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転生先が少女漫画の白豚令嬢だった  作者: 桜あげは 
17歳

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155/259

154:馬車の座席は二人掛け

 今日は、ダン子爵領の見学のため、リカルドやリュゼと一緒にケビンの実家へ向かう。

 馬車に隣り合って座る私の手を、リカルドがそっと握った。


「来ることが出来て良かった。ブリトニーとこうして出かけるのは、久しぶりだな」

「う、うん」


 最近のリカルドは積極的だ。

 今までは普通に彼と接していたのに、ふとした瞬間にものすごく意識してしまい、普通ではいられなくなってしまう。

 少し前から起こっている、この現象は一体何なのだろう。


「はー、よいしょっ……やっと領内の仕事から解放されたよ〜」


 そんな風にドキドキする私とリカルドの僅かな隙間に、リュゼが腰をめり込ませた。


「あれ、リカルド。いたの?」

「……リュゼ、それはないだろ」

「悪いね、ブリトニーの傍は彼女の保護者である僕の指定席なんだ」

「お、お前……! 大人げないぞ……!」


 そんな指定席は聞いたことがないと思っていると、横からひょいと持ち上げられ、いつの間にかリュゼの膝の上へと着地していた。


「ふぅ、仕方がないなぁ」

「……リュゼお兄様?」

「ブリトニーの隣はリカルドに譲るよ。僕がこうしていればいい話だからね」

「なっ……」


 リュゼの大人げないやり口に、リカルドは言葉を失い、パクパクと口を開閉させている。


(こ、これは……いつぞやの二の舞では)


 たしか、南の国から帰る際に、こんなことがあったような気がする。

 しかも、今回の私は痩せてしまっているため、相手の膝をいたわる言い訳も効き目が薄い。


「お、お兄様。さすがにずっと膝の上は……」

「僕なら頑丈だから大丈夫だよ。最近は仕事が忙しかったからね、ブリトニーに構えなくて寂しかったんだ」

「……って、絶対に嘘ですよね」


 なんだか、リュゼが色々と開き直っているような気がした。

 そして、私とリカルドの間を妨害する気満々に見える。むしろ、それを楽しんですらいる雰囲気だ。


「リュゼ、それなら俺がブリトニーを膝に乗せても問題ないな」


 横からリカルドの手が伸び、リュゼの膝上の私を自分の方へ引き寄せようとしたが、リュゼがそれを器用に避けている。


「いや、私は普通に座りたいんだけど。膝の上って安定悪いし、落ち着かないし」

「落ち着かないなら、僕が支えてあげるね? 前より細くなったから、しっかり抱き留めてあげられると思うんだけど」

「ひっ……! お兄様、ぐえぐえ……絞めすぎです! リカルドも、引っ張らないで……!」


 双方に奪い合われた結果、私は二人の間にミッチリと挟まれながら移動する羽目になった。

 リュゼは余裕の表情で意地悪を続行中だし、リカルドは彼に対抗している。

 私が反対側に座ろうとしたが、許されない。なんだか、微妙に疲れる道中だった。



 新しい事業を次々に始めるハークス伯爵家の内政状況だが、私が転生した当初に比べると格段に良くなってきている。

 水路は領地内の主立った場所から徐々に広がっており、人々の生活に根付き始めていた。

 それに伴い上水下水の処理も進み、病気の発生を抑えるのにも役立っている。

 町に作った温泉のほうも概ね好評なようで、物珍しさから訪れる客が後を絶たないという。汗を流すのにちょうど良いと、早くも常連客が出てきているようだった。

 さらに、そこを中心に店を構える者なども出てきて、町自体が発展し始めているようだ。


 今回訪れるダン子爵領は、ハークス伯爵領の南東に位置する小さな領地で絹糸やそれらを使った布地の生産が盛んな場所。領地の一部では、綿花の栽培も行われている。

 また最近では、布の生産だけではなく染色や服作りにも力を入れているようだ。

 私の目的を果たすために、とても条件の良い場所。それが、ダン子爵領なのである。

 約三日ほどで、私たちは目的の領地へ入ることが出来た。


「あ、見えてきたね。桑の木が植わってる……」


 ダン子爵領は、こぢんまりとした農村などが広がる場所だった。

 気候はハークス伯爵領より暖かく、植わっている植物も微妙に異なる。

 しばらく進むと、ケビンの住む子爵家が見えてきた。


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[気になる点] リュゼ [一言] 不快
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