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転生先が少女漫画の白豚令嬢だった  作者: 桜あげは 
17歳

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193/259

192:船上の王女(アンジェラ視点)

 私――アンジェラは両手足を縛られ、暗い場所に転がされていた。

 目覚めたらここにいたのである。


(迂闊でしたわ、こんなことになるなんて)


 耳を澄ませ、冷静に現在地を探る。

 汽笛の音が近くに聞こえるので、海周辺のようだ。もっとも、私が海を訪れたのは、今までの人生で二回ほどだが。

 少し湿った木の床が少し揺れているので、船の上かもしれないと当たりを付けた。

 王都の西側には、大きな港がある。城のある中心部からは距離があるので、城の者たちは私がここにいるなどとは思わないだろう。

 もし、船が出航していれば、もはや誰にも手出しができない。


 苦々しい気分で、数日前の自らの行動を省みる。

 あの日の私は、エミーリャがいなくなってしまうのではと恐れ、落ち着きなく城内を歩いていた。

 彼が帰ってきたら、色々と話を聞き出すつもりだった。

 けれど、途中で出会った様子のおかしなメイドが気になって、彼女に話しかけて……

 そこから先の記憶がない。気がつけばここにいた。

 きっと今頃、皆が必死に私を捜索しているはずだ。自分のふがいなさが嫌になる。


 落ち込んでいるときは、嫌な想像が膨らむものだ。

 第一王女だというのに、私は国の役に立つどころか足を引っ張っている。

 エミーリャだって、愛想を尽かして離れて行ってしまうかもしれない。


(いいえ。彼はもう、中央の国にいないかもしれないですわね)


 南の国は、この状況を察していたのかもしれない。

 ゴタゴタに巻き込まれる前に引き上げるのは、賢い選択とも言えよう。

 胸は痛むが、エミーリャが安全な地で暮らせるのなら、それもいいような気がしてきた。


(今の私のような目には、遭って欲しくないですし)


 これから自分がどうなるのか想像も付かない。


(まだ殺されていないし、何かの人質かしら?)


 食事が規則的に運ばれてくるので、それで日数を数えている。

 惨めだった。


(ようやく政略結婚できて、領地も与えられる予定で……これから精一杯、国の役に立とうと思っていたのに)


 もし自分の存在が枷になるのなら、さっさと切り捨てて欲しかった。

 今より情けない存在にはなりたくない。

 俯いて泣きそうになった私は、ふと友人のことを思い出した。


(ブリトニーなら、こういう事態にどう対処するのかしら)


 生命力に溢れた逞しい彼女は、きっとじっとしてはいないだろう。

 脱出する術を探し出すかもしれないし、そこまでできなくても情報収集はしそうだ。

 両手足は拘束されているけれど、這って動くことはできる。


(諦めては駄目ですわね)


 助かる方法を考えるべきだ。

 もぞもぞと体を動かし、私は部屋の中を探ることにした。


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