67:新たな路線を見つけた王女
「そうそう、他にもお聞きしたいことがありますのよ。ドレスの件ですが、フリルを増やすのは良くないのかしら?」
話を続けるアンジェラは、出会った当初に着ていたような可愛らしいドレスに未練がありそうだ。
「あくまで、私個人の意見ですが。以前のような、大ボリュームのフリルは、ちょっと……ですが、今のドレスのように、裾の方へ流れる上品なフリルはお似合いですよ」
「可愛いすぎるものは、似合わないのね」
「個人の好みですので、自分が目指したい格好を貫くのも良いかと」
「いいえ、結構よ! ブリトニー、ここに衣装を持って来ますから、ドレスを一着選んでくださる?」
「えっ……?」
私が返事をする前に扉が開き、黒子のメイドが、ハンガーラックにかかった大量のドレスを運び入れた。
「こ、これは……!?」
「全国にある様々な店に依頼して作らせた、私のドレスですわ!」
アンジェラが話す間にも衣装が次々に運び込まれ、広い部屋の中でドレスがひしめき合う。
(アンジェラー! 税金を無駄使いしすぎ!)
一体いくらになるのだろうか、貧乏伯爵家の令嬢には考えも及ばない。
「さあ、この中から、次の夜会で着る服を選びなさい」
「夜会、ですか?」
「ええ、そうです。私は、もうすぐ十六になりますから、今後は夜会にも積極的に参加しなければなりませんわ。ですので、あなたに見立てをお願いしたいの」
「大役ですね、荷が重いです」
私は、色とりどりのドレスを見渡した。
「王女殿下のお好きな色は?」
「ピンクですわ!」
「……そうですか」
幸い、ピンク系のドレスは多かった。
迷った末に、その中から、少し淡めでくすんだ色の大人っぽいデザインを選ぶ。
フリルは裾と袖のみという、上品で体の線に沿ったドレスだ。
「私は選ばない色ですわね」
言っては悪いが、アンジェラは地味顔な上に、年齢よりも大人びて見える。
(清楚で上品な、大人っぽいものが似合うんだよね。本人の好みとは真逆みたいだけれど)
というわけで、私は選んだ一着を彼女に差し出す。
それと同時に、黒子メイドたちが怒涛の勢いでハンガーラックを撤去し始め、代わりに今度は大量の小物を運び入れた。
(この中から、ドレスに合うものを選べということ?)
私は同系統の色の花の髪飾りと、黒のリボンやレース、ブローチを選んでいく。
(おお、予想外にミステリアスで上品セクシーな感じになってしまった……でも、これはこれで似合う)
用意した衣装に袖を通して小物を身につけ、鏡を見たアンジェラは目を瞬かせている。
「どうでしょう?」
「新鮮ですわ! 次の夜会はこれで参加してみましょう!」
アンジェラは大変満足した様子で、私はやっと部屋から解放された。
ようやく王女の部屋から出され、安堵のため息を吐く。
しかし、そんな私に声をかける者がいた。
「ブリトニー、大丈夫か? 無事だったか? 妹の部屋に入ったきり、いつまで経っても出て来なかったから心配したぞ」
「……!? マーロウ殿下、どうしてここに!?」
なんと、アンジェラの部屋の前に立っていたのは彼女の兄だった。












