表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生先が少女漫画の白豚令嬢だった  作者: 桜あげは 
18歳

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

207/259

206:母からの手紙と意外な来訪者


 母の手紙を読んだ私は、わなわなと震えていた。


「はあ? 一体、何を考えているの!?」


 お上品ぶった白い便せんを、力任せに破り捨ててやりたい。

 それほどまでに、手紙の内容は衝撃的だった。

 内容は要約するとこんな感じだ。


~お元気ですか。あなたに、西の国の侯爵との見合い話が来ました。

 本来ならば、我が公爵家から娘を出すのですが、あいにく私の息子も近しい親戚も男ばかりで。

 そんな折、あなたのことを思い出したのです。確か、まだ結婚していなかったはず。

 僻地の貧乏伯爵家の娘であるあなたにとって、またとない良縁です。受けなさい。以上~


「フ・ザ・ケ・ル・ナ!」


 私のあまりの憤慨ぶりに、後ろに控えていたマリアが慌てる。


「ブリトニー様? どうなさったのですか!?」

「マリア、ちょっとこれ、読んでみて」

「よろしいのですか? では……」


 手紙に目を通したマリアは、ややあって手紙を持ったまま硬直した。わかりやすい。


「なんですか、この手紙は。酷すぎます!」

「だよね、頭に来ちゃう」


 何が「あなたのことを思い出したのです」だ!

 つまり、今の今までずっと、私のことなんて思い返しもしなかったという話ではないか。


(しかも、厄介な見合い話を持ってきて……一生忘れていてくれた方が良かったよ!)


 よりにもよって、リュゼの不在時に、とんだ厄介ごとを運んでくれたものだ。


「とりあえず、お断りの手紙を書いて時間を稼ごう」


 私は、さっさと手紙をしたためて、マリアに渡した。


「間に合わなければ、この我が儘ボディで相手の前に出るよ。幼き日のリカルドや、面食いのルーカスに通用したのだから。きっとフラれるはず!」

「いいえ、ブリトニー様。マーロウ殿下という例外もいらっしゃいますから、油断はできません!」


 なんにせよ、私に決定権はない。

 裏から手を回し、この話をなかったことにできればいいのだが……

 悩んでいると、別のメイドがやって来て、私に来客があることを告げた。


「今日のお客様は、全員会ったと思うんだけど。誰かな?」


 よっこいしょと立ち上がり、客を出迎えに動く。マリアは私の書いた手紙を出しに行った。

 呼びに来たメイドと共に屋敷の門へ急ぐと、見覚えのある馬車が止まっている。


(あれは……王宮のお忍び用馬車!)


 何度もうちの家に来るので、覚えてしまった。今日は誰だろう?

 マーロウかアンジェラだと思ったら、意外にも馬車から出てきたのはメリルだった。

 一体、ハークス伯爵領に何の用なのか。

 ふんわりした淡いグリーンの装いで、メリルは嬉しそうに私の方へ駆けてくる。


(あああっ! ヒールのある靴で走ったら……)


 案の定、メリルは蹴躓いて体勢を崩し、護衛の兵士に助けられている。相変わらずだ。


「ブリトニー! 会いたかったわ!」


 それでも、平然としているメリル。強い!


「メリル殿下、突然どうされたのですか?」

「連絡もよこさず、いきなりごめんなさいね。あまり時間がなかったものだから……あなたに、相談したいことがあるの」

「私に、ですか?」

「ええ、こんな話、身内であるお兄様やお姉様には言えないし。友達にならと思って。でも、私の女友達は、ブリトニーしかいないことに気づいたのよ」

「おおう?」


 確かに、メリルは令嬢たちから嫌われている。

 ある程度、周囲への気遣いを覚えた今でも、彼女の交友関係は改善していない。


「とりあえず、屋敷の中へどうぞ」


 私はメリルを客用の応接室に案内した。

 用事を済ませたマリアが、フルーツの香りがする紅茶を淹れてくれる。

 実はこれ、うちの新製品だ。様々な香りのフレーバーティーを開発中なのである。


「それで、相談というのは?」


 問いかけると、メリルは目線を落として言った。


「あのね、私……西の王子と婚約するかもしれないの」

「ええっ!?」


 タイムリーすぎる話題に、私は持っていたティーカップを取り落としそうになった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ