230:白豚狩りから逃げ回る令嬢
2020.09.10 文章修正(ご指摘ありがとうございます)
「嫌なら逃げればいい。逃がさないけどな」
今日のリカルドは、ずいぶん積極的だ。
「違っ……! ぶひゃあ!」
慌てる私を見ながら、リカルドは感慨深そうに呟く。
「獲物を追い詰めるのは、わりと好きかもしれない」
「趣味を変えるべきだと思います! ノー! 白豚狩り!」
部屋の中で、私とリカルドの全力追いごっこが始まってしまった。
「ゼェ、ハァ!」
これも、ダイエットの一環なのか!? 何気にハードだ!
結構いい線までいったのだけれど、結局私はリカルドに捕獲されてしまった。
「こ、これもいい運動に、なったかも……」
荒い息を吐きながらリカルドに伝えると、彼は満足げに笑う。
「そうそう、気負う必要はない。目標は小さい方がいいんだ。それを積み重ねる」
「ドレスのサイズ測定までに、間に合うかな……」
「今のブリトニーならできる。問題ない」
リカルドにそう言ってもらえると、根拠のない自信が湧いてきた。
よし、頑張りすぎない程度に頑張ろう。
私の場合は、もう少し痩せてからドレスを着たいと思うから。
ダイエットが上手くいけば、私は今の自分に自信を持てる気がする。
自分自身を卑下するのを止めて、自分を好きでいられるようになるかもしれない。
そんな希望が見えた。
※
そうこうしているうちに、ドレスの採寸まであと二ヶ月になった。
私は徐々に痩せてきているけれど、まだまだ目標体重には届かない。
僅かな焦りがある。
この日の私はリカルドと一緒に真珠の商品の確認に向かう。
普段はリカルドの部下や業者に任せているけれど、細かな部分で齟齬があってはいけないので、定期的に情報のすり合わせを行う。
港町へ到着すると、代表の男性が揉み手をしながら待っていた。
彼らにとっても良い話だものね。
「これはこれは、お待ち申しあげておりました。ブリトニー様は、今日もお美しいですな」
だから、そんなお世辞はいらぬ。
(わざわざ、私の外見の話を持ち出すな、スルーしろ)
そう思ってはいるが、苦笑いを浮かべることしかできない。
一緒に仕事をする相手なので、余計な波風を立てたくはないのだ。
けれど、リカルドが……
「そうだろう。ブリトニーは世界一綺麗なんだ」
などと、サラッとすごいことを口にした!
「リカルド、盛りすぎだよ」
「事実だが?」
平然と返すリカルドを前に私は羞恥のあまり魂を飛ばし、そのまま彼に現場まで手を引かれていった。
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今後とも白豚令嬢をどうぞよろしくお願いします。
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