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転生先が少女漫画の白豚令嬢だった  作者: 桜あげは 
17歳

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199/259

198:友人一家の事情

 そして、数日が経過し……私はノーラの実家で過ごさせてもらっている。

 前線の情報を都度確認しつつ、臨機応変に指示を出していた。

 火薬武器が使用されていたらと心配だったが、敵は銃や爆薬を使ってはいないらしい。

 例の鎧対策では、火炎瓶が活躍しているとのこと。


(……どうしよう、戦いに新たな武器を使ってしまった)


 戦争の歴史が変わったら大変だと私は焦った。


(作り方は企業秘密にしているけど……以降は使わない方がいいかも)


 他には、鎧の顔部分の隙間に唐辛子液をお見舞いするのも効果的らしい。

 スプレーじゃ飛距離が足りないので、現場では液体でぶちまけているみたいだ。

 ノーラの領地では、ガンガン唐辛子液を作っている。材料はハークス伯爵領から早馬で届けてもらった。

 熱湯や油での攻撃も有効。そして、熟練の技を持つハークス伯爵領の兵士たちは、突く系の武器を華麗に使いこなし敵を殲滅して回っているらしい。

 形勢は有利になったと連絡が来た。


 また、ノーラの領地では天然のセラミックのような鉱物が取れる。

 加工前のそれらは、運良く棒状に引き延ばされていた。棍棒として使えるので前線に全部投入している。

 ノーラの嫁ぎ先から薬として阿片が事前に送られてきていたようだが、それらは廃棄してもらった。痛みは取れるが依存性が怖いので。

 ちょこまか動いていると、ノーラの弟が話しかけてきた。


「ブリトニー様、我が家はどうなるのでしょうか。知らなかったとは言え、レディエ侯爵家に肩入れしてしまいました。彼らに武器の材料を送ったのは、僕の家です」

「それは……」


 全くお咎めなしというわけにはいかないだろうと思う。


(レディエ家はともかく。今の国王なら、ノーラの実家に命に関わるような罰は与えないと思うけど)


 はっきりしたことを言えずにいると、ノーラの弟は驚きの事実を告げた。


「お父様は、お姉様に全部の責任を着せて、一連の事件から逃れようとしています。僕は反対しているのですが」

「えっ、ノーラに罪を着せる!? どういうこと!?」


 ノーラが嫁いだのは、元を正せば政略結婚だ。

 彼女の婚約に乗じて、これ幸いと取引を始めたのはノーラの父親である。彼は大量の鉄が何に使われるのか全く考えず、どんどん出荷していた。

 まさか、こんなことになるとは思ってもみなかっただろうが、良いように利用されて北の国にも侵略されている。

 この事態を全部「ノーラのせい」で片付けるのは、無理がありすぎる気がした。


(というか、酷いな……ノーラ父!)


 領地のためとはいえ、可愛い娘に全部の罪を着せるだなんて。

 もっと他に方法がありそうな気がするのだが。


「もともと、お姉様はこの家で冷遇されていました。僕が生まれる前は、男でなかったことを責められ続けていたようです。ちなみに、生まれてからは放置です。姉には少々卑屈な面があるのですが、それは父の影響が大きいのです。父は姉の性別、容姿、能力に始まり、行動や趣味まで全部を否定していましたから」

「……知らなかった」


 ノーラは家のことをあまり話さない。

 愚痴はよく口にしているが、私は彼女が父親から虐げられていることに気づけなかった。


(ノーラ一人を罰したりさせない)


 マーロウやアンジェラは事情を知っている。

 ノーラはレディエ家を探り、嫁ぎ先の悪事を暴いてくれた。そんな彼女が重い罰を与えられることはないはずだ。


「そういえば、君は何歳なの?」

「僕ですか? 十二歳です……お姉様とは五つ違いです」


 ノーラの父親に責任を負ってもらい、当主を変えてしまう手もあるが……息子が十二歳では難しいだろう。補佐が要る。


(ノーラ父が戻ったら、それとなく様子を観察してみよう)


 この日の翌日、体調が回復し、王都の城で事情聴取などを終えたノーラが実家に戻ってきた。

 彼女は、こちらの様子を聞き、私の仕事を手伝ってくれている。

 弟との仲は、さほど悪くないようだった。


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