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転生先が少女漫画の白豚令嬢だった  作者: 桜あげは 
12歳

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30/259

29:白豚と王都のパーティー

 パーティー当日の昼になった。

 城の中庭で開催されたそれは、小規模という割にやたらと豪勢である。まだ若い参加者が多いため、開催される時刻は夜ではなく昼に設定されていた。

 見たことのない若い男性陣が、仲間同士で談笑している。中庭の端では、令嬢たちがそんな彼らを熱心に観察していた。

 リュゼはといえば、予想どおり大勢の令嬢に囲まれている。その中に普通に紛れ込むリリーはすごい。後方では、ノーラもリュゼを追いかけていた。そんな彼女のドレスは、ヒラヒラフリフリの薄ピンクだ。


(ノーラ! なぜ、そのデザインにした?)


 子供っぽい可愛さを強調するデザインは、スタイル抜群で格好良い彼女の良さが全く出せていないし、身長の高さも相まってアンバランスさが悪目立ちしている。

 来るときに着ていたドレスは似合っていたのに残念だ。彼女自身も、周囲の視線が気になるようで、初めて会った時のようなおどおどした態度が出てしまっている。

 唯一の身内であるリュゼの近くに待機しつつ、友人達を観察していると、不意に体に何かがぶつかった。


「うわっ……?」


 なんとか足を踏ん張って、転倒を免れる。見ると、一人の貴族の少年がこちらを睨みつけていた。リカルドよりも少し年上のようだが、リュゼよりは年下に見える。


「通行の邪魔だ、デブ! そんなに醜く太った体で、よくも王太子殿下主催のパーティーに顔を出せたものだ」


 自分からぶつかってきたくせに、彼は謝ることもせずに私に絡んできた。最悪だ。

 こちらは、その王太子殿下から直々に参加して欲しいと頼まれたから出席しているというのに。


「だいたい、なんでお前みたいのがここに参加しているんだ? ここは未来の婚約者候補を探す場でもあるというのに……まさかお前、そんな太い図体で誰かに婚約を申し込まれることを期待しているのか?」


 なんだとー! 私が参加しようがしまいが、太っていようがいまいが、お前には関係ないだろう!

 だいたい、公の場で年下の女の子をいじめるなんて最低なやつだ。


 私は前世の年齢を棚に上げ、目の前の憎き男に視線を合わせた。黙って言われっぱなしになんてなってやるものか。

 言い返してやろうと口を開いたのだが、私が言葉を発するよりも早く動く影があった。


「騒がしいな……こんな場所で、何を怒鳴っている?」


 私をかばうように男の前に立ちふさがったのは、なんと元婚約者のリカルドだ。

 相手の青年が誰なのかはわからないが、アスタール伯爵家はお金持ちで発言力も強い名門貴族で、王都での影響力も強い。よって、リカルドに真っ向から喧嘩を売れる貴族は少ないはずだ。

 貧乏で破産の危機を回避したばかりのハークス伯爵家とは違うのである……同じ伯爵家なのに。


「ああ、アスタール伯爵家のご子息か……この白豚女が道を塞いで迷惑していたんだ」


 私とリカルドが知り合いだとわからないのだろう。男は自分の主張が正当であると言わんばかりに、自信満々な様子で私を指差した。周囲の若い貴族たちも、クスクスと忍び笑いを漏らしている。

 世間は、デブに冷たい……

 しかし、次にリカルドが発したのは、意外な言葉だった。


「道を塞ぐ? おかしいな、わざわざ彼女の横を通らなくても、通り道ならいくらでもあるだろう」


 確かに、私は通路に立っていたわけではない。狭い通り道があるのは、出入り口と食べ物が並ぶテーブル付近だが、私が立っている場所は広場の中央だし、わざわざ隣を横切らなくても普通に歩ける。


「だが、場違いだとは思わないか? こんな醜い女が、王太子殿下のパーティーにいるなんて」

「場違いな行動を取っているのは、そちらだろう。彼女は王太子殿下の招待客だというのに……マーロウ殿下の行動を批判する気なのか?」

「そういうわけでは……!」


 リカルドの方が、やや優勢に見える。


「なら、くだらない言いがかりはつけないことだ。自分が恥をかくことになるぞ」


 捨て台詞を吐く男が足早に立ち去る前に、リカルドが私の手を掴んでその場を後にした。

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― 新着の感想 ―
リカルド、イケメンだ!!
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