第30話 久しぶりのクレストの街
冒険者ギルド経営の宿をまた仮拠点にして依頼受けようと冒険者ギルドの奥でクエストボードを確認する。
現在、従魔はすべて牧場予定地周辺で自由行動をしてもらっている。
一つ残念なのは、芋虫君がサナギになって荷馬車にくっついているので、アイテムボックスにしまえなくなり、おかげでクマ五郎を召喚したとて、馬車が無い状態だ。
現在馬車は、果樹園の端に停めておいて、芋虫君の羽化待ちと、クマ五郎たちの仮の小屋として使っている。
ミヤ子先生の見立てではあと二週間程度で羽化するらしいので遠出するのは羽化後になる。
「近場で何かないかなぁ~?」
とクエストボードを眺めていると、
「ポルタ、早いお帰りだったな。
クレストの街が恋しく成って戻ってきたのか?」
と、夢の狩人の皆さんに声をかけられた。
俺は、
「えへへ、一発当ててお金が入ったから土地を買って拠点を作っています。」
と言ったら、リーダーが、
「おぉ、装備も立派になってるし、腰の剣はミスリルか?
おい?!どんだけ稼いだんだよ、ポルタ…」
と驚いていた。
俺が、
「皇帝陛下にも謁見したし、
皇帝陛下専用の馬車の木材は俺が倒したトレントが使われてるよ。」
と、自慢するとリーダーが、
「そりゃ、大仕事をこなしたんだな…で、ポルタはどれくらい強く成ったんだ?」
と聞く…
「ん?どれくらい…とは?」
と俺が首を傾げると、リーダーは、
「レベルだけど?」
と、改めて聞かれた。
そして、俺は気がついた。
「お金が勿体ないから、教会で鑑定してもらったことないや…」
と呟くと、
「ミスリルの武器を持ってる奴の台詞かよ?!」
と、メンバー全員にツッコまれた。
確か小銀貨五枚だったな…一度鑑定してもらおう…と、初めてやってきたクレストの街の教会で、お布施という名の鑑定料を払い祭壇の水晶に手をかざすと、水晶の下に設置してある羊用紙にレベルやスキルなどが転写される。
なんか、難しそうな魔道具だなと俺が興味深く見ていると、神父さんが、
「汝の次のレベル迄に必要な経験値は…」
と、装置を眺めてながら読み上げている。
『あっ、そんなのも解るのね。』
と、感心していると、
神父さんが、
「ん?あれ??」
と戸惑いだした。
俺は心配になり、
「どうしました?」
と聞くと、神父さんは、
「いやね、なんかジワジワと微妙に経験値が加算されているので…ホントに1とか2づつ増えて…」
と困惑している。
俺が、
「従魔が自由行動中ですから何か倒したかもしれません。」
と答えると。
「あっ、なるほど」と納得した後に、神父さんは、
「あと、3026…3000ぐらいでレベル36に成ります。」
と、言って、
「スキル表のお渡しをして…はい、以上です。」
と威厳も何もない有難い鑑定が終了した。
そして、ギルドに戻り、渡された羊用紙を、宿でゆっくりと確認をする。
『ポルタ 14歳 (男) レベル35
スキル
〈インセクトテイマー 〉★★☆☆☆
〈虫の王 〉★★★☆☆
〈アイテムボックス〉 ★★☆☆☆
〈フィジカル 〉ー
身体強化
頑強
豪腕
スタミナ
〈平常心〉ー
〈ブレイブハート〉ー
〈ターゲット〉★★☆☆☆
〈索敵 〉 ★★★☆☆
〈鉱物資源感知〉★★☆☆☆
〈跳躍〉ー
〈高速移動〉ー
〈隠密〉★★☆☆☆
〈忍び足〉 ★★☆☆☆
〈気配消し〉 ★★☆☆☆
〈不意打ち〉ー
〈並列思考〉ー
〈従魔召喚〉ー
〈記録〉ー
〈検索〉ー
〈初級魔法〉
エアカッター
アクアショット
〈中級魔法〉
フレアランス
ピットホール
〈生活魔法〉
クリーン
着火
水生成
ライト 』
と、描いてあった。
…俺…14歳なんだ…
まぁ、孤児だから正確な誕生日も解らないのは仕方ないけど…孤児院の爺さんかなり適当な性格だったからな…
それと、レベル35…
一般的なCランク冒険者のレベルが、よく分からないが、装備とスキル頼りでレベルが低い気がする…
噂ではAランク冒険者はレベル100超えがゴロゴロらしいからな…先は長い…
それに、このスキルの名前の隣の☆印はスキルのレベルかな?
★印がスキルレベルで、最大5だけど…育ち易いスキルや、育つのに時間がかかるスキルやら色々あるらしいが、〈虫の王〉がレベル3なのが納得いかない…
あぁ!あれか、初級ダンジョンの玉の効果で虫の王が、レベル2からの本格的冒険者人生だったからかな?
アイテムボックスはレベルが上がれば収納量が増えるらしいし、レベルマックスなら無限収納らしいが、スキルレベルマックスは使用者のレベルが一定以上無いと幾ら使い込んでもスキルレベル4で止まるらしい。
尚更先の長い話だ…
…で、〈虫の王〉のスキルレベルが上がると何が出来るんだ?
と、俺は帝都の図書館でスキル関係の本を目に焼き付ける作業に夢中で、全く読んでなかったので、改めて検索と記録スキルで虫の王のスキルの記述を思い出す…
すると頭の中に鮮明に、スキルに関しての本のページが現れ、そこには、
『虫の王 レジェンド級スキル』
と…嘘だろ!?
いらない所で、いらない運を使いきりやがって!!
聞いたこともないよ、レジェンド級スキルなんて…何々?
『レベル1、虫から好かれて、虫の気持ちを感じる事ができる。※片言で会話出来る場合もあり
レベル2、虫に愛され、虫と明確に会話ができる。
レベル3、虫に尊敬されテイム無しである一定の指示が出せる。
レベル4、レベルが格上の虫からも慕われ、ある程度の命令が出せる。
レベルマックス、望めば全ての虫を使役できる』
…凄い…のか…?
レベル3だからテイムなしでカサカサ祭りまでは可能であることは理解できた。
あと、非正規従魔が言うこと聞いてくれるのも虫の王レベル3のおかげだな…
テイマースキルはレベル毎に従魔の枠が5ずつ増えるから、現在俺の正規の従魔の枠は10となる。
インセクトテイマーと虫の王のスキルが、科学反応を起こして、従魔の進化を促すのは帝都の図書館にも無い新事実みたいだな…
はぁ~、虫関係がレジェンドスキルとは…初期スキルがコモンスキルで良かったから使えるモノならば何ヵ月も広場で寝泊まりしなくて済んだのに…と、今になり改めて己の呪われたスキルにガッカリしてしまった。
そして翌日、肩慣らし兼レベル上げで魔法ダンジョンのイルデダンジョンに来ている。
乗り合い馬車に久しぶりに乗ったが…ハッキリ言う、あれは、乗り物ではない…拷問器具だ。
ダンジョンに入ってから召喚された従魔達は、あの拷問を受けていないから元気である。
因みにだが、今朝知った情報では、俺のレベルはCランク冒険者のなかでは下から数えたほうが早いぐらい低いらしい…
確かに、敵を倒して強くなるよりも、ボロい仕事で買ったスキルに助けられたのと、前世の知恵でズルして手に入れた人脈とお金で装備を整えたからで、レベル上げ的な事はあまりしていないのではあるが…
なので、現在お客さんの少ないダンジョンで狩りをしてレベルを上げる予定なのだが、
しかし、動きづらい…
何故なら、初めて狩りに参加しているマリーが、ずっとくっついている…まぁ、嬉しいのは解るけど…俺が、もたつく間にガタ郎が首チョンパするし、ミヤ子は何かヤバい粉を振りかけると、パッシュン、パッシュンと群れごと倒している。
クマ五郎は相手の打ち出す魔法をひらりとかわして、以前よりキレが増したクマパンチを叩き込み、ドロップアイテムを拾って帰ってくる。
いや、俺のレベル上げに来てるから!とツッコむ俺に、
『ちょびっとだけなら旦那様にも経験値は入るでやんすよ。』
と、答えて倒し続けるガタ郎…
なんだか皆がやる気というか?必死というか?…何か嫌な事でも有ったのかな?と、心配しながら見ていると、マリーが、
「皆様、私が拠点を仕切っているから、最近影が薄くて、陛下にアピールしたくて必死なのですわ。」
と、俺にくっついきながら余裕な雰囲気をかもし出している。
まぁ、低層階だから皆が殲滅させても良いよ…俺の目的は中層から下でのレベル上げだから…
しかし、従魔の世界も色々有るんだね…と思いながらも俺の出番は、ほぼ無いまま10階層のボス部屋前に来てしまった。
前回みたいに順番待ちの列がパチンコ屋の新装開店ほど並んでいたら…と、心配していたが、現在は2組待っているだけであった。
半日以上待ちかぁ…と考えながら俺が、
「はい、今日はここまで、ボス部屋の順番が回ってくるのが、少なくとも、12時間以上かかりますので、皆さんを送喚したいとおもいます。
明日改めて召喚しますが、お供は二名ずつ交代制にします。」
と、発表すると
『えーっ』っと不満が起こるが、俺は、
「はい、嫌ならお留守番チームに任命しますよ。」
と、いうと皆、『仕方がないなぁ』と条件を飲んでくれた。
今日みたいに狩り尽くされたら、たまったもんじゃない…俺は、レベル上げがしたいのに…
そして翌日、
しまった…ガタ郎だけでも残しておくんだった…と俺は心の底から反省していた。
なぜなら、抱き枕サイズのゲジゲジ君がセーフティーエリアの入口の外から、じっとこっちを見ている…
セーフティーエリアはダンジョン産の魔物には効果抜群で、望んでは入って来ないがモグリのお外産の魔物は我慢すれば、入れるみたいだ。
しかし、あのゲジゲジは多分気が弱いのだろう、
『さぁ、話掛けて下さい。』
とばかりに入口付近から熱い視線を飛ばしてくるだけである。
ガタ郎がいたら説得のうえお帰り頂くのに…ヤツは何をするわけでもないが、帰る気配もない。
そして、気になり出したらもう…眠る事はおろか、休むことさえ難しい。
結局あまり休めないままボス部屋の順番が回ってきたので、昨日の会議の結果通り、マリーとクマ五郎を召喚してボス部屋にアタックをかける。
頑丈な扉を開き三人でボス部屋に入ると、そこには羽の生えたカバがいた。
あの小さな羽で飛べるのか?と考えていたら、羽をパタつかせると、エアカッターが羽から打ち出された。
間の抜けた見た目に反して、魔法もかなり鋭く、初めて出逢うこのダンジョンで確りと攻撃力がある魔法を連発で撃つ魔物かもしれない。
しかも、見た目と違い、カバの突進の速いこと速いこと…
初級ダンジョンのボスの牛より、はるかに速くて、デカくて、重い上に、魔法も撃つ…
マリーが、
「陛下にワタクシの実力をご覧にいれますわ。」
と、言って、カバに向かって飛び立つ、彼女はエアカッターをスルスルかわして飛び、カバに近づき、
「はい、チクッとな!」
とお尻の針を突き立てた…
すると、カバはプルっと震えた後に、身体中の穴という穴から血を流しだした。
カバの汗は赤いというが、あれは確実に血液で、にじみ出るというよりも毛穴から吹き出しているのでマリーのなにかしらの能力の結果だろう。
まぁ、主に鼻や口からドバドバ出てるから絶対汗ではないのは解る…
そして、カバは前足をガクッと折り項垂れ、程なくしてバシュンとドロップ品を残して消えた。
『何あれ…怖いわー…』
と、ドン引きの俺に、スッキリした顔のマリーが、
「如何でしたでしょうか?陛下」
と聞いてきたので、俺が、
「何か凄かったよ…」
と答えると、マリーは満足したようで、
「陛下、ワタクシの奥の手は1日一度なので、もう、巣に帰りたいと存じます。」
と言っている。
俺は、
「了解!」
と言ってマリーを送喚してあげた。
マリーは基本的には巣の運営と防衛が主だから、あまり連れ出さないほうが良いのかも…と、考えていたら、
残されたクマ五郎が、
『ぼくぅ、居てもいいのかなぁ?』
と、不安そうに聞いてくるので、俺が、
「とりあえず、二人で攻略しょっか?」
と、クマ五郎にいうと、
『おー、がんばるんだよぉー!』
と、やる気十分で多めの拳を突き上げてエイエイオーとやっていた。
俺は、ドロップした魔石やカバ皮に転移用のメダルを拾ってから先に進もうとすると、クマ五郎が、
『宝箱だよぉ!』
と、俺を呼ぶ。
あぁ、そういえば、初回ボス討伐のご褒美が有るんだったな…久々のボス戦だから忘れてたよ…
読んでいただき有り難うございます。
頑張って投稿しますので応援ヨロシクお願いします。
よろしけれはブックマークして頂けると幸いです。
〈評価〉や〈感想〉もお待ちしております。
皆様の応援がエネルギーに成りますので、
よろしければ是非お願い致します。




