表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生先が少女漫画の白豚令嬢だった  作者: 桜あげは 
18歳

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

222/259

222:白豚令嬢ついに結婚か?

「国王がアスタール伯爵家の跡取り問題を鑑みて、リカルドを次期伯爵にと提案されたんだ。これまでの、リカルドの活躍や国への忠誠心が評価されたみたいだ」

「……っ!?」

「だからね。リカルドは近々、アスタール伯爵領へ帰らなきゃならない」


 私は驚いてリカルドを見た。国王の提案というのは、確定の意味合いが強い。

 リカルドも驚いているので、リュゼから初めて聞いたのかもしれない。

 彼の献身が報われたのは嬉しい。


 けれど、リカルドが領地へ戻るのなら、彼とは離ればなれになってしまうのだろうか。

 そんな心配をしていると、リュゼが呆れた目を私に向けてきた。


「ブリトニー、他人事みたいな顔をしているけど。君も一緒に行くんだよ?」

「ぐほっ!? どういうことですか!?」

「彼が次の伯爵になるなら、婚約者である君も同行した方が心証がいい。リカルドの評判は悪くないけれど、ミラルドの身内であることには変わりないからね。二人一緒の方が功績が強調されるし、お祝いムードが高まると思わない?」

「お兄様……」

「もちろん、行きたくないなら、うちに残ってくれていいんだよ? こっちは大歓迎だから。一生、嫁ぎ遅れてくれて構わないからね」


 それは遠慮したいと思いつつ、私は困惑していた。

 

(わ、私……アスタール伯爵領へ行くんだ)


 もともと、そうなるはずだったし、覚悟もしていたけれど。

 流れに流れてしまい、このタイミングで嫁ぐよう言われても……なんか、しっくりこない。

 何も言えないでいると、私の考えを察したのか、リカルドが前にやってきて告げた。


「ブリトニー、突然他領へ嫁ぐよう決められて、正直戸惑っているよな。けれど、俺としては……その、ブリトニーと一緒にいたい。共に、アスタール伯爵領へ来て欲しいんだ」

「リカルド……」

「お前と一緒なら、次期伯爵としても頑張っていける。だから……こんなことを頼むのは情けないけれど、力を貸して欲しい」

 

 正直、根拠なく「一生幸せにする、ついてこい」などと宣言されるよりもぐっときた。

 幸せかどうかなんて、結局言う側の価値観では測れないもので、言われる側の気持ち次第だしね。

 そして、私はリカルドを手助けするのが嫌じゃない。二人であれこれ考えるのも楽しそうだ。

 

「もちろんだよ。私にできることは多くないけど、全力でリカルドを手伝う。アスタール伯爵領には、お金も資源もたくさんあるから、実験のしがいがありそうだよ」

「ここへ来て、リュゼに色々学んだ。それを、アスタール伯爵領でも生かすつもりだ」


 リュゼはハークス伯爵家でリカルドを好きなだけこき使えるよう、仕込んだだけだ……

 彼自身、こんなことになるなどとは予想していなかっただろう。


 けれど、リカルドはリュゼに並々ならぬ恩義を感じているので、これからもハークス伯爵家には頭が上がらないと思う。


(恩着せがましく融通を利かせるように言われそう。リュゼお兄様、そういうところは抜け目ないよね)

 

 私は、リカルドについてアスタール伯爵領へ行くと決めた。

 決意を読み取ったリュゼが、淡々とリカルドに告げる。


「リカルド、前にも話したように、ブリトニーは少々特殊だ。彼女を狙う者が現れないとも限らない。絶対に手放さないように……僕は、ハークス伯爵領の外では、ブリトニーを守ってあげられないから。君に任せることしかできない」

「ブリトニーなら自力で撃退しそうだが、他の奴には決して渡さないと誓う。絶対に俺が守りきる!」


 ……リカルドが格好いい。


「ぐふふ、ぐふふ」

 

 ときめきのあまり、顔がにやけてしまう。

 そんな私を目ざとく発見したリュゼが、ため息を吐きつつ告げた。

 

「ブリトニー、余所の家へ行くのは大変だよ? うちの家みたいに、全面的に君に好意的でほとんどの意見が通るわけじゃない。前アスタール伯爵も夫人もいい人だけど」

「お兄様、わかっています。大丈夫、十二歳当時のアウェイ過ぎる環境に比べれば。アスタール家の人たちは天使のはずです」

「……だね。今のブリトニーなら大丈夫か」


 そう、十二歳当時は、私も含めて皆酷かった。

 

(とうとう、結婚かぁ。この家とお別れするのは寂しいけど、リカルドだってハークス家へ来たときは同じ気持ちだったんだろうし。私も頑張らなきゃ)

 

「それで、時期だけど。リリー嬢が王城へ出発するのと同時に、アスタール家へ向かって欲しい」

「リリーが、城へ?」

「メリル殿下の侍女になるんだ」

「えっ! 侍女、リリーに決まったんですか!?」

「王家から、マーロウ殿下を通して、アスタール家に打診が来たんだよ」

 

 たしかに、リカルドがアスタール伯爵を継ぐのなら、リリーの立場は微妙になってしまう。

 彼女に夫ができた場合、その夫が野心家だった場合、リカルドと対立する恐れがあるのだ。

 幸い、リカルドの父親とリリーの父親は仲良し兄弟だったが、誰もがそうとは限らない。

 残念ながら。

 

(勝手な話だし、振り回されるリリーが気の毒だな)

 

 けれど、リリーならメリルに意地悪はしないだろうし、家柄もいいし、侍女にしても安心な人材と言えた。

 

「それからブリトニー。大々的な挙式はまだだけれど、ドレス製作のこともあるのだし、そろそろ体型を決めた方がいいよ」

「ドレスを太った姿で着るか、痩せた姿で着るかということですか」

 

 そりゃあ、もちろん、痩せた姿の方がいい!!

 というわけで、私はまたしても、本格的なダイエットを始めるのだった。

 


 ※

 

 部屋に帰ると、メイドのマリアがやって来た。彼女とも、長い付き合いだ。

 記憶が戻ってまもなく仲良くなり、それ以来ずっと一緒。一番身近な存在だった。


「ブリトニー様、アスタール伯爵領へ行かれるのですね」

「うん。マリアも、話を聞いたんだね」

「私も、お供します」

「…………」


 優しいマリアなら、そう言ってくれると思っていた。

 私のために、洗濯係のメイドから、伯爵令嬢専属メイドにまで上りつめた子だ。

 けれど……

 

「ごめんなさい、マリア。あなたは連れて行けない」


 マリアが、はじかれたように私を見た。

 まさか、断られるとは思ってもみなかったという表情を目にして、少し苦しくなる。

 でも、伝えるべきことは、伝えねばならない。


「マリア、ライアンにプロポーズされたと聞いたよ」

「えっ。それは、その……」

「受けたいんでしょ?」

「は、離れた場所にいても、結婚はできます。だから……!」


 幼い頃にできた、私のもう一人の友人である執事のライアン。

 頭の良い彼は、今やリュゼの補佐として、なくてはならない存在だった。

 特に、私とリカルドが揃って抜けてしまった際、ライアンの存在はより重要となる。

 そして、それは、私の片腕として動いてきたマリアも同じだ。


「マリアには、今後のハークス伯爵領を支えてもらいたいんだ。領地の開発部門の全権を、私はマリアに託すよ」

「ブリトニー様?」

「私の代わりを務められるのは、一緒に開発や研究に携わってきたマリアだけ。できれば、ライアンと一緒に、この家に残って欲しいの」


 それでも、どうしてもと言われたら、アスタール伯爵領へ連れて行くけれど。そうはならないだろうという確信があった。

 マリアは責任感の強い子だから私の頼みを断れないし、何よりライアンの傍にいたいと願っている。

 二人の関係を見ていれば、一目瞭然だ。


「ブリトニー様!!」


 マリアは、私のふくよかな体に抱きついてきた。


「寂しいです。心配です」

「私だって心細いよ」

 

 しばらくの間、私たちは互いに抱きしめ合っていた。六年の月日は長い。

 

「マリア、リュゼお兄様のことも、無理をしすぎないように見張っておいてね」

「かしこまりました。ライアンと協力して、しっかり監視させていただきます。ブリトニー様も、ご無理をなさらないように」

「もちろんだよ。あ、そういえば、仕事部屋に忘れ物をしたから、取りに行ってくるね」


 マリアを部屋に残し廊下に出た私は、壁際に立っていた人物に笑いかける。


「……というわけで、マリアは連れて行かないから安心してね、ライアン」

 

 顔を赤くしたライアンは、気まずそうに私を見て頭を下げた。


「ありがとうございます。でも、本当は、ブリトニー様にも出て行って欲しくないです」

 

 相変わらず、素直で可愛い……!

 私がそう言うと、屋敷の人間は揃って「誰だ、その純真な少年は?」と、首を傾げるのだけれど、ライアンは幼いときからまっすぐで賢くて、とにかく可愛い子なのだ。

 リュゼの部下たちはライアンのことを「鬼畜」とか「ドS」なんて話しているけれど、そんなわけがないと思う。


「ほら、マリアが寂しそうにしていたから、行って慰めてあげて」


 ライアンの背中に手を置いた私は、部屋の中に彼をバーンと押し込んで扉を閉めた。

 グッジョブ、私。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ヒップアタックで敵を倒すヒロインってなかなかいないと思います!!(*≧∀≦*) [気になる点] >リュゼの部下たちはライアンのことを「鬼畜」とか「ドS」なんて話しているけれど、そんなわけが…
[一言] 「それからブリトニー、大々的な式はまだだけれど、ドレス製作のこともあるのだし、そろそろ体型を決めた方がいいよ」 →まるで小物でも選ぶように、さらっと体型も選んでるという。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ