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転生先が少女漫画の白豚令嬢だった  作者: 桜あげは 
18歳

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228/259

228:体型が目印になっている疑惑

 色々話し合って一月後、私はアスタール伯爵領の港町へ来ていた。

 リカルドと一緒に、真珠の打ち合わせに参加するためだ。

 季節は夏真っ盛りで暑い……

 以前より少し痩せたけれど、まだまだ私の体型はぽっちゃり気味だ。


「フウッ、フウッ!」

「大丈夫か、ブリトニー。俺が抱き上げていこうか?」

「平気だよ……歩くっ!」


 港町の人々は、リカルドの来訪を歓迎している。

 そんな中、彼が私なんかを抱き上げて移動したら……駄目だ。

 皆の夢をぶち壊してしまう。

 リカルドは気にしないと言ってくれたけれど、私は気になる。

 好きなもののために生きる、エレフィスのようには割り切れない。

 

(……私って、やっぱり中途半端)

 

 こんなだから、何度もリバウンドしてしまう。

 モヤモヤしてきて、小腹も空いているのは悪い兆候。

 平常心を保って、暴食を避けるべし。無理ならリカルドに相談だ。

 

 賑やかな港町から少し離れた、落ち着いた雰囲気の街が今回の目的地。

 真珠を扱う人たちの集まる場所。

 この日は、その代表と話をする予定だった。

 

 けれど、建物の入り口で揉めている男女を発見する。

 責任者風の中年男性と年若い女性だった。女性が男性に向けて、必死に何かを訴えている。

 

「お願いです、どうか……我々と取り引きを!」

「だから、こっちはそれどころじゃないんだ。これから、大事な方をお迎えしなければならない。今日は帰ってくれ」


 二人のやり取りが聞こえ、私とリカルドは足を止める。

 そのタイミングで、男性がこちらに気づいた。


「こ、これは! リカルド・アスタール様!! ようこそ、おいでくださいました! ブリトニー様も、お美しく……」

 

 見え透いたお世辞は要らぬ。

 なんで、女性相手だと、誰も彼もが容姿を話題に出すのだろう。

 とりあえず「美しい」って褒めておきゃいいという考えは捨てようよ。そうではない人間にとって地獄だから。

 責任者のゴマすりはスルーして、今の状況を尋ねる。

 

「何か、トラブルでもありましたか?」

 

 聞けば、女性が真珠を格安で分けて欲しいと話をしに来たのだそう。

 形の悪く、小さな品を大量に仕入れたいと。

 

「まったく、そんなものを何に使うのだか」


 私は、女性の話にピンときた。


「もしかして、薬として用いるのですか?」


 女性は瞬きしながら私を見た。


「そう、です。主から、依頼されて……」


 彼女の服装は、異国のもの。しかも、西の国風。

 グレイソン王子や、アクセルがらみではないだろうか。

 あの国には漢方の概念がある。

 真珠は解熱、鎮痛、鎮静、滋養強壮などの効果を持つと言われていた……前世で。

 気になったので、私は彼女に尋ねてみた。

 

「西の国では、真珠を扱っていないのですか?」

 

 女性は、はじかれたように私を見る。

 私の体型を、上から下までじっくり観察するように……


「ブリトニー様って……もしや、ブリトニー・ハークス伯爵令嬢でいらっしゃいますか?」


 体型で判断するんだ?

 

「ええ、はい」

「なんたる偶然! お願いします、どうか、真珠を分けていただけませんか? 私がお仕えしているのは、アクセル様なのです!」

 

 王子ではなくて、そちらの方だったか。


「ええと、国に持ち帰られるのですか?」

「そうです。我が国では真珠の養殖技術が確立しておりません。薬としては、なかなか手に入らないのです」

「で、取り引きというのは一時的なものですか?」

「いいえ、できれば定期的に。……何度も足を運びお願いしているのですが、承諾していただけず」

 

 女性は途方に暮れていたらしい。

 とはいえ、一方的に取り引きを持ちかけられても、こちらの責任者も困るだろう。

 その男性は、私の前にずいと体を割り込ませて言った。


「我々は、こちらの方々との取り引きを優先している。あなたとは取り引きできない!」

 

 さっさと建物の中に入ろうとする男性。

 私は少し考えて、女性に話しかけた。


「もしかすると、真珠を融通できるかもしれません。私たちが必要なのは、品質が売り物になるレベルのものなので。商品にならない品は、使用しませんから」

「そ、それでは……」

「とりあえず、話してはみます。進展があれば、連絡しますね」

「では、王都のアクセル様の屋敷に……」

「わかりました。手紙をお送りします」

 

 とりあえず、女性は納得して帰ってくれた。



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