邂逅
「リリエル、砲撃展開!」
「アリエル、健司を守れ! お前の主のためにだ!」
キスティと悪魔が同時に叫び、魔力による射撃は、魔力の盾によって防がれた。
「アリエル!? まさか、裏切ったの!?」
「違います。私はマスターに、幸せになってほしいだけです。そしてそのためには、中島健司を殺してはいけません」
間髪入れずに悪魔が叫ぶ。混沌の渦を巻き起こす咆哮。
「悪魔王の名において命ずる! リリエル、エリエル、どうすれば主人がもっとも幸せになるかを考えろ! 俺達は悪魔だ! 人の願いを叶えるのが仕事だ! お前の主人の、本当の願いを叶えろ!」
堕天使二体の動きが止まる。
人のみならず、悪魔をも唆す弁舌。
「明けの明星、やはり中島健司に使役されていたのね」
「その通りだ。健司は俺の格に見合ったでかい望みを持っていてね。召喚に応じないわけにはいかないだろう。それよりも、何だお前は。自分の望みも定まっていないくせに悪魔を使役して、いったいどういうつもりなんだ?」
「悪魔使いにとって、悪魔は道具に過ぎません」
「ああそうかい。ちなみに、俺は健司の友達なんだぜ。どうだ、羨ましいか堕天使共」
「正直羨ましいであります」とリリエル。
「私はマスターが好きですが、頭が硬すぎるのが困りものです」とアリエル。
「昔はもっと可愛かったんですよ、この人」とエリエルは言った。
エリエルの言葉に、健司が素早く反応する。
「へえ、出来ればその話、是非とも聞かせてほしいね」
「貴方がた、一体何の話をしていますの! 今は殺し合いの場ですわよ!」
「そう思っているのは、君だけさ。僕は一種のお見合いみたいなものだと思っている。まずはお友達から始めましょう、なんてね」
「私と貴方は敵同士です。それ以外の関係ではありません」
「つれないな。パンティの色だって知ってる仲だというのに」
「ちなみにマスターは黒しか履きません。隠してるけど、きっと性根はドスケベです」
「え、マジで?」
「リリエル、余計なことを言わない! あと私はドスケベじゃない!」
顔を赤らめながら否定するキスティ。
戦場の空気は失われた。会話の場。まさに健司達が画策した状況そのものだった。
「僕は君と友達になりたいだけなんだ。どうしたらこの思いが伝わるのかな?」
健司の背後には、兄妹の霊が漂っていた。それ以外の浮遊霊や地縛霊も、たくさん。
健司が顕界させているわけではない。ただ、友達の背中を支えようとしているだけの、ひたむきな霊たちだった。
キスティは瞠目する。




