鉱物ダンジョンに潜りまくっていたからこの冗談みたいな量も仕方ない。
その後、タッグさんやペアさんにビューティーさんも集まって会議を行った結果、
武器の追加の魔物素材やスキルなどはまた後日買うとして、
「防具の革素材にはドラゴンとは言わないが、ワイバーンかドラグーン…兎に角何でも良いからアーマーリザードより格上の奴を調達してこい。」
と、ゴング爺さんに言われて、狩りに行くことになった…
そんは話をしている間に、メリザはビューティーさんにコッソリ売らずに持っていた〈ルビー〉や〈サファイア〉などの原石を渡して何かを注文していた。
多分、スキルを付与したアクセサリーをお願いしたのだろう。
メリザも女の子よのう…と、その密談をあえて見て見ぬふりをしてあげた。
加工賃は多分、俺持ちになるだろうが、仕方ない…
出発前にバラスダンジョンで稼いだ分のお金をペアさんに渡して、ガラクタ市場でのスキルの買い付けと、武器用の追加の魔物素材の購入も依頼し、それからミルトの冒険者ギルドに行き、いい素材の魔物の情報や、ついでにボロい討伐依頼が無いかをチェックする。
三人でボードを眺めながら、「うーん、うーん」と唸っていると、ギルマスのクレモンズさんが、
「久しぶり、ポルタ君、何か困ってるのかい?」
と、気にして聞いてくれた。
「あっ、ギルマス、お久しぶりです。
ゴング爺さんの所で防具をお願いしたので、俺達の装備に使う皮素材を取りに行きたいんですが何が良いか解らなくて…
あっ、この二人は俺の兄妹です。」
とクレモンズさんに二人を紹介したついでに相談をする俺に、
「そうだね、う~ん…」
と悩んだあと、クレモンズさんは、
「前に行った竜の釜戸にはレッドドラゴンがこの時期だったら居るし、南の森の奥にはワイバーンの巣があるよ。
東の高原地帯には地竜がいるけど?」
と教えてくれた。
俺が、
「ギルマス…Cランク冒険者にドラゴンは無理でしょ?」
といったら、クレモンズさんは、
「うん、無理っぽいね。
しかし、配下のファイアードラグーンならいけるかもしれないよ。」
という…レッドドラゴンの子分を狙って、親分が出てくる前に一匹倒して逃げれば狩れなくも無いだろうが、あまり、アゼルとメリザに危ない橋は渡らせたくない…
しかし、防御力を担保するには少しでも強い魔物の素材のほうが良いし…と考えていると、影の中から、
『多分ワイバーンなら、アッシが羽チョンパなら出来そうでやんす。
それに、ミヤ子が最近出番が少なくて拗ねているでやんすから、殲滅戦に呼んでやって欲しいでやんす。』
とガタ郎が影の中から報告してくれた。
空中戦ならクマ五郎とマサヒロのコンビも使えるし、セミ千代やコブンは何ができるんだ?…まぁ、空は飛べるから何かはできるか…
蜂蜜担当のマリーとハニーを拠点防衛に残して、一度総動員してもいいかな?などと俺が、悩んでいると、アゼルとメリザは、
「どれから行く?」
と、全部行く気でいる。
『コイツら早死にしないか心配だよ…』
と、急に心配になった俺は、
「はい、とりあえずワイバーン一択です。
CランクはおろかDランク冒険者はドラゴンなんかに関わっちゃ早死にしますので却下です。
ワイバーンでも二人には危ないので従魔を大量投入します。
良いですね!」
と二人にいうと、
「えー」っとゴネていたが、
「今の装備では死にに行くだけです。
ノーラ母さん達が泣きますよ!いいんですか!?」
と諭したら了解してくれた。
ヤバイな…この二人は目を離したら何するか解らんぞ…自由行動で冒険させるのは、まだ先だな…と俺の過保護レベルを一段上げて二人をサポートする事にして、現在、クマ五郎の引くキャンピング馬車で、南の森の入り口でキャンプをしている。
ここからワイバーンの巣までは約三日あるらしい。
先にガタ郎を送喚し、
『明日から狩りをするのに従魔チームを大量召喚します。
マリーとハニーは拠点の防衛に残しますが、いつ召喚するか解らないので、しばらくマサヒロで飛ばない様にお願いします。』
と、マリーにノーラさん達への伝言を頼み、今晩キャンプをした後、明日は朝から森に入り、ひたすら真っ直ぐにワイバーンの巣を目指す予定だ。
ー 翌日 ー
朝から召喚により、マリーとハニーの蜂蜜組を除く正規従魔組が勢揃いした。
クマ五郎と、ガタ郎と、ミヤ子の性能はだいたい解るが、
マサヒロと、コブンとセミ千代は、樹液ーズに分類される以外はあまり良く解らない…
俺は、舎弟組に、
「えー、皆さん、日頃の拠点防衛業務お疲れさまです。
これから狩りに出発しますが、舎弟組の皆さんの能力を確認したいと思います。
マサヒロから順にヨロシク。」
と、いうと疾風アゲハのマサヒロは、
『マサヒロです。合体で飛べます。』
と、報告する。
うん、予想通りだね…と納得した俺は、
「はい次、セミ千代の番だよ」
と指名すると、
『熊ゼミのセミ千代だよ。前にいる相手に錯乱効果のある音をぶつけれるよ。あとクマ五郎の親びんと合体して戦えるよ。』
と報告するが…ん?指向性のあるパニックボイスかな?…あと合体って何?と疑問が増えた。
俺は、とりあえず最後まで聞こうと、
「では、コブン君よろしく。」
と指名すると、隠密カナブンのコブンは、
『ガタ郎の兄貴の舎弟のコブンっす。
隠密行動が得意っす。
普段は情報収集活動や連絡担当をしてるっす。
あと、クマ五郎の兄貴と合体してバリアーを張って盾になるっす。』
と、ハキハキと報告してくれたのだが、とりあえず解ったのは、『皆、クマ五郎と合体するんだね…』という事だけであった。
俺は、少し考えたが、作戦をたてるに当たり、どうしても気になったので、
「クマ五郎と合体ってなに?」
とガタ郎に聞くと、
『旦那様の妹さん達とクマ五郎が遊んだ時に、ノーラ様の様にクマ五郎とマサヒロの合体を見たがったでやんす。
そしたら、セミ千代が焼きもちで合体して、妹さん達が、ついでだからとコブンも連れて来て、フルアーマー・クマ五郎が出来上がったでやんすよ』
と説明してくれたが…
「う~ん、全く解らん…」
と俺が呟くと、クマ五郎が、
『やってみるんだなぁ。』
といって、立ち上がり四本の腕を広げる。
そして、
「がう!」
という、クマ五郎の珍しい鳴き声を聞いた途端、舎弟組がクマ五郎にしがみくと、そこには空を飛び、相手を錯乱させ、盾を持ち、残りの腕で殴り倒す…良く解らない合体キメラが出来上ったのだった。
ただ、クマ五郎のふわふわの毛に埋もれて、俺の苦手な虫っぽさが隠れた舎弟達は、
とりあえず、安心して見れるようになる。
という追加効果を発揮しているが…やはり、よく解らん…
俺は、とりあえず、
「うん…空中戦になったらヨロシク」
と声をかけておいた。
そして、
「ミヤ子、今回のワイバーンの巣を攻撃するのは、素材狩りと合わせて、アゼルとメリザのレベル上げも兼ねているから、ミヤ子の麻痺鱗粉が頼りだ。
一匹残らず麻痺らせて、地面に叩き落として欲しい。」
と声をかけると、ミヤ子は
『王様、おまかせ下さい。
一匹残らず叩き落として、首の骨をへし折ってやりますわ!!』
と、やる気十分だが…
へし折っちゃ経験値が二人に入らないが…まぁ、良いか…せっかくやる気なんだし…
などという、結団式を終えた俺達は、馬車をアイテムボックスにしまい、全員でぞろぞろと歩いて森に入る。
すると森に入ってからコブンの能力が炸裂した。
俺と同じ隠密スキルと索敵スキルを持っているが、物凄いスピードで飛び回れるので、俺よりも広範囲の索敵と、ついでの偵察もして帰ってきて、
『前方に大型猪魔物が2頭いるっす。』
などと、詳しい情報をくれる。
飛んでいる敵はガタ郎と、ミヤ子と合体勇者クマ五郎が倒すし、集団で襲ってきた敵は、セミ千代のパニックボイスで混乱している間に全員でボコす。
快適だが、これが…こんな快適なのが普通と思ってしまったらアゼルとメリザの教育上よろしくない!
それぐらいヌルい…
三日間の移動の後に、森の中に急に大きな岩の転がる開けた場所に出た。
石を集めた場所に木の枝で組まれた巣が有り、前世の幼い頃に恐竜図鑑で見たプテラノドンみたいな翼を広げれば5~6メートルも有りそうなトカゲ魔物?が、
「ギャアォ、ギャアォ」
と騒いでいる…
『まだ、なにもしていないのに警戒されている?』
と、一旦進むのを止めて、俺達は敵の様子を伺う…
既に気付かれて襲って来たのなら迎え撃てるように武器を構えて身を低くして相手のワイバーンを観察するのだが…
しかし、どう考えても俺達に敵意を向けている訳ではない様子である。
だが、警戒音を鳴らし、空に舞い上がるワイバーン達は揃って、森の更に奥の山の方に頭を向けている。
俺は、恐る恐るワイバーン達の目線の先に目をやると…
「マヂか!!」
と、思わず声を上げてしまった…
何故なら、ドラゴンが二体こちらに向かって飛んで来ているからである。
最低だ!
ドラゴンを避けてワイバーン狩りに来たのに、ドラゴンの方もワイバーン狩りに来てしまったようだ…
ドラゴンさんも二匹でデートなら他でして欲しいものだ…
うーん?今日はワイバーンが食べたいかなぁ?とか言われたか知らんが…何で今日なの!!
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