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転生先が少女漫画の白豚令嬢だった  作者: 桜あげは 
18歳

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252/259

252:白豚令嬢の帰還

 東の国の現場はと言うと、リカルドとグレイソン殿下のおかげで、主要な用事はほぼ終わっていた。

 私もやれる仕事はやったので、もうそろそろ帰れる。

 アクセルの件は、リカルドがきっちりグレイソンに伝えてくれた。

 私は西の国の王子から謝罪を受け、アクセルにはグレイソンが中央の国へ戻り次第、処分が下されることが決まる。

 グレイソンが、「私のヴァンベルガー領に対しての配慮が欠けていた部分もある。ブリトニー嬢には申し訳ないことをした」と申し訳なさそうに話していた。


 こちらもただで転んだわけではない。

 苦情はリカルドがしっかり申し立ててくれたので、騒ぐ必要もないだろう。

 東の国の人々に回復の兆しが見えたため、医師たちを残し、私たちは先に帰還する予定になっていた。


「リカルド、中央の国へ戻ったら、お母様のところへ寄ってもいい?」

「もちろんだ」


 母に情があるわけではないけれど、公爵が病気だとを知っていて見殺しにするのは後味が悪い。助けられるなら、助けてあげたい。


「公爵に渡す薬を用意しよう」


 リカルドにも私の意図は伝わっているようだ。

 東の国の人々に感謝されつつ、私とリカルドは数日後に中央の国へ発った。

 拡張された川は元の位置で防がれ、これ以上の工事は行われないことになった。

 水田も徐々に畑へ戻していく予定らしい。帰ったら、防水長靴の開発でもしようと思う。


 ※


 何度目かの公爵邸を訪れると、母は相変わらずの偉そうな態度で私たちを出迎えた。


「事前に手紙を送りましたが、改めて……アクセル様との結婚のお話は完全になくなりました」


 母は、内心を読ませない無表情で答える。


「ええ、そのようね」

「そして、手紙に書きましたが、公爵様にこちらを……」


 私は用意していた薬を母に渡す。すると、初めて母の瞳が揺らいだ。

 おそらくだが、母は公爵を心の底から大切に想っている。


「まあ、これが」

「あなたの求めていた薬です。進行度合いにもよりますが、東の国の人々の症状はこの薬で緩和されました」


 本来なら、東の国の人々に合う薬が見つかるまで、もっとかかる可能性も高かった。

 だが、運良く早い段階で症状を治す薬が発見されたのだ。

 母は急ぎ傍にいたメイドに指示を出す。


「これをあの人に飲ませてちょうだい」

「かしこまりました、奥様」


 メイドは薬を持って部屋の外に出て行った。


「ブリトニー……」


 母が何か言いたげにこちらを目を向ける。


「あなた、見るたびに細くなっていない?」

「……」


 余計なお世話である。

 最初に会ったとき、散々こちらを貶めていた件は忘れない。

 実の母だが、私には彼女と親子だという認識は薄かった。話せば話すほど……合わない。

 だがここで、なぜかリカルドが口を挟んだ。


「公爵夫人、まだブリトニーに言い足りないことがあるのではないですか?」


 私はびっくりして彼を見つめる。リカルドは何を話しているのだろう。


(言い足りないって、さらに私への文句を公爵夫人に言わせるつもり?)


 リカルドは私を傷つけるような人ではない。だから彼の意図がわからず、私は困惑する。


「俺たちはアスタール領へ戻る予定です。このままだと後悔なさいませんか?」

「えっ……」


 意図が読めない私とは異なり、母はリカルドの言葉を正確に理解した様子だ。

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