218:白豚令嬢、婚約者とお泊まりする?
リカルドが私を迎えに来てくれたので、一緒に馬車に乗って帰ることにする。リカルドの乗ってきた馬も一緒だ。
しかし、関所を出たところで、急に空が曇り始めた。
ポツポツと雨粒が地面に染みを作っていく。
「ありゃぁ、降ってきちゃった」
私が目を細めて空を見上げる間にも、雨は激しさを増していく。
とはいえ、このまま関所に居座るわけにもいかないので、私たちは馬車で出発すると決めた。
襲われたことを考えると、早めにハークス伯爵領についた方がいい。
「ブリトニー、本当にどこも怪我していないか?」
「平気。お尻も痛くないよ」
「尻……を狙ってきたのか? 不埒な輩め、許さん!」
リカルドが何かを激しく勘違いしている。
今にも下っ端悪党を斬り刻みに行きそうな彼を馬車に押し込み、私は強引に扉を閉めた。
少し進んだ先に泊まる予定だった宿がある。
急に降り出した雨のせいで、宿の中は混み合っていた。
比較的良い宿だけれど、三部屋しか空いていないと伝えられる。
どうしようかと悩んでいると、「二人部屋なら一番いい場所が空いているよ」などと、女将さんに言われ、リカルドと一緒に案内されてしまった。
「いやぁ、お客さんが夫婦で助かったよ。他は雑魚寝部屋しかなくてね」
「えっ……」
私とリカルドは、顔を見合わせる。
護衛たちには「雑魚寝部屋で寝るのは反対」だと言われ、私とリカルドは同じ部屋で宿泊することになってしまった!
(ひぇ~! 緊張する!)
洞窟で一晩を一緒に過ごした仲だけれども、婚約者同士だけれども。
色々考え、燃えるように熱い頬に両手を押し当てる私は、落ち着かない気分で部屋の中を歩き回る。
「ブリトニー、俺は長椅子で眠るから」
広いベッドを譲ると言われ、私は申し訳ない気持ちになった。
リカルドは、ハークス伯爵領から王都まで馬を走らせたので、絶対に疲れている。
彼を長椅子に追いやるなんて、鬼畜の所業だ。
「駄目だよ、リカルド! 私が長椅子で寝るよ!」
「そんなこと、させられるわけがないだろ」
「じゃ、じゃあ、一緒に寝よう!」
「えっ……」
ベッドは広いんだし、一晩だけだし、リカルドは紳士なので心配ない。
(ほんの少し恥ずかしいだけで)
眠っている間に押しつぶさないよう、気をつけなければいけないけれど。
きっと、なんとかなるはずだ。
11月15日
本日「転生先が少女漫画の白豚令嬢だった4」の発売日です。
どうぞよろしくお願いいたします。
https://syosetu.com/syuppan/view/bookid/3718/












