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わたくしお嬢様ですけれど鬼畜生徒会長に乙女の秘密をにぎにぎされて屈辱契約させられましたわ~!!  作者: 原雷火
二章 ~学食で同じメニューばっかりな生徒をサーチアンドデストロイですわ~
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小中先輩の謎、ごちそうさまでしたわ~!

「なんで俺はそんな当たり前の事に気付かなかったんだ! 最適化された調理工程通りに作っているという前提がおかしかったんだ」


 一人勝手に納得する青年に花音は置いてけぼりにされた気分になる。


「急にどういたしましたの? 先輩がおかしくなられてしまいましたわ!?」

「そうだ! おかしかったのは俺の方だ! でかしたぞ花音! 素人のお前のおかげだ!」

「し、素人って……し、ししし失礼でしてよ! 何について素人なのかはともかく、今のマウントは有罪ライン越えですわ!」


 小中はテーブルの上に前のめりになると、少女の手を両手で包むように握って上下に揺らした。


「いや感謝してるんだって! お前がファミレス馴れしてないおかげで謎が解けたんだよ」

「は、はいぃ?」


 大型犬のリードに振り回されるように花音はされるがままだった。




 週明けの月曜日――


 昼休みになると花音は小中と学食前で合流し、二人そろってミートドリアを注文した。


 できあがると給仕の宮本さんの元に受け取りに行く。


 小中がじっとおばさまの顔を見据えた。


「なあ宮本さん。あんた……ミートドリアにやってんな?」

「あらぁついにバレちゃったわねぇ」

「元商品開発部だからって、レシピに勝手に付け加えないでくれよ」


 大手外食産業の跡取りの小中にとって、料理はレシピ通りに作るものだった。


 自社のノウハウで運営されている学食で、よもやレシピを無視されるとは驚天動地だったのだ。

 外部の人間。ファミレス素人の花音の意見で、やっと青年は自身を縛る思考の枷から解き放たれた。


 悪戯っぽく宮本さんが目を細める。


「何をしたか二人にはわかるかしら?」


 花音と小中は互いに視線を合わせてから同時に答えた。


「「カレー粉ッ!!」」

「正解。味を崩さない程度に毎日分量を変えて入れてるのよ。スーパーで売ってる赤缶だけどね。これが結構奥深いのよ」


 青年が小さく息を吐く。


「なんでわざわざそんなことすんだよ?」


「家庭料理が毎日飽きずに食べられるのって、おばちゃんはブレだと思うのよね。大福ちゃんがミートドリア好きなのわかってたから、魔法をかけておいたの。この一ヶ月、大福ちゃんがいっつも食べてるもんだから、そんなに美味しいのかって気になった生徒さんたちがオーダー入れてくれてるのよね」


 全ての黒幕は小中を飽きさせないために、こっそり分量外の愛情を注いでいた宮本さんだった。


「それとも、もう止めといた方がいいかしら若様?」

「その呼び方はやめてくれって。いや、売り上げが伸びているようなら工夫は構わないけどさ」


 青年は恥ずかしそうに視線を背けつつ、本日のミートドリアを受け取った。




 今日はカウンター席しか空いていなかったため、二人横並びで座る。


「小中先輩は若様と呼ばれていますのね」

「や、やめろ! 恥ずかしいから!」

「よっ! 若様! ふふふっあはおほほほほ」

「テメェ……案外調子に乗るタイプなんだな」


 花音も家族と執事以外の異性を相手に、こんなに砕けた会話ができると思っていなかった。

 そっと視線をミートドリアに移す。


「まさかカレーが隠し味だったなんて……驚きですわね」


 宮本さん曰く「カレーが嫌いな高校生はいない」とのことだ。

 小中も頷いた。


「わかってみればなんてことはないが、カレー粉の分量は本当にあの人のセンスのたまものだな。入れすぎればカレードリアになっちまうし」

「先輩を思ってのことでしたのね」

「俺は別に……頼んじゃいねぇし……」

「素直じゃありませんわね。甘やかしたり優しくしてくれる人がそばにいるなら、甘えてもよろしくてよ?」


「なあ花音」


 青年がじっと少女の顔をのぞき込む。


「な、なんですの? そんなに見つめないでくださいまし」


「ありがとうな。やっと謎が解けてスッキリした。それと、ごっこなんて言って悪かった。お前は立派な探偵だよ」


「謎を解いたのは先輩ですし、わたくしはハズレの推理を並べてばかりでしたから」

「お前がきちんとしたものを食べてるのもわかった。鋭敏な味覚の持ち主だ。お前なら『食べ歩き同好会』の会員にふさわしい。会員にしてやるよ」


「はいぃ?」

「スマホを出せ」


 強引に迫られて花音はついSNSアプリで連絡先を交換してしまった。




 放課後――


 生徒会室を訪れた花音は小中大福に関する追加報告を終えた。


 執務机でノートPCを開いたまま、黒森が言う。


「どうやら小中大福の件は噂の根源とのつながりが無さそうだな」

「そもそも根源なんてものがあるのかしら?」

「わからないから君を調査員にしたのだよ金持花音君」

「はぁ……ともあれ黒森生徒会長様も是非、学食をご利用の際にはミートドリアを食べてみてくださいませ」

「留意しておこう」


 小中はずっと抱いていた謎が解けたため、今後、彼がミートドリアをヘビーローテーションすることもなくなりそうだ。


 自然と噂も消滅するだろう。と、黒森は締めくくった。


 ちなみに花音はというと、月水金はお弁当。火木は学食を利用することにした。


 放課後か土曜日の午後は、スケジュールが合えば小中の「食べ歩き同好会」に参加するという感じである。


 帰宅部エースの称号は返上することになりそうだ。




 その日の夕飯はミートドリアだった。


「お嬢様? 食が進まないようですが、いかがいたしましたか?」


 ここ数日、花音がミートドリア漬けだった事を、執事は把握していないようだ。


「べ、別にちゃんと美味しくてよ。だけど、向こう三ヶ月はミートドリアを献立から追放なさい」

「仰せのままに」

 執事はいつものごとく恭しく礼をするのだった。

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