245:他力本願と断れないお誘い
グレイソンから託されたノートを翻訳していると、いくつか薬に関連する資料が出てきた。漢方薬やハーブなど自然の材料を用いた薬ばかりだ。
この世界では現代のような化学製品の薬はないので妥当だと思う。
わかりやすく書かれているので、医療方面の知識がない私にも理解できる内容だった。
とりあえず、翻訳し終えたものを片っ端からグレイソンに送る。
(ふむふむ、滋養強壮薬、喘息の薬、虫下し……)
もちろん翻訳したものは、自領用に書き写させてもらってもいる。そちらに関してはリカルドが集めてくれた書き写し班の人たちが頑張っている。
平行して、リカルドは領内の医者に情報提供をしたり、薬の材料集めの指示も出したりした。
ちなみにこの国で医者になるには、医者に弟子入りして修行を積まなければならない。
私は他にも仕事があるので弟子入りはできないのだ。
お祭りの準備やら、ドレスの採寸やらも控えているしね!
(他の優秀な領民に頑張ってもらおう)
レニと全く同じことをやれる医者はいないかもしれない。
でも、メモが残っているのなら、それを学んで代わりの人材を育てればいい。
さくさくと翻訳しつつ、医療に関して領民に丸投げした。きっと、リカルドがなんとかしてくれるはず。ぐふふ……
そんなこんなで、思ったよりも早くレニのノートを読み解くことができた。
薬や治療法に関するあれこれは、領内から集めた医者たちが色々やっている。
治験に協力してくれた患者に薬を処方したところ、たしかに効果があるみたいだった。
そんな中、グレイソンから新たに手紙で連絡が来た。なんと東の国に調査隊を送ることになったらしい。
(そっかそっか、わざわざこちらに連絡しなくていいから、自由に動いてください)
母とのことがあるとは言え、なるべく東の国には関わりたくないし、グレイソンがあっさり解決してくれたら、それでラッキーである。
しかし、続きを読んだ私はパサリと手紙を落とす。
そこには大きな文字で同行のお誘い文が書かれていた。
(王子からのお誘いとか、断れないじゃないのー!)












