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転生先が少女漫画の白豚令嬢だった  作者: 桜あげは 
17歳

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188/259

187:北の王女の本性は……

 考えていると、またルーカスが衝撃の内容を口に出した。


「幽霊屋敷の元住人の怪死には北の国が噛んでいる。昔ここに住んでいた貴族は姉と繋がっていたけれど、口封じに殺されたんです」


 ルーカスを見たリカルドが声を上げた。


「お前、それ……」

「最初は、そんな屋敷に住むと言い出したリカルドたちを心配しました。それで屋敷に異常がないか直に確認しに来たんです。姉のことは……正直言って想定外でした。まさか、堂々とこんな場所に隠れていたなんて」


 だからこそ、ヴィーカにとっては敵の盲点を突く都合の良い隠れ家だったのだろう。


「とりあえず、お一人ずつ話をお聞きしましょう。失礼ですが、あなた方にはハークス家の監視を付けさせていただきます」


 私はそう口にした。

 手短に話を聞き、エミーリャと共にアンジェラ捜索に乗り出さなければならない。


(私はルーカスが危険だと感じていたけれど、今の話だと……ヴィーカ王女もかなり怪しい)


 ルーカスからは、ある程度事情を聞けたので、私はヴィーカにも質問することにした。

 リカルドとルーカスとジルは、私の呼んだ監視付きで一階へ向かう。

 ヴィーカは地下の部屋にそのまま残っていた。

 もし、中央の国を揺るがす確固たる証拠が出た場合、犯人はしかるべき場所に幽閉されることになるだろう。


 王都で一番厳重な幽閉先は、城の敷地内にある罪人が収容される塔だ。

 一棟丸々が監獄として使用されているこの建物は、国の中でも特に悪質な犯罪者ばかりが入れられる場所だった。

 ちなみに、リカルドの兄ミラルドも今はそこにいる。


 軽犯罪なら身代金や判決次第で釈放されることもあるが、ここに入れられた者は余程のことがない限り、一生を塔の中で過ごした。

 中央の国では残虐な拷問や刑罰は行われておらず、死刑の場合でも絞首刑や服毒が一般的だ。

 少女漫画の中のブリトニーは絞首刑である。


 北の国などは刑罰や拷問が厳しいことで有名だ。裁判も滅茶苦茶である。

 例えば、焼けた鉄の棒を握らせ、深いやけどを負ったら有罪とか。容疑者を水中に投げ込んで沈んだら有罪とか。現代日本より文明が遅れているとはいえ、あんまりだ。

 中央の国で裁判をする権利があるのは各領主たちで、彼らは自領で起こった事件を自分たちで解決することが多い。

 ただ、今回のように国に関わる事件の場合は城で裁判が行われる。


 私は地下室の中でヴィーカと向かい合った。

 長い髪を掻き上げた彼女は、ルーカスと同じ漆黒の瞳で私をじっと見つめる。


「それで? 私に何が聞きたいのかしら?」

「少女漫画の二部と三部についてです。あの話の漫画家は、二部の連載時に亡くなっていたという話を聞きまして」

「私を疑っているの? 本当のことしか話していないのに?」


 ヴィーカは、早口で私に尋ね返した。

 腕組みをした彼女の視線は右上を向いており、足を落ち着きなく動かしている。


「はい……」

「失礼ね、あなたと私は同じ転生者じゃないの。危ないのはルーカスよ!」


 まくし立てるヴィーカを遮り、私は告げた。


「今の態度で、疑いが確信に変わりつつあります。ヴィーカ様」


 仕事をするにあたり、リュゼが教えてくれたことがある。

 質問をし返してくるのは答えたくない内容だから。

 嘘を見破られるのを心配して話題を逸らそうとしている。

 後ろめたい事情のある人物は、そう言った行動に出やすいと。


 腕を組むのも、手に現れる震えなどの動揺を誤魔化すため。

 足の動きが多くなるのは、早くこの場から立ち去りたい心理の表れ。

 右利きのヴィーカの視線が右上なのは、言語を司る左脳で嘘の内容を考えているから。

 緊張からか瞬きの回数も多いし、早口で声も大きい。


 かつて、リュゼから聞いたことを総合すると、今のヴィーカは全身で「嘘をついています」と言っている状態だった。

 彼女を信じたかったけれど、これでは庇い立てすることも出来ない。

 ルーカスも悪いが、ヴィーカはもっと悪質なようだ。


「……と言うか、ブリトニーは、そんな話をどこで聞いてきたわけ? もしくは、単なる妄想なの? 失礼にも程があるわよ」

「漫画家が亡くなっているという話は、他の転生者から聞いたものです」

「えっ!? あなたの他に転生者がいると言うの!?」


 ヴィーカはセルーニャが転生者だと知らない。

 あからさまに動揺しているので、作者死亡説の信憑性が少し高くなった。


「まったく、他にも転生者がいるなんて……しかも、ブリトニーと接触済みだなんて想定外だわ」

「事実を話してもらえませんか、ヴィーカ王女? もう逃げ場はありません。正直に話せば、罪の如何によっては減刑されるかもしれませんよ」

「ふん、三下悪党キャラが生意気な口をきくわね。全てはもう手遅れだというのに」


 問い詰めると、ヴィーカの態度が一変した。

 しらばっくれても無駄だと、自棄になったようだ。

 もう少し誤魔化すなり粘るなりすればいいものを……ルーカスの言うとおり、彼女は少し単純な性格の持ち主らしい。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 北の国の第二王女は 本来のストーリーをどこまで把握しているのか? [一言] どちらも信用出来ません。
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