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仲間になりたそうに見ないで下さい  作者: ヒコしろう


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第25話 楽しくないお茶会

Cランク冒険者に成れたのに、現在、装備をすべてタッグさん達に預けているために冒険にも出られない。


流石に武器が何も無いのは不安なので、魔鉱鉄のナタだけ先に耐久力上昇の付与を施してもらいアイテムボックスにしまってある。


といっても特に使う予定も無いのだが…

そして、外に行くにも、門の外のストーカーが気になる。


別に害が有るわけではないが、物陰から顔を半分だけだして暇さえ有れば、こちらを伺っている…


顔半分だけ日に焼けて、アシュラ男爵みたいなっちゃいますよ…とも思うが、

流石にガイナッツ王もあのストーカーが気になるらしくて、


「ポルタ君、流石に嫁入り前のお姫様が、1日中我が館を覗いているのは…ねぇ…マズいと思うんだよね…」


というが、俺がさせている訳ではないので、


「はぁ、そうですね。」


としか答えられない俺に、王様は、


「だよね、駄目だよね。

よし、ボルト団長に連絡して宮殿に行こう。」


と、言い出す。


『なんでよ…』


と思うが、しかし、王様に対して、館に居候の身の平民の俺は逆らう事も出来ずに 、騎士団が操る馬車に乗り宮殿に向かう事になる。


勿論、館の入り口のストーカーにも、ガイナッツ王は、


「これは、これは姫様、お散歩ですかな?

我々はコレよりポルタ君と宮殿へ向かいますが、ご一緒に馬車で宮殿へ参りませんか?」


とわざとらしく誘う。


すると、マリアーナ嬢は、


「そうね、ガイナッツ様…お願いしますわ。

ミーシャが少々疲れてしまい、一休みしていたとこですの…そうよね!」


と、侍女のミーシャさんに圧をかける。


「は、はい、姫様…あぁ、めまいが…」


と臭い芝居を始める侍女さんに、『大変だね…』と俺は心の中で労いの言葉をなげかける。


王様も安い芝居に乗ってあげるらしく、


「それはイケない!ささっ、馬車にどうぞ。」


と、乗車を促し、馬車の御者さんが足場を出す前に姫様は、ぴょーんと乗り込み俺の隣にちょこんと座る。


侍女のミーシャさんが「姫様…」と何か言いたそうだが、姫様は聞いちゃいない。


しかし、がっついて飛び乗った割には、真っ赤な顔でうつむき、別に何も喋らないのが違ったいみで怖い…

短剣を振り回して、勇ましく向かってきたヤバい奴と同一人物とは思えないのだが…

結局、宮殿に着くまで一言も発することなく、ただ空気清浄機の様に俺の横で、スーは~、スーは~と真っ赤な顔で俺の周辺の香りと、酸素を全て吸い取るつもりでは?と思うぐらいの呼吸を繰り返す…


なんだろう?お綺麗なだけに、残念感が凄いよ…姫様…


そして、宮殿に着くと、姫様は、


「疲れましたので、先に失礼して自室に戻ります。

皆様どうぞ、ごゆっくりして下さいまし…」


と言い残して、ミーシャさんと一緒にソソクサと消えて行った。


王様が、小声で、


「ポルタ君、どうするの?」


と聞くので、俺は、


「俺が、どうこうしなきゃ駄目ですか?」


と聞き返すのだが、王様は、


「駄目なんじゃないかな?

嫁入り前の姫様にナタで一撃…峰打ちとはいえ傷物にしたんだし…」


と、静かに答えた…


グフッ…それはそうなのですが…とハートにキツイ一撃を食らってシュンとなる俺の肩をポンと叩き、王様は、


「あとは、皇帝陛下と話して決めましょう…」


と、慰めではなくトドメの言葉を放った。


あぁ、どうしよう、逃げ出したいよぉ~…

てな訳で、現在、皇帝陛下とその奥さま方が三名に、囲まれてお茶会という名の裁判がとり行われています。


第三婦人のマリア様がニコニコしながら、


「マリアーナちゃんが、最近刃物を振り回さなくなって、女の子らしい表情に変わったの…」


と嬉しそうに話す。


あぁ、多分マリアーナさんは第三婦人の娘なんだな…目元がそっくりだ…出来れば性格までそっくりで有れば良かったのに…と、現実逃避を始めようとする俺に、皇帝陛下も、


「いかにも、我が娘ながら頭の痛い行いが目立ったが、ポルタ君に恋してからは、おしとやかになりおった。

ハッハッハ…」


と上機嫌に話す。


いやいや、皇帝陛下の頭が痛いのより、マリアーナ様ご本人がイタイのが全ての問題なのですよ…と思ったがグッと我慢した。


第二婦人のイザベラ様は、呆れた様に、


「他の子供達の婚姻にも悪影響でしたので、可能ならばこのまま嫁に行って欲しいですわ。」


と少しご立腹の様子…


何したのマリアーナ様は…本当に…と心配になる俺だが、絶対に嫁に貰う事はご遠慮したい。


そして、第一婦人のカトリーナ様は、


「全ての縁談が上手く纏まらず、名付け親の私も気を揉んでおりました。

あの娘も、冒険者に憧れていましたので、この際、冒険者の嫁にしては?

…ねぇ、ポルタ君。」


といきなり俺にふる…

飲んでいたお茶を吹き出しそうになりながらも、なんとか堪えて、


「わ、私でございますか?」


と聞き直す俺に、王様は、


「ポルタ君以外にいないよね。」


とイタズラっ子みたいな笑みを浮かべる。


…ダメだ、ここには敵しかいない…

このチャンスに一族のいわく付き物件を何とかしたい皇族の方々に、もう、楽しむ事にしたらしい王様…

そして、宮殿の騎士団から要らぬ援護射撃まで入る。


「ここ数日、マリアーナ姫様が護衛も付けずにお出かけになられており、困っております。」


と報告して、ガイナッツ王も、ここぞとばかりに、


「皇帝陛下、

それでしたら、姫様は、ポルタ君を見たさに我が館に参られております。

屋敷の側は我が騎士団が目を光らせておりますが、宮殿からの道中が心配であります。」


と…ガイナッツ王…俺を売ったね…敵しかいない…四面楚歌状態だ。


皇帝陛下も、


「それはまた、面白…いや、困った事態だな、

26にして初めての恋…応援してやりたいが、危険が伴うのは良くない…

あぁ、困った、困った。

わざわざ、宮殿を抜け出さなくても、意中の男性が宮殿に来て、マリアーナの話し相手にでもなってくれたらなぁ。」


と、わざとらしく困っておられる。


最悪だ…皇帝陛下も、楽しんでるよ…絶対…


ご婦人達は、

マリアーナ様を平民にするか、

俺に適当な爵位を与えるか?と勝手に話を進めようとしている…


ヤバい!激イタ、面倒臭い、ドM、ストーカー女子を押し付けられる!!


頑張るんだ俺!、考えるんだ俺!!

何とかして時間だけでも稼ぐんだ!!


先日購入した並列思考まで使い、二倍の量考えたが、元々こんな危機的状況の回避手段も知らない俺が、何人集まろうと、打開策など出てこない。


せめて、もう一人知恵をだしてくれれば、三人寄れば文殊の知恵的な事も有ったかもしれない。


しかし、俺の味方の三人目は、


『もう、鬱陶しいから交尾してしまうでやんす』


と、影の中から野生の強いオス理論を持ち出してくる…


詰んだ…

皇帝陛下達とのお茶が終わり、ぐったりして館の部屋で休んでいる。


とりあえず、無駄な足掻きと知りながら、俺が12歳でマリアーナ姫が26歳なので…と遠回しに年齢も、身分も違う事を全面に押し出してみたら、皇帝陛下が、


「うーん、じゃあ侯爵位と領地をつけるよ。

だったら、第一婦人としてマリアーナを娶っても、第二婦人は若い娘に…」


と、お貴族の常識を押し付けてきた…

俺は、もう、思い付く限りの言い訳を並べてみた。


我が家の宗派が一夫一婦制だとか、アルトワの近くで養蜂家として暮らす予定だとか、世界を回る予定で定住は当面しないとか…


何を言っても皇帝陛下チームは打開案をすぐに出してくるし、


最後には、「ポルタ君は娘は嫌いか?」と聞かれ、面倒臭い!とも言えずに、


「好きの、嫌いの、判断出来る程もマリアーナ様を良く知りません。」


と言ったら、皇帝陛下が、


「じゃあ、とりあえず。

お互いを知るところからだ…

デートだね。」


と…俺が、


「12歳っすよ?」


と最後の最後まで食い下がるも、皇帝陛下は、


「大丈夫、余は7つで婚約したし、16の歳には父親になっておる…」


と…


『んだよ、異世界!!結婚適齢期が早ぇよ!』


と心の中で叫ぶが、ますます26歳を押し付けたい意味がわかった気がした。


てな訳で、デートの約束と、ストーキングの中止を交換条件に帰って来て、ガイナッツ王は、1つ問題が解決してルンルンだが、俺は、もう疲れました。


ベッドサイドでミヤ子が、


『我が王を虐める奴に、死の粉を撒いてきますわ!』


と、俺を心配してくれている。


もう、コックローチパイセンと契約して、半月がかりで卵を産みまくりの増えまくりで、この帝都を黒い恐怖に沈めるしか無いのか…と頭をよぎるが、

いやいや、相手は人間、話せば解ってくれるかも…と思い直して、とりあえず、デートは決定してしまったから、姫様としっかり話をして…何とか…なるかなぁ~?と、淡い期待をしながら眠りについた。


不安ばかりが募る2日後に、宮殿からの迎えの馬車がきた。


近衛騎士団のサムさんというお兄さんと部下の近衛騎士団の方々が直々に宮殿まで護衛してくれる…と、言うか途中で逃げないか?の見張りの様に物々しい…


罪人の護送ですか…これ?と思えるほど、何故か嫌な圧を感じる。


特に会話もなく宮殿に着くと、今度は使用人の方々にドナドナされて、丸洗いされ、高そうな服を着せられ、


「頑張ってこい!」


と送りだされた。


ちなみに、すべて男性使用人でした。


まぁ、デートと言っても中庭の花壇を眺めながらお茶をするだけなのに、こんな親戚の結婚式に行くみたいなパリッとした格好の子供に仕上げなくても…と、よそ行きの衣裳に身を包んだ田舎者の俺が自分の格好にツッコミつつ、花が咲き乱れる中庭に向かうと、中庭にある鉄製の白いテーブルには既にマリアーナ様と侍女のミーシャさんが座っていた。


俺が、


「お待たせ致しました。」


とテーブルに向かうが、ミーシャさんは、


「いえ、この度は姫様とのお時間を作って頂きありがとうございます。」


と挨拶をしてくれたが、


マリアーナ様は下を向いたままだった。


テーブルでお茶を飲んでいる間も下を向いたままで、ミーシャさんにまたにゴニョゴニョと話し、ミーシャさんから又聞きをするという、大変面倒臭い伝言ゲームをしている。


ミーシャさんと直接話した方が早いし、盛り上がりそうな感じだが、根気強く語りかけて、最後には少しだけだが何とか顔を上げて、一言、二言話してくれる迄にはなった。


そして、マリアーナ姫が本日の精神力を使いきり、先に自室に戻られた後に、ミーシャさんからではあるが、マリアーナ姫がここまで拗らせた理由を聞く事ができた。


事の始まりは十数年前、マリアーナ姫様には1つの縁談が有ったらしい、全く好みでは無い14も離れた若い辺境伯だったのだが、歳や見た目より何より、パーティーで会った事のある、その辺境伯の中身がとても好ましくなかったそうだ。


縁談を断りたいが、少女の姫にはどうしたら良いか解らない…

マリアーナ姫は宮殿の屋根裏に逃げ込み、三日間隠れ続けて、お見合いの当日をやり過ごし、お見合い自体はケチが着いた為に無くなったのだが、姫という役目、褒美の替わりに嫁に行く事も有ると解っては居るが、魂の奥から嫌な人物に嫁ぐのは、どうしても許せない。


親は、あの辺境伯だけは嫌だと言っても聞き入れてくれなずに、見合いを組んだことから、いざとなれば、宮殿から抜け出して、一人で生きて行ける様になりたい…いや、そうならなくては!と、冒険者みたいな強さに憧れて剣を握る様に…

そして、近衛騎士団に成り立ての青年に剣の稽古を手伝ってもらい、いつしかマリアーナ姫は青年に恋を…


『ちょ、ちょい待ち!!それだと話が変わってくるよ…いいよ!、いいよ!!恋しちゃいなよ!!!』


俺は、はやる気持ちを抑えて、


「それで?」


とミーシャさんに聞くと、


「姫は騎士団の青年に貴方の本気を私にぶつけて欲しい!とお願いしたのですが、

青年は、私からは何も…ただ上を目指し、強くなるだけです…」


と、取り合って貰えず…と少し寂しそうに話す。


しかし、それを聞いた俺は、


『ん?へっ?…何の告白と、何の返事?

あれかな…お貴族様独特の風習とか、言い回しかな?』


と考えたが、解らんものは解らないので、俺は、改めてミーシャさんに確認をした。


「えーっと、姫様は青年の本気の剣を、受け止めてみたいとお願いしたのですよね…」


と聞くと、ミーシャさんは、


「はい、姫様は言葉よりも剣で語らえば、本当の気持ちが流れ込むからと…」


と答えた。


若干よく分からないが、Mっぽい発想なのは理解した。


姫は熱い一撃を打ち込んでみろ!!と…


んで、若い近衛騎士は、


「あなたの熱い気持ちを伝えて!!」


と、言われたと思い、言葉に出さないが、出世を目指す…


って…好き同士じゃねぇかよ!!


登場人物が残念賞なだけで、ちゃんとラブロマンスじゃねぇ~か!!


あぁ、俺に天からの光りが差し込んできた。


そして、お茶会の帰りに、近衛騎士団のサムさんに、


「ちょっと付き合え…」


と騎士団の練習場に連れて来られて、


「貴様に姫様は似合わない…」


と…剣を構えるサムさんを見て俺は、


『ビンゴじゃねぇ~かよ!!ありがとう神様。』


と、見たことはないこの世界の神様に心から感謝するしかなかった。


そして、俺はアイテムボックスからナタを取り出して、


「俺も、そう思う!」


と言って構えると、サムさんは、俺の返事を聞いて、


「へっ?」


と一声上げて固まってしまった。


これは、一度姫様抜きでミーシャさんとサムさんに会議を開いて貰うしかないな…面白くなるぞぉ~。


読んでいただき有り難うございます。

頑張って投稿しますので応援ヨロシクお願いします。


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