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エピローグー3

 ほぼ同じ頃、漢城では金弘集宰相に対して、禹将軍が義和団鎮圧のために北京へと赴き、帰国するまでに感じたことをいろいろと話していた。


 朝鮮軍の近衛兵1個大隊は義和団鎮圧に際して、日本や列強に協力するために北京へと赴いた。

 北京議定書締結に伴い、近衛兵1個大隊は全員が朝鮮へ凱旋した。

 死者は0であり、負傷者も軽傷者ばかりだった。

 禹将軍はその近衛兵の司令官として北京へと赴いたのだが、全員無事に凱旋できたというのは嬉しい誤算だった。


「それにしても、日本の海兵隊は徳川将軍の親衛隊の末裔だとか。海軍所属の兵隊なので陸戦では弱そうに思われますが、将軍の親衛隊の末裔という噂が本当にしか思えない、とんでもなく強い部隊です」

 禹将軍は感想を述べた。


 金宰相は、微笑を浮かべながら言った。

「東学党農民軍があっという間に鎮圧されたのがよくわかりましたか」

「よくわかりました」

 禹将軍は金宰相に同意した。


「朝鮮軍をそれに匹敵するほど強くしてください。頼みましたよ」

「難しいことを言われます。今の朝鮮軍は、日本からのお下がりの旧式武器を装備している有様です」

「ですが、そうしないと朝鮮は独立を維持できません」

「そのとおりですな」

 禹将軍は、金宰相の発言に同意しつつ、難しい顔をした。


「今回の派兵で、清国からの賠償金は日本の借款の返済に全て充てられることになりました。今の朝鮮には借金が無い状態になったのです。そして、日本に防衛をほぼ依頼することで、軍事費を削れています。税金を富国につぎ込み、国力を強化していかないといけません。そうすれば、いずれは朝鮮も日本に見劣りしない近代国家になれるはずです」

「いずれはですか」


「少なくとも私は生きていないでしょう」

 金宰相は透徹した目をした。

「私も生きてはいないでしょうね」

「でも、自分たちの子どもや孫がそういった世の中に生きられるようにする。それが我々の義務です」

「遠すぎる話ですな」

「遠すぎる話ですが、それを目指して悪くは無いでしょう」

「全くですな」


「そうそう言い忘れていました」

 金宰相はしばらく沈黙した後で切り出した。

「日本軍が確保した馬蹄銀が数万両ほど足りなくなったそうです。心当たりはないですか」

「さて、分かりません」

 禹将軍は目をそらした。


「きちんと監察する必要がありそうですね。日本の海兵隊に頼みましょうか」

「すみません。部下に不心得者がいた可能性が」

 禹将軍は素直に認めることにした。

「きちんと監督してください。依願退職で済ませてもいいですが、処分は必要です。軍規を引き締めておかないと足元をすくわれます」

「分かりました」


「後、数年以内に日露間で戦争が起こる可能性大です。その際は我が朝鮮は日本に味方しますが、派兵はしない予定です。覚えておいてください」

 金宰相は言った。

「日本に味方して派兵しないのですか」

 禹将軍は疑問を覚えた。


「日本とロシアどちらが勝つかは分かりませんし、朝鮮軍は3万人ほどです。派兵は無理です。そうしたのは日本ですがね」

「言われてみればそうですな」

「後方支援に徹して、物資を売りさばいて儲けさせてもらいます。それで、我が国の近代化を図ります」

 金宰相は言った。


 禹将軍は思った。

 どこもかしこも自国の利益ばかり考える。

 これが現実か。

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