表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生先が少女漫画の白豚令嬢だった  作者: 桜あげは 
14歳

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/259

55:リズム感ゼロ令嬢とピュア少年

 しばらくすると、パーティー開始の挨拶が始まった。

 現れたのは、眼鏡をかけた厳格そうな老人だ。リカルド曰く、彼がこの学園の学園長らしい。

 いかにも堅苦しい雰囲気のスピーチで、結構長い……

 しかも、彼の後にも国関係のお偉いさんの話やら、何かで成果を上げた教授の話やらが延々と続き、生徒達も退屈を隠しきれない様子である。


(どこの世界でも、長話は苦痛だよね)


 話す方も、苦労して色々考えてきているのはわかるのだが、正直言って結構辛い。

 筋トレでも始めたいくらいだが、他人の目があるので自重する。

 かなりの時間が経過した後、ようやく生徒達は解放され、パーティーが始まった。


 音楽が流れ、ダンスも開始されている。

 楽団の中には、芸術に優れている生徒もちらほらと混じっていた。

 中身はだいぶ違うが、日本でいう、学園祭のようなものなのかもしれない。


「ブリトニー、とりあえず一曲踊ってみるか?」

「う、うん……頑張る!」


 ダンス教師以外と踊るのは、貴重な機会だ。

 私は、気合を入れて頷いた。


(絶対に、リカルドの足を骨折させるわけにはいかない!)


 自分で言い出したことなのに、恥ずかしいのだろうか……リカルドが、控えめに片手をこちらへ差し出す。

 もちろん、私は彼の手を取った。

 リカルドの手は、私の手よりも少し暖かい。

 ダンスの輪の中に混じり、教師に言われたことを必死に思い出して手足を動かす。

 かかっている曲は三拍子、比較的踊りやすい曲である。


「大丈夫か、ブリトニー? 表情が硬いぞ?」

「へ、平気、だから」


 太っている頃に比べれば、格段に動きやすくなっている。

 リカルドは本当にダンスが上手いようで、彼の動きに合わせれば、なんとかそれらしい動きをすることができていた。


「……なるほど、お前がダンスを苦手だという理由がわかってきたな」


 しばらく踊っていると、不意にリカルドが口を開く。


「え、理由って?」


 ステップを間違えないよう、全神経を足に集中させた私は、彼に続きを促す。


「お前は、リズム感がゼロなんだ……!」

「な、なんと! 薄々そう思っていたけど、やっぱりそっちなんだね!」


 非常に説得力のある答えが返ってきて、私は納得した。

 そう、私には芸術関連の才能が欠如しているのだ。

 特に、詩と音楽関連はひどい。


 前世でもあまり得意ではなかったが、今世ではさらに下手さが悪化しているような気さえする。

 リカルドの言うとおり、ブリトニーのリズム感は、少しの努力ではどうにもならない壊滅的なものだった。


「うう、やっぱり、そうなんだ……」

「だが、動体視力は悪くなさそうだな。今も、俺の動きを見て、咄嗟に合わせているのだろう? 大したものだと思う」

「え、そうなの? 山育ちだし、もともと目は良い方だけど……って、あれ?」


 頭をよぎったのは、祖父たちとのブートキャンプだった。

 あの過酷なトレーニングで、関係のない部分まで鍛え上げられた気がする。


「ブリトニー、もう少し俺にくっつけ。その方が、リードしやすい」

「ええっ! これ以上くっつくの?」


 普段ダンス教師と踊っている時以上に接近するよう言われ、私は思わず声を上げてしまった。


「……そんな反応されると、こっちまで恥ずかしくなるだろうが!」

「だってさ、こうすると、抱きしめ合っているみたいな感じだし……ほらね?」


 説得力を増すため、私は指定された距離に近づいて、彼の方へと手を伸ばしてみる。


「お前、わざとか? わざとなのか?」

「何が?」

「いや、いい……一瞬真剣に悩んだ自分が馬鹿らしくなってきた」


 話を打ち切ったリカルドは、ぐいと私を抱き寄せてダンスを再開した。


(……もしかして、本気で照れていた?)


 耳が真っ赤だが、あまり茶化したら可哀想な気がしたので黙っておく。

 リカルドは、ピュアでシャイな良い少年だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ