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転生先が少女漫画の白豚令嬢だった  作者: 桜あげは 
18歳

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223/259

223:白豚令嬢、旅立つ!

 そうして、時が過ぎ――

 いよいよ、私がアスタール家へ旅立つ日がやって来た。

 夏の晴れやかな空に、綿のようにモクモクとした雲が浮かんでいる。いい天気だ。

 移動が苦にならないよう、シンプルで楽なドレスに身を包んだ私は、大きな鞄と一緒に馬車へ向かう。

 見送りに出てくれたリュゼと、今後についての最後の確認を済ませ、私はしんみりした気分に浸っていた。


「ブリトニー、残りの荷物はあとで送るからね」

「はい、お兄様。ありがとうございます」


 その間、祖父はずっとむせび泣いており、部下の兵士軍団に慰められている。

 幼い頃から私を溺愛していた人なので、ものすごくショックを受けたに違いない。

 

「うう、ブリトニーが……ブリトニーが……」

「お祖父様、こちらにも顔を出しますから。アスタール家にも遊びに来てくださいね」

「行く!!」

 

 祖父や兵士全員から、笑顔でサムズアップされた。

 さりげなく、マリアやライアンも混じっている。

 

「私、いよいよ、ハークス伯爵領を出るんだ」

 

 いざ旅立つとなると、ものすごく寂しい。

 これから別の場所で暮らしていく実感が湧かないまま、私は迎えに来てくれたリカルドの手を取った。

 私を受け入れる準備のため、少し前から彼は、ハークス伯爵領とアスタール伯爵領を行ったり来たりしていたのだ。

 

「ブリトニー、不安そうだな」

「そんなことないよ。図太さには定評のある私だからね」

「無理しなくていい。表に出さないだけで、ブリトニーがノミの心臓の持ち主だとわかっているから」

「えっ……!? バレているの!?」

 

 そういえば、リカルドの前では、割と醜態をさらしていた。

 今更格好をつけても、無駄だったかもしれない。

 

「向こうで、怖い思いや嫌な思いはさせないと誓う。何かあれば、遠慮なく俺に教えて欲しい」

「ありがとうっ……!? んっ!?」

 

 そこから先は言葉にならなかった、リカルドが口づけてきたので。

 短いキスを終え、彼は心底幸せそうな微笑みを浮かべる。

 

「本当に嬉しい、ずっとこの日を夢見ていたんだ。ものすごく遠回りになってしまったけれど、ようやくブリトニーと結婚できる」

「そうだね、遠回りだった」

 

 二人で笑い合ったあと、リカルドは近くに立つリュゼの方へ歩いていく。


「リュゼ、世話になった。お前には、とても感謝してる」

「君のお父上が僕にしてくれたことを、返しただけだよ。それより、ブリトニーをよろしくね」

「ああ」


 そして、今度はリュゼが私の方へ近づいてくる。


「ブリトニー、道中気をつけてね」

「はい。お兄様、今までありがとうございました」

「ふふふ、何を言っているの? 勝手に全てを終わらせないで欲しいな。ブリトニーにはハークス伯爵家とアスタール伯爵家の架け橋として、これから頑張ってもらわなきゃならないのに」

「へっ?」

「期待しているよ?」


 リュゼが黒い笑みを浮かべている、これはアレだ。

 アスタール伯爵領から仕入れる品を安くしろとか、無茶な要求を通せとか……色々言ってくる気満々だ。

 同じ家の味方だと心強いけれど、他領の代表となると彼は厄介すぎる相手。


(負けるな、私! 次こそは、お兄様をぎゃふんと言わせてみせる!)

 

 そんなこんなで、私は皆に見送られながら、アスタール伯爵領行きの馬車に乗り込む。

 フカフカの座席の大きな馬車だ。

 馬が歩き出し、見慣れた景色が遠ざかっていく。

 ハークス伯爵領――色々あったけれど大事な、牧歌的な風景の広がる私の故郷。

 窓の外の皆に向かって手を振りながら、私は長年暮らした領地をあとにした。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ブリトニーが始めた事業なんだからブリトニーがハークス領を継いでリカルドが婿になり、アスタール領はリリーが継いでリュゼが婿になれば収まりがいいのに…どうせ家屋敷の管理をするのは妻の方で夫…
[一言] > その間、祖父はずっとむせび泣いており、部下の兵士軍団に慰められている。 > 幼い頃から私を溺愛していた人なので、ものすごくショックを受けたに違いない。 >「うう、ブリトニーが……ブリトニ…
[良い点] 新天地ですね!結婚にぐっと近づいてワクワクします。 [気になる点] アスタール領地は半分になってしまって財政事情が心配です。 [一言] 医療面に力を入れていたそうなのでそちらはどうなってい…
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