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17話 依頼選び

 宿の椅子に座って複数の紙を眺める男、俺。

 そんな俺に対して背後から声がかかった。


「何をしているんですか? アッシュさん」


「次はどの依頼にしようか迷っている。報酬も重要だが美味そうな魔物いそうな場所がいいなあ、と」


「どんな所ですかそれは」


「どんな所ってそりゃあお前直観で……てリリティア、服装変えたのか。ってか変えれたのか」


 質問に答えながら振り返ると、そこに半袖の上着にミニスカートを履いたリリティアが立っていた。上下とも色は薄茶色。素朴なイメージがある革製の服。


「ええ、今は【色欲】が落ち着いていまして、比較的自由に服選べたんでコレにしました。ちなみにこんな事は滅多にありません」


「いつまで続くんだ?」


「それも【色欲】の気分次第ですね。……ねえねえアッシュさん、普段のセクシーな恰好も良いですけど、たまには普通の格好も可愛いですよね? 魅力的ですよね?」


 自分で言うのか。しかし事実その通りだ。

 その飾らない格好だからこそリリティアの顔立ちが、美男美女の多いエルフの中でも際立って整ったものである事が再認識させられる。

 普段顔真っ赤にして恥ずかしがっているくせに普通の格好になった途端自信持ちやがって。普通は逆だ。いや逆でもないか。


「ま、そんな事よりどの依頼がいいかリリティアも選んでくれよ」


 なんか悔しいのでこの質問は流してリリティアにも依頼選びを手伝わせる事にした。


「むー……はいはいわかりましたよっと!」


 意外と素直な奴だな。

 さーてではどれにしようか……ん? 太陽のリングが反応しているな。オルディエからの通信だな。


「はい、どうしたのでしょうかオルディエ様」


『……アッシュ様、貴方は何をされているのですか』


 え? なんだ突然? しかもやや低いトーンの声で。


「今は冒険者としての依頼を……」


 選んでいる、と答えようとしたが、それに重ねるようにオルディエは更に言葉を発する。


『そんな事を聞いているのではありません。貴方、リリティアちゃんに何をしたのです』


 ??? 訳が分からない。


「何って、リリティアも今俺と一緒に依頼選びを……」


『先ほどリリティアちゃんに渡した月のネックレスから感情を受け取りました。とてもとても悲しんでいる感情です。そう、これは「せっかく自慢のお洋服を着て殿方に見せに行ったのに相手はそれを褒めようともしないから仕方なくこちらから振ってみたけどそれすらもロクな反応を示されなかった時の乙女」の感情です。どういう事ですかアッシュさん』


「あ、あのオルディエ様、月のネックレスって心を読むものでしたっけ?」


『「感情」と仰ったでしょう? ネックレスから伝わるこの冷たく青っぽい感じ。リリティアちゃんの感情から、私が考えを読めないとでも思ったのですか?』


 逆になんでそんなフワフワした情報からそこまで的確に読めるんだよ。

 そこで念話の向こうで別の人間の声がした。


『聖女様ー! もうそろそろお時間です! ベルメッック王国の国王様がお見えになっていますよー!』


『今は重要な念話中です、待たせておきなさい』


 いや仕事しろ。


『アッシュ様、私言いましたよね? 「リリティアちゃんを泣かせてはいけない」、と。今回はそこまででは無いようですが、大事な大事なパートナーの一挙一動には細心の注意を払ってください。これは神から私を介してのお告げにして天命です。では今回はこれで失礼します』


 聞いた事ねーよそんなスゲー職権乱用。そしてそのまま切りやがった。

 この会話はリリティアにも聞こえていたようだ。通話の後、リリティアに視線を向けると目を丸くして驚いていた。


「なあリリティア、その月のネックレスで気持ちを送る時ってどうするんだっけ?」


「ネックレス持って念じるだけですけど……頭の中で凄い何かを伝えようとしているわけではありません……」


 だよな。つまり、マジであの聖女様感情からそこまで読み取ったんだよな。


「リリティア、その皮のドレス、とても似合ってるぞ」


「ほえ? あ、はい。えへへ、ありがとうございます」


 嘘ではないが、半ば言わされたお世辞でもある。それがわかっていてもリリティアは嬉しいようだ。

 そんなリリティアに俺はジェスチャーでサインを送る。首元をクイッと指をさし、口にはださず目で訴えた。

 その内容を察知したのだろう。

 リリティアは月のネックレスを両手で握り、目を閉じて念じた。 

 さほど時間を置かずに、俺が身に着けている太陽のリングが反応する。


「もしもしアッシュです」


『まあアッシュ様、流石はアッシュ様です。キチンとリリティアちゃんから嬉しい気持ち伝わりましたよ? リリティアちゃんもお世辞だってわかっているみたいですけども、女はそれでも嬉しいのです。そのお気遣い、忘れないでくださいね、ウフフ』


『聖女様ー! 国王様との会食中にどこにいかれるのですー!』


 そこで通話が切れた。

 俺とリリティアはしばらく顔を見合わせ、そして何事も無かったかのように依頼選びの続きを始める。

 しばらくして、リリティアが声を上げた。


「アッシュさん! これなんかどうですかぁ?」


 リリティアが選んだ用紙に目を向ける。


「『翼竜討伐依頼』、か」


 翼竜とは気性が荒く、戦闘力も機動力も高い危険な魔物の種類である。最低でも冒険者ランクCの実績はないと厳しい相手であり、空を飛ぶがゆえに逃がしやすく通常であれば誰も好んでは臨まないであろう依頼。

 しかしそれであるが故か、この依頼では戦力を集めるために必要ランクも落としてあるようだ。Dランクでも受け付けている。

 ふむ、今の俺の力なら単独でも恐らく勝てる。そして確かに美味そうな獲物でもある。リリティアめ、俺の好みがわかってきたじゃあないか。


「よし、じゃあ次はこの依頼にするか」


 俺達は椅子から腰を上げ、冒険者ギルドへ足を運ばせた。

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