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転生先が少女漫画の白豚令嬢だった  作者: 桜あげは 
17歳

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187/259

186:白豚令嬢は真実を封印した

 一人微笑むルーカスを見て、私たちは混乱した。


(てっきりルーカス殿下は北の国の手先だと思っていたけれど、そうではないということ? 今の話を聞けば、むしろヴィーカ王女の方が危ない気がするんだけど)


 一体どちらが真実を言っているのか、まるで見当が付かない。

 そんな私たちを見つつ、ルーカスは説明を続ける。


「中央の国へ来た当初、僕の目的は姉と同じでした。一人でこの国を侵略する糸口を探していた……けれど、王都の学園でリカルドたちと過ごすうちに気づいたのです。本当にこれでいいのかと、彼らの平和を奪っていいのかと……僕は命令と友情の間で板挟みになりました」


 ルーカスの言葉を聞いて、リカルドの新緑色の瞳が揺れている。

 彼は、友人を大切に思っているのだ。


「故郷では、第五王子に親切に接してくれる相手なんていなかった。この国に来て、僕の世界は変わった。だから、決意しました。大事な友人――リカルドたちを守ろうと。とはいえ、勝手に大きく動けば、今度は僕の命が危うくなる。北の国は裏切り者を許しません。だから、僕は二重スパイの真似事をしなくてはならなかった」

「……ってことは、ルーカス。お前、ずっと、裏から俺たちを守ってくれていたということか?」


 リカルドの問いかけに、ルーカスは静かに頷いて見せる。


「僕に出来ることは限られていましたので、それとなく情報を流したり、害になりそうな相手を排除することしか出来ませんでしたが。一応、北の国にもいい顔をしなくてはならなかったので、ギリギリのところで、中央の国の不利にならないよう均衡を保っていました……僕は臆病だから、自分の命も惜しかったので。結局そのことで、あなた方には疑われてしまったようですが」


 ルーカスは、自嘲気味に笑った。


「ですが、あなた方は僕の気も知らずに予想外の行動ばかり取るので……結局計画全体が狂ってこうなってしまいました。特にブリトニー嬢、あなたは酷い」


 何故か急に私が責められる形になったので、驚いて反論する。


「ええっ、そんなことを言われましても……」

「主にあなたのせいで、僕の計画は大きく狂い始めたのです。まず、ハークス伯爵領は資金難諸々で自滅するはずでしたが、あなたの生み出した様々な商品により急激な発展を遂げた。さらに、姉と組んだミラルドの攻撃も、ほぼ犠牲を出すことなく凌いだ。大貴族の反乱の際は、人質になるどころか相手を返り討ちにして……」


 ルーカスは「僕の予想では、中央の国は大きな被害を受けるはずだった」とのことである。

 しかし、思い返せばミラルドの件で領地の危機を知らせてくれたのはルーカスだった。

 彼なりに、味方してくれていたのかもしれない。


「本当はブリトニー嬢が故郷を出てリカルドと結婚し、王都へ来てくださるのが理想でした。ハークス伯爵領が発展しすぎると、僕が北の国から『命令に背いて仕事をしていない』と思われてしまう。互いの国が戦争にならないギリギリのラインで均衡を保っている状態を目指していましたから」


 後ろではヴィーカが「この冷血漢! 均衡を保つために両者の犠牲も黙認したのね!」と声を張り上げていた。

 しかし、ルーカスは黒い瞳を姉に向ける。


「ハークス伯爵領を攻める際に座礁した船団は、僕の部下たちです。姉上は僕の留守中に彼らを唆し動かしましたね? 僕の力を大幅に削ぐために。まあ、簡単に唆されてしまうあたり、元々僕は彼らに信用されていなかったのでしょう。弱い妃から生まれた第五王子ですし」


 北の国のお家事情は複雑そうだ。

 でも、彼らの会話から事実がわかった。ルーカスもヴィーカも敵だったということが。


「今聞いたことが事実なら、私はお二人を投獄しなければなりませんが……もう少し詳しくお話を聞いた方が良さそうですね」


 私はヴィーカの方を見た。彼女の話も聞いてみたい。「メリルと王宮の扉」の漫画家が死亡していることについても確認しなければならない。


「ヴィーカ様、あなたにも個人的に伺いたい内容があります。過去のことで……」

「ルーカスに騙されては駄目よ!」


 私の話を遮ったヴィーカは声を張り上げた。


「こいつ、そういう悪知恵だけは働くんだから」


 しかし、これにはまたルーカスが反論した。


「まったく、ここで吠えるなんて……自分が悪いと白状しているようなものですよ」

「おっ、おだまり!」

「あなたも、北の国が豊かになるものを開発してくれれば良いものを」


「何言ってんのよ。石鹸なんかより、薬の方がよっぽど役に立つじゃない!」

「あなたが作るのは毒薬ばかりだ。ブリトニー嬢は、医療現場で使える人を生かす品を、姉上はアヘンなど人を殺すものを……お二人はどこか似ているのに、することが対極ですよね」


 思わず私は黙り込んだ。そんな大層なものを作った覚えはないのだ。

 自分の悪臭を消すため、趣味の延長で前世の石鹸を再現してみただけ。

 そのことで聖人のように言われたら、いたたまれなくなる……もう真実を言い出せない。

 そして、ルーカスは私とヴィーカの共通点に気づいているようだった。


(それにしても、ヴィーカ王女は毒薬作りが得意だなんて。毒薬……って、どこかで聞いたような話)


 ついさっき聞いた、国王が毒に倒れた事件。やっぱり北の国と関係があるのかもしれない。


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