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幸せな明日はどっちだ!?  作者: 夜凪


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修学旅行、どこにする?

皆さん、こんにちわ。

現在、人生トップ3に入るのではないかという難問に直面している結愛です。


え?何ごとだって?

それはですね。修学旅行の行き先問題です。


誰ですか、そんな事って言ったの!

うちの学校を甘く見てはいけませんよ?!

なんと中学なのに行き先は海外で、アメリカ・イタリア・フランスと3カ国から選べるのです。


しかも「生徒たちにサプライズを」てことで、どこに行くかは知らされていないんです。

修学旅行がミステリーツアーってどうなんでしょう?

もちろん、保護者には最終的には連絡されるでしょうけど、選択中の今はまだ情報規制されているという徹底ぶりです。


「うーん、悩みます。昨年は、アメリカは定番と見せかけてインカ帝国の遺跡巡りだったそうですし。……せめて北米か南米かくらいは教えてほしいです」

「随分と悩んでいるね」


タブレットを前にウンウン唸っていると、お風呂上がりの兄が背後から覗き込んできました。

鼻先をくすぐるいつものシトラスっぽい香りにホッとします。


「選択肢が多すぎるのも大変なんです」

「ぜいたくな悩みだね」

 思わず後ろをのけぞるようにして泣き言をこぼしたら、くすくすと笑われてしまいました。


「いつもの皆と、場所を合わせるつもりなんだろう?相談して決めたらいいじゃないか」

「そうしたいのは山々なんですが、みんな「だいたい行ったことあるから、どこでもいいよ」て、一任されちゃったんですよ~」


 みんなで集まって話し合った挙句の一任だったんです。

 初めての海外旅行の予感にワクワクしていた私に、気を遣ってくれたんだろうな~という思惑が透けて見えるだけに、辞退するのも難しかったんです。


「あらら」

パタリと机にうつぶせてしまった私に、困ったように兄が頭を撫でてきます。


「そうだね、そういう事なら、とりあえずみんなのお勧めを聞いてみたらいいんじゃないかな?」

宥めるように二~三度頭を撫でた後、兄が三つ編みにしていた私の髪をフワフワとほどいています。


「ちなみにお兄ちゃんはイタリアに行ったんですよね。どうでした?」

「楽しかったよ。観光の他に、現地学生との交流会で、その子たちと一日一緒に街で遊んだんだよ。日常体験って感じで面白かったな」


優しい指先の気持ちよさに気分が浮上して顔をあげたら、ニッコリ笑顔付きで当時の思い出を教えてくれました。


そういえば、その交流会でアドルフォさんやレオと仲良くなったんでしたね。


そう思えば、修学旅行での出会いが一生ものの友情を育むことになるんですね……。

う~ん。さらに悩ましい。


「そういば、美香ちゃんは?うちと同じような一般家庭だし、空手も忙しそうで旅行とか行く暇なかったんじゃないのかい?彼女と相談したら?」

 ふと思い出したように首を傾げた兄を、思わずジトリと見つめてしまいます。


「……その空手、ですよ」

「ん?」

「美花ちゃんは日本一になっちゃうくらい強いんです。当然世界大会なんかも出るし、あのビジュアルですから、空手PRキャンペーンで海外ご招待なんかもあるんです。つまり結構いろいろな国へ行っているんです~」


仲間と思っていた美香ちゃんの、思わぬ裏切りが発覚した瞬間を思い出したら悲しくなってきました。

天才空手少女の思わぬオプションでしたよ。

でも、そういえばいろんな国のお土産貰ったし、お話も聞いてましたよ、私。


「ああ…………」

「そんな顔しないでください。大丈夫ですよ」

地雷を踏んでしまったとちょっと目が泳いでいる兄が面白くて、思わず笑ってしまいました。


「お兄ちゃんのアドバイス通りに、明日皆にお勧め聞いてみます。ガイドブックじゃわからない情報とかもあると思いますし、やっぱりこういうのはみんなでワイワイ決める方が絶対楽しいですもん!」

「そうだね。その方がいいよ」

笑いだした私に、ほっとしたように笑顔を返すと、兄がくるくると髪をお団子にまとめてくれました。


「方向性が決まったところで、お風呂入っておいで」

「は~い」

 ポンと背中を叩かれて、私はいそいそと立ち上がるのでした。





「と、いうわけでやっぱり1人で決定は寂しいので、みんなで決めましょう!」

決意も新たに高らかに声をあげれば、みんなキョトン顔です。


まあ、そうなりますよね。


「そもそも、修学旅行は計画段階から始まってると思うんです。みんなでワイワイ準備するの楽しかったでしょう?」


何を持っていくかの相談、みんなでお買い物。

夏の旅行では、それだって、全部キラキラの思い出になりました。


「つまり1人で決めるのは寂しいってことね」

私の主張をひとしきり聞いた後、美花ちゃんがにんまりと笑いました。


「それは…………」

ズバリ確信に突き込まれて、思わず怯みます。

思わず指をもじもじと絡ませますが、どうも誤魔化す上手い言葉は出てきません。

うん、あきらめましょうか。


「そ……それも………ありますけど」

「もう!ゆあちゃん、かわいい!!」

チラリとみんなの様子を伺いながら、それでもどうにか言い訳を絞り出そうとした瞬間、横から愛莉ちゃんに抱きつかれてしまいました。


「結愛ちゃんが好きな所選べたら嬉しいかなって思ってたけど、昨日の反応がちょっと微妙だったし心配してたんだよね」


いきなり抱きつかれてビックリしてたら、なんだか納得したように陸斗君に頷かれ。


「まあ、団体行動の行き先を1人で決めろってのもプレッシャーだよな。悪かった」

ちょっと困ったように洸夜君に謝られちゃいました。


「まぁね。よく考えたら、普通の旅行ならともかく修学旅行の行き先の選択1人に押し付けられたら、私も困っちゃうかも。良かれと思ったけど失敗だったかぁ」

ペロリと小さく舌を出して、わざと戯けたように軽く謝る美花ちゃん。


「じゃあ、改めてみんなで行き先を決めちゃいましょう。トップグループの私たちが入力しないと他が決められませんし」

するりと私から離れた愛莉ちゃんがパン、と場の空気をまとめるように軽く手を叩きました。


う〜ん、素晴らしき連携プレイです。

流れるような会話のやり取りに思わずポカンとしてしまいました。


というか、戸惑っていたの、しっかりバレていたのですね。

1人で焦ってて、ちょっと恥ずかしいです。


何はともあれ、みんなで話し合うことができるのは大賛成です。

思わずニコニコ笑っていたから、両隣からは頭を撫でられ、お向かいからはやたらと慈愛のこもった笑顔を向けられました。


あれえ?




ちなみに行き先は、前回の穴場がアメリカだったので次はどっちだろうという激論の末、イタリアに決定しました。

結局、面白そうな方向を選んじゃうのなんでなんでしょうね?


ちゃんちゃん。






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