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転生先が少女漫画の白豚令嬢だった  作者: 桜あげは 
16歳

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128/259

127:救出された白豚令嬢

 リカルドに励まされ、不思議とさらに元気が出てくる。


「……うん!」

「じゃあ寝ろ、少しでも寝ろ。いびきをかいても大丈夫だぞ?」

「でも、リカルドは?」

「なるべく外を見張る。翌日に体調を崩さないよう、眠れるときに寝ておけ。俺はお前よりも体力があるし、起きていてもなんとかなる」

「ありがとう」


 ただでさえ足を怪我しているのに、体調まで崩して帰り道で足手まといになってはいけない。

 私は、リカルドの言葉に甘えて眠ることにした。


 翌朝早く、私は肌寒さを感じて目を覚ました。雨音はいつの間にか止んでいる。

 まだ生き物も動き出していないのか、静かな朝だ。

 背後に暖かな体温を感じ、昨日リカルドに守られながら眠りに落ちたことを思い出した。彼がもたれかかっているようで、少し肩が重い。

 リカルドの様子を窺うためにそっと視線を動かすと……私の肩に顔を埋めて眠っていた。


「……あれ、寝ちゃったの? 山道を歩いて助けに来てくれたし疲れたんだね」


 ちょっと微笑ましいなと思っていると、声に反応したリカルドがゆっくり頭を上げた。


「う……ブリトニー? 寝てない、俺は起きてる。ちょっと休んでいただけだ」

「少し寝たら? リカルドのおかげで、私はきっちり眠れたし」

「だから、起きていると言っているだろ? 本当にさっきまで意識があったんだから。明るくなってきたし、狼煙を上げてみるか」


 リカルドは木から外に出て、天幕にある荷物から狼煙を三本持ってきた。

 火をおこす道具で同時に点火し、天幕の横に置く。


「それ、どういう道具?」


 木の中からリカルドに声をかけると、戻ってきた彼が説明してくれた。


「中に馬の糞が入っているらしい。大きめの筒だが、煙の量や燃える時間は少ないだろう。本当は、これらと燃えやすい葉などを組み合わせて使うようだ」

「私たちの無事が伝わるといいね」

「救助が来ないなら俺が運んでいくから、心配しなくていい。ただ、ブリトニーの足のことが気がかりだ」


 頼もしいリカルドは緑色の瞳を細めて私の足を見、難しい顔になる。


「赤く腫れ上がっているな。負ぶっていくと負荷がかかるだろうか?」

「膝下だから大丈夫だと思う……ん?」


 木の中から空を見上げると、大量の煙が上がっているのが見えた。


「……おそらく、向こうの狼煙だな。こちらの合図が見えたんだろう」

「そっか、じゃあ救助が来てくれるんだね?」

「ああ、そうだな」


 リカルドは私を安心させるように微笑み、木々の奥へと視線を向けた。


 しばらくして太陽が中天に差し掛かった頃、少し離れた場所から人の声が聞こえた気がした。

 素早く反応したリカルドが再び狼煙を上げると、徐々に声が近づいてくる。救助が来たのだ。

 雨に濡れた草木をかき分ける音や、ぬかるんだ地面を歩く足音も聞こえてくる。


「ここだ!」


 リカルドが声を上げると、足音がこちらへ近づいてくる。

 すぐに数人の兵士たちとリュゼが現れた。


「リカルド、ブリトニー! 無事で良かった……怪我は?」


 リュゼの問いかけに、リカルドが答える。


「ブリトニーが足を骨折したかもしれない。赤く腫れているんだ」

「わかった。すぐに近くの村へ運ぼう」


 私は、木の外から外へ出ようとし……またお尻が穴に詰まった。


(嫌ー! 大勢の前で、恥ずかしい!)


 リカルドに引っ張られてやっと外に出ると同時に、リュゼが駆け寄ってくる。


「大丈夫かい? 足は痛む?」

「はい、痛くて動かせません」

「リカルドの言うとおり、骨折かもしれないね。ブリトニー、自分で応急処置をしたの?」

「そうです。後でリカルドにきれいに処置しなおしてもらいました」


 リュゼは絶賛太り中の私を抱き上げて、来た道を戻ろうとする。


「ありがとう、リカルド。君のおかげで、ブリトニーは助かった」

「気にするな……いても立ってもいられなくて、俺が勝手にやっただけだ」


 リカルドは、名残惜しそうに私から離れた。


(私も……もう少し彼と一緒にいたかったかも)


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