85話「夜の話」
色々と日本で金儲けの仕込みをしてから俺は日本から異世界に戻った。
ダンジョン近くの別邸に戻った時には夜の9時くらいになっていた。
そして俺は腹が減っていたので、別邸の厨房にて日本で買ってきた冷凍餃子を焼いて食べた。
いつも通りにダンジョンの壁画の前で俺が戻って来るのを待っててくれた騎士達の分も焼いたので一緒に邸宅内の食堂で食べているのだ。
「あ、無意識のうちに餃子を焼いてしまった!」
それを白米と味噌汁と共に、一緒に美味しくいただいてしまってる!
「なにか問題でも?」
「いや、この料理にはにんにくが入っているんだよ、だから君達の中にこの後、妻や恋人とデートの約束とかある者がいたら……すまないなと」
妻のところにも行けないな。にんにくの匂いなどをさせていてはあの美しいアレンシアと一緒には寝れない。申し訳ない。
りんごジュース飲んでから歯を磨いても完璧には消せるか怪しいところだし。
「我々がにんにくの香りをさせていたとしても、今夜はそんな色っぽい予定はなく、ずっと公爵様の護衛任務ですし」
「あ、それもそうか、じゃあ今夜は別邸に泊まって明日の朝に本邸に帰ろう。先触れの鳥だけは妻に送っておく」
「はい、それがよろしいでしょう」
俺はすぐにアレンシア宛に明日の午前中には帰ると魔法の伝書鳥を飛ばした。
◆ ◆ ◆
正直、アレンシアに男子を与えてあげたい気持ちがないわけではない。
男子の後継者の産めない貴族女性は大抵肩身の狭い思いをするらしいし……。
でも子供の性別などどっちになるかも分からないし、なにより……子が産まれた場合、本物のケーネストの魂がこちらの身体に戻れば、俺は……自分の子供と離れることになる。ミルシェラと離れるだけでも辛いのに……。
そして、産ませるだけ産ませて放置するくそ親父みたいだし、仮に俺の魂が日本の俺の中に戻ったとて、あの意識不明の身体ではすぐに死ぬかもしれない……そうなると遠くから見守ることすらできないだろう。
公爵家は金持ちだから乳母でもメイドでも子育てを手伝ってくれる人はいくらでも雇えるから、子育てによる肉体的負担は日本の一般庶民の女性に比べたらアレンシアには少ないはず。
ただ、出産の痛みは……こちらだと無痛分娩もないし、命掛がけの行為だ。神官も医者もいるとはいえ……。進んだ医療技術や薬、輸血、こちらにはないものが多い。
無論あちらには逆に魔法がないのだが……。
色々と悩ましいと思いつつも翌日には俺は公爵家に帰ったらまた妻に出迎えてもらったし、今回は娘も一緒だった。
「お帰りなさいませ、あなた」
「お帰りなさいお父さま!」
「ただいま、アレンシア、ミルシェラ。留守中、何も問題なかったか?」
「はい、特には」
「ミル、良い子にしてました!」
「そうか、えらいぞ、星祭りの日には二人にプレゼントがあるからな」
俺は抱きついてきたミルシェラの頭を撫でた。
「わあ! 楽しみです!」
「そう言えばあなた、星祭りに合わせてるのか、何かの飾りを作らせておりましたわね」
「ああ、そうだ、竹で灯籠……ランプをな」
早めのクリスマスイルミネーションを見てきた後にタイムリーな話題だ。
「変わった飾りだと言われてましたけど」
「そうかもな? そしてその竹細工の方はどうなってるとか君は聞いたか?」
「順調だそうですわ、小遣い稼ぎにやりたい人間が多かったようなので」
俺はアレンシアの返事に満足して、一旦執務室に向かった。
家令に聞きたい事があり、子供の前では聞けない話だ。
「そういえば例のサキュバスとインキュバスに操られた親戚の奴らの件はどうなってる?」
「公爵様のおっしゃっておられたように処理いたしました」
「そうか」
あとは、子作り問題だ……。
流石ににんにくの匂いは消えただろうが……今夜はどうしようかなぁ?
てゆーか、なんなら星祭りの日の夜とかにした方が……ロマンチックなのでは? と、思わないこともない。
本来、妻とは初めてではないはずだが、前にアレンシアを抱いていたのは、本来のケーネストであり、俺にとっては、アレンシアと本番をするのは初めてなんだ……。
あ、浮気調査でティーカップには出したことを思い出した……。へこむ。




