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ショタ神の説明するのも面倒臭い  作者: ネオ・ブリザード
第一章 第六節 勇者『蓋又男』 (三人称)
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第二十三話

 第六節の更新は、結構感覚が空くかと思います。


 ある曇天の日の事だった。黒い手袋に、濃いサングラス、頭にはつばのひろい黒の帽子を被り、黒服に身を包んだ……まさに黒ずくめの高身長な男性が、上着のポケットに両手を入れながら、とある街の陸橋を登っていた。


 その男は、陸橋の一番上まで行くと、まるで街を一望する様に歩みを止める。



「正に……塵のような街ですねぇ……」



 彼はそう呟き、転落防止用の柵へ一歩踏み出すと、そのまま左腕を手すりの上にのせる。



 ……彼の名は『赭神(あかがみ)

 はるか昔、死後の世界において、ある女性を前世の記憶を残したまま転生させ、それが『閻魔規定』にふれるとして、神の世界を追放された……もと神様である。



 彼の目に映るのは、どこを見渡しても、娯楽施設や外食店、衣料品店が自己を主張するように建ち並び、まるでオセロのように(かど)を取り合う光景だった。


 道路という、人工的に広く、長くつくられた川の中では、乗用車という文明の利器が、人工的に作り出した波の流れに逆らう事なく進んでいく。



 そして、その文明の利器は今もなお、彼の背後で絶え間なく行き交い『風』を巻き起こしている。



 その『風』を背に受けながら彼は、手すりから離した左手を、そのまま黒帽子にそっと添え、口元をにやけさせる。




「では、行きますか……」




 彼はそう言うと、両手を上着の両ポケットに入れ、目的地へ向かって、陸橋を下り始めた……











 ……彼は、陸橋を下り終えると数歩ばかり直進し、車の行き交う十字路を素直に信号待ちする。



「流石はゆとりのない人間が作り出したルール、面倒臭い事ばかりですねぇ」



 青に替わった所で十字路を横断する赭神。縁石の歩道を更に直進する。その彼の左手には、ガソリンスタンドや、コンビニ、家電量販店が風景の一部のように流れていく。



 ……目的地は、その風景に溶け込むように建っていた。

 正に、風景家のように……



 その風景家は『ラーメン』という看板を掲げていた。見た目は黒を基調とした木造建築風だが、中身は、耐震構造を考えた今風の建築で、地元では、知る人ぞ知る有名店であった。




「……なるほど……ここですか……私に良く似合うお店ですね」




 自動ドアの前に立った赭神。小声でそう発すると、頭の黒帽子に右手を添え、人型だった身体を粒子状に変えて有名店に侵入する。






 店の中に入ると同時に、粒子状の姿を元の人型に変化させる赭神。と、それに合わせる様に来客のベルが店内に響き渡る。赭神の背後では、一歩遅れて自動ドアが開く。


 厨房の奥からは、ベルの音に気づいたひとりの、見た目ふくよかな女性従業員が、足早に赭神の前までやって来て、柔軟に接客対応をする。



「いらっしゃいませぇ♪ 一名様ですかぁ?」



 赭神は、手を添えた黒帽子を、視線を隠す様に深く被ると、女性従業員から顔を反らす様に少し俯むかせる。



「……お構い無く……」



 その顔は、真っ赤に染まっていた。

 女性従業員は、そんな赭神の様子を特に気に止める事もなく、店内に向けて滑らかに右手を広げる。



「承知しました。では、空いてる席にご自由にお座り下さい」



 そう案内すると、女性従業員は赭神に背を向け、厨房へ向かって歩き始めた。赭神は……そんなふくよかな女性従業員の背中を、赤い両目でじっと見つめる。


 まるで、獲物を刈る……野獣の様な目で……



 そうとは気づかずに、赭神に背を向け無防備に厨房に歩いて行く彼女。


 そんな赭神の目から彼女を救ったのは、この店のもう一人の、ぱっと見、スレンダーな女性従業員だった。



 スレンダーな女性従業員は、厨房の入口に戻って来たふくよかな女性従業員の左腕を掴むと、赭神の視界から消える様に、ふたり一緒に厨房の奥へと入って行く。



「ちょっと、あんた! 何やってんの!?」

「な……なにって」



 スレンダーな女性従業員に無理やり、厨房の奥につれ込まれたふくよかな女性従業員は、訳も解らず辺りを見渡す。



「私はただ……お客様が来たから、いつも通りに接客に行っただけだけど……」

「……お客……?」



 その言葉を聞いたスレンダーな女性従業員は、自動ドアの方に顔を向け、怪訝な顔をする。



「なに言ってるの!? お客様なんて誰も来ていないじゃない!? あなた、一体誰を接客していたの!?」

「え!? 自動ドアの前にいるじゃない!? ほら!?」



 予想外の言葉に、我が耳を疑うふくよかな女性従業員。自動ドアに向かって指を差しながら、思わず声をあげてしまう。



「だからいないってば!! 誰もいないわよ!!」

「でも、来客用のベルも鳴ったし、自動ドアも開いたじゃない!!」

「……い、言われてみれば確かに……」




 言い争いが続く厨房。その奥を見つめながら、赭神は癖のように黒帽子に手を添える。



「まあ……良いでしょう。目的は、彼女ではありませんからね……」



 赭神はそう言うと、黒帽子に添えていた右手を、左手と共に上着の両ポケットに入れる。そして、数歩先にある会計レジに向かって、真っ直ぐと歩き始める。



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― 新着の感想 ―
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