第十話
「うわああぁぁん!! 良かったよおぉ! 言ちゃん!! 死んだかと思ったあああぁぁぁぁ!!!!」
目を覚ました瞬間、馬乗りになった彼女が、俺の胸ぐらを泣きじゃくりながら揺さぶって来る。
「ちょっ……揺らさないで……ゆら……ゆ……吐きそ……」
あまりにも激しく身体を揺さぶって来るため、俺は口を抑えて胃から込み上げて来るものを必死に抑える。
「……ああ! ご、ごめんなさい!!」
それを見た彼女は、ようやく揺さぶるのを止め、俺をゆっくりと床に寝かせてくれた。
「ね、ねぇ……何かあったの? そんなに泣きじゃくって。俺、全然記憶が無いんだけど」
「だってだって! 言ちゃんってば、私がビンタしたら物凄く身体を捻りながら吹っ飛んで、そこの本棚に頭をぶつけて、死んだように倒れちゃうんだもん!!」
……え? そうだったの?
俺は、真相を確かめるべく、後頭部に手を当ててみる。
……うん、瘤ができてる。超痛い。
「私、ものすっごく心配したんだからあああぁぁぁぁ!!!!」
彼女は再び俺の胸ぐらを掴むと、激しく身体を前へ後ろへ揺さぶる。
「……ちょっ……だか……揺らさないで……中身が……おう……」
「……ご、ごめんなさい……!!」
咄嗟に揺さぶるのを止め、俺の事を慎重に床に寝せてくれる彼女。
うん、こういう所がとても可愛い♪
「少し寝れば大丈夫だから、もう泣き止みなよ……」
俺はそう言うと、彼女の目尻をそっと拭ってあげる。
「うん……うん……」
すると、彼女は落ち着いてきたのか、少しずつ呼吸が整ってくる。
「だからさ……」
「……なに?」
「早く退いてくれない? 重いから」




