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わたくしお嬢様ですけれど鬼畜生徒会長に乙女の秘密をにぎにぎされて屈辱契約させられましたわ~!!  作者: 原雷火
二章 ~学食で同じメニューばっかりな生徒をサーチアンドデストロイですわ~
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リア充(?)が出ましたわ~! どなたか丸太をもってきてくださいまし~!

 席は八割が埋まってなお混雑が加速しつつある。


 青年にされるがまま券売機前に強制連行だ。アプリで注文する生徒が多いのか、混みようのわりに7~8人待ちといったところだった。


 花音がうつむき気味に手元を見つめる。


「あ、あの……手を……こ、困りますわ」


 異性と手をつないだことなど小学校低学年ぶりではなかろうか。


「ん? ああ、悪いな。腹を減らしているヤツは放っておけなくてよ」


 アンパン的なマンかな? と、花音は思った。


 つないだ手をほどいて小中はこぼす。


「お前が飯迷子になった責任の一端は俺にもあるんだし……」

「はいぃ?」

「なんでもねぇよ。忘れてくれ。それより食べたい料理とかないのか? 並んでいる時からすでにランチタイムは始まってるんだぜ?」


 シンプルに変な人だと少女は思った。

 一方、金持の名字にも動じない小中である。


 普通に会話をしてくれて……というか、ここまで距離感が近いことに少女は驚きを隠せない。家族(と、執事)以外で、距離が近すぎる。


 男性恐怖症ということはない。とはいえ、鋼が執事として仕えるまで金持家では、花音は異性と言葉を交わすことは希だった。


 先日の黒森といい、突然世界が変わってしまったと少女は思う。


 小中を男性と意識した途端に動悸が早まる。相手に握られた自分の手が汗ばんでいなかったか心配になる。


 こんな調子では社会に出てから初対面の異性と会話する度に不整脈一直線だ。


「どうした? 何系の気分かくらいはあるだろ?」

「系? 強化系とか変化系かしら?」


 自分はさしずめ妄想具現化系と思っている節があるお嬢様である。小中は怪訝そうだ。


「なんだよそりゃ。食い物の話だっつーの」


 食べ物で系となると――


 家系ラーメンが脳裏に浮かんだが少女は口を閉じた。ニンニクのライブ感など言おうものならお嬢様の尊厳が破壊されかねない。


 ちなみにネット動画でみたことがあるだけで、花音自身はまだ家系ラーメンを食べたことはなかった。

 いつか食べたいと願うばかりである。


 小中がいぶかしげに少女の顔をのぞき込む。


「系っていうかまあその、和洋中エスニックとかだよ。各ジャンルの一押しを教えてやるから。あとアレルギーがあるなら言ってくれ」

「え、ええとでしたら……カレーうどん……系かしら?」


 昨晩執事がオススメしてきたメニューだ。これなら下手なことにはなるまい。と、花音は安全牌を切ったつもりでいた。


 小中の眉尻がピクリと上がる。


「初めて学食を利用する生徒がカレーうどんだと?」

「ご、ごめんなさい。何か作法的に失礼しやがりましたか?」


 心の乱れはお嬢様口調の乱れ。言ってから少女は呼吸を整える。


 一方、青年はというと――

 感心したようにうなずいた。


「いや、逆だ。お前、良いセンスをしているな」


 指拳銃をパンと弾くようにして小中は笑った。


 人の顔を指さすのは失礼だ。と、思いつつも、よくわからないが褒められた。花音はただただ困惑する。


「ところで小中様は……」

「大福でいい。めでたくて美味そうな名前だろ? しかも小中大ってつながってるんだ。つーかため口で頼む。カタッ苦しいのは苦手なんだ」


 珍名さんが多い学園なのか、類は友を呼ぶのか。金持の名字が苦手な花音とは対照的に、小中は自分の名前が好きらしい。


「お前はええと……なんだっけ?」

「金持花音ですわ。お前というのは止めてくださいまし」

「そうか。じゃあ花音な」


 距離感の詰め方が急すぎて少女は目を回しそうになる。もしや彼こそが世に言うリア充なのだろうか。


 どちらかと言えば陰の者な花音にとって、陽キャは反物質だ。これ以上の接近接触には対消滅ボイドアウトの恐れがあった。


 券売機前の列が縮まり順番がやってくると、手本とばかりに小中が先に注文する。


「スマホアプリより券売機のインターフェイスの方がわかりやすいんだ。タッチパネルの画面が大きいからな。レイアウトにも余裕がある」


 小中は和食ジャンルから麺料理のうどんを選択。一覧からカレーうどんを注文するとスマホのPAYアプリを券売機のリーダーに読み取らせた。


 軽やかな電子音とともに決済が完了し食券が排出される。

 小中がじっと券売機を見つめた。


「まったく。まただ……」

「どうかなさいましたの? 機械の故障のようには見えませんけれど」


 青年は券売機の隅っこを指さした。

 QRコードの印字されたシールが貼ってある。小中はそれをペリリとひっぺがした。


「勝手にはがすのはよろしくないのではありませんこと?」

「こいつはいいんだよ。誰かの悪戯だ」

「悪戯ですって?」

「俺も最初は隠しメニューかと思ったんだけどな。説明は後だ。券売機の使い方はわかっただろ? 後ろがつかえてるぞ」

「え、ええ。そうですわね。同じように操作すれば同じ結果になりましてよ! つまりここをこうしてえいえいえいっと!」


 画面のタッチパネルをリズミカルに押していく。

 親ガモについていく子ガモよろしく、花音も倣ってカレーうどんの注文を完了した。

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