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転生先が少女漫画の白豚令嬢だった  作者: 桜あげは 
18歳

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226/259

226:白豚令嬢、タッグを組む

 数日滞在したあと、アンジェラは「また来ますわね!」という言葉を残し、帰っていった。

 彼女もなかなか忙しい身だ。

 公爵夫人の見送りを済ませ、リカルドと一緒に屋敷へ戻る。

 

「私も頑張らないと……こってりスープが飲みたい、ぐふふ」

「おい、ダイエットはどうした?」

「やっぱり、我慢する」

 

 処刑という最大の危機を回避してしまったので、やはり身が入らないようだ。


(だめだめ! 最近の私は、たるんでいる!! 本気で気をつけなきゃ!)

 

 自分を戒めるように、その場でスクワットを始める私に向かって、リカルドが告げた。


「一人では辛いだろう。俺にできることがあれば、協力しよう」

「リカルド……」

「夫婦になるんだ。ブリトニーは、なんでも自分で抱えて解決してしまうが、俺くらいには甘えて欲しい」

 

 本当に彼は優しい。


「そ、それなら、お言葉に甘えて……もし、私が食べ物の誘惑に負けそうになったら、今みたいに止めて欲しいの」

「任せてくれ。きちんと止めてやるから、安心しろ」


 応えてくれるリカルドの言葉が心強い。

 

「あと、剣術の稽古に付き合って欲しいかな」

「もちろんだ」

「ありがとう。リカルドも私に……あ、甘えていいからね!」

 

 ちょっと恥ずかしいけれど、勇気を出して彼に伝える。一方的に甘えっぱなしでいる気はない。

 私だって、リカルドの力になりたいのだ。

 ほてった顔に手を当てながら、私はアワアワと恥ずかしがった。

 そんな様子を見て、リカルドがふんわり微笑む。

 

「ああ、わかった。では、さっそくだが……」

「え、もう?」

「部屋まで手を繋いでいこう」

 

 するりとリカルドの手が伸び、私の手を捕まえ、器用に指を絡める。恋人繋ぎだ。

 以前も手を繋いだことはあったけれど、なぜか今日は、めちゃくちゃドキドキする。

 

「可愛いな。ブリトニー、真っ赤だ」

 

 酔っ払ったときのように、可愛いを連呼するリカルド。しらふなのに。

 彼は、すっかり私に甘くなってしまった。

 恋愛偏差値の差は、広がる一方の気がする。


(精神年齢、私の方が高いはずなんだけど)

 

 近頃のリカルドは、とても頼もしい。もう立派な「伯爵さま」だ。

 素敵な彼の隣にいるのが、自分のような意志の弱い肥満令嬢でいいわけがない。

 

「ブリトニーのために、太らない食事も用意してやる。ハークス伯爵領で出していたような内容に変えればいいんだろ?」

「うん……」

「あと、夜食は禁止しておく。どうしても欲しいなら、朝にしろ」

 

 いつの間にか、ダイエットに詳しくなっているリカルド。

 彼の完全バックアップは、かなりありがたいものだった。

 

「ここへ来てからは俺が忙しかったから、ブリトニーと一緒にいる時間が少ないな」

「そんなことないよ。いつも、仕事の合間に会いに来てくれるし」

「今日は仕事に余裕ができたから、部屋で一緒に過ごそう」

 

 十八歳の私よりも一つ年上のリカルド。

 すっかりイケメン青年になった彼に、私は翻弄されっぱなしである。

 最近のリカルドは穏やかで落ち着いている。様々な試練が、彼を成長させたのだろう。

 ……変な方向にも。

 

 部屋に戻った私は、長椅子に座るリカルドの膝の上に乗り、彼と向き合っていた。


(どうして、こうなった?)

 

 優雅に腰掛ける彼の強靱な膝は、私の体重などものともしない。


「リカルド、恥ずかしいんだけど」

「ブリトニーは、すぐに照れるな。俺たちはもう夫婦なんだ、そろそろ慣れてもらわないと」

「そう言われましても」

 

 白豚モードの私に対しても、変わらず慈愛の目を向け、愛の言葉を囁くリカルド。

 彼は、本当に、私が太っていても大事にしてくれるのだ。

 そんなリカルドのことは大好きだけれど、それはそれ、これはこれ。

 恥ずかしいものは恥ずかしい。

 

「顔が真っ赤だ」

 

 言いつつ、リカルドは顔を近づけてくる。切れ長の緑色の瞳がきれいだ。

 さらさらと流れるオレンジ色の髪が私の頬に触れ、唇を奪われる。

 

(え、夫婦って、いつもこんなことするわけ? しないよね?)

 

 精神年齢が高いとはいえ、前世は未婚なので、夫婦のなんたるかなどわかるはずもない。

 思わず後ずさってしまった。

 彼が嫌いなわけではない。大好きだけれど、色々とハードルが高すぎるのだ。

 困惑していると、それを察したリカルドがにこりと微笑んだ。

 

「逃げたら駄目だろ?」

「う、ごめん。恥ずかしくて……」

「慣れるためにも練習だな」

「……ぴぎっ!?」

 

 私の旦那さんになる人は、割と容赦ない感じに育ってしまったようだ。

 そういうのは、ぜひ仕事方面のみで発揮して欲しい。

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― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして! コミックから入った者です。 すっかりリカルドがダイエットの知識豊富で頼もしいサポーターになってておもしろかったです 笑
[気になる点] 王女の見送りを済ませ ⇒ もう王女ではないのでは。
[一言] もうすっかり甘々空間ですねww
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