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転生先が少女漫画の白豚令嬢だった  作者: 桜あげは 
16歳

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117/259

116:旅は道連れというけれど

 エミーリャの提案を受け、私とリカルドは一緒に同行したいと彼に告げる。


「へえ、リカルドも来たいの? もちろん、歓迎だ」


 南の国の第三王子は、ニヤニヤしながら私を見て言った。私たちの関係を面白がっているようだ。

 すると、近くで話を聞いていたメリルが割り込んで来る。


「ねえ、何の話をしているの? 私にも聞かせて?」

「もちろんさ、メリル王女」


 エミーリャが、私たちに提案した内容をメリルに説明し始めた。もちろん、こちらの恋愛事情は伏せてくれている。


「……というわけで、二人を南の国へ招待しようと思って」


 広い世界を見てくればいいというのは、南の国へ行くことを指していたらしい。

 具体的な話はしていなかったので、詳しい内容は今聞いた。


(そういえば、エミーリャ王子は、前からやけに南の国を推していたよね。商品のやりとりに活かせそうだし、リュゼお兄様に頼めば許可をくれるかも)


 そう思っていると、メリルがはしゃぎながらエミーリャに駆け寄り彼の両手を取った。


「私も行きたいわ!」

「えっ……?」


 これには、さすがのエミーリャも驚いたらしい。苦笑しながらルーカスに目配せする。


「そうだねえ。君のお父上の許可をもらわないことには、なんとも……」

「任せて! きっと、説得してみせるわ!」


 キラキラと薔薇色の瞳を輝かせたメリルは、明るく自信満々にそう言い切ってみせた。


(……メリルも来るの?)


 婚約者候補のメリルが行くということで、ルーカスがわかりやすくそわそわし始めた。

 しかし、人質の身である彼は、今はまだ簡単に遠出できないだろう。心配そうにメリルを見つめている。

 エミーリャの言い出した南の国への旅へ同行するメンバーは、当初より増えそうだ。


(アンジェラは、来ないだろうな。マーロウ王太子は、来たがりそうだけれど……)


 マーロウは、異国のハーブに大変興味を持っていた。


(あとは、リュゼお兄様だな。うう、許可を取りに行かなきゃ)


 少し憂鬱だが、彼に無断で出かけることはできない。リュゼは、私の保護者だ。

 この保守的な国では、女子は保護者に逆らって勝手に行動しにくいのである。

 メリルは、リカルドと一緒に出かけられることを単純に喜んでいた。「嬉しい、もっと話を聞かせてね?」などと言いつつ、またリカルドの腕を触っている。


(またなの……!?)


 私は、気が気でない。そして、ルーカスとリカルドの友情がクラッシュしないかも心配である。


(よし、今後のためにも頑張って許可を取るぞ!)


 気合を入れて、その場を後にした私は、屋敷に戻ってリュゼの部屋へ向かった。

 ずんずんと廊下を進み、従兄の部屋の前で足を止める。


「お兄様、お話があります!」


 ノックしてしばらくすると、硬いオーク製の木の扉が開き、リュゼがひょっこり顔を出した。


「ブリトニー、珍しいね。最近は僕の付近に近寄ることはなかったのに。どうしたの?」


 気まずくて距離を取っていたことは、お見通しらしい。

 従兄は私を部屋の中へ招きいれ、近くの長椅子に案内した。


「ど、どうも」

「新しい取引先でも見つけてきた? 君が、あの短時間で婚約の返事を出せたとは思えないし」


 ……全部読まれている。


「ええ、まあ、そんなところです。そっちのお返事も、きちんとしなければならないのですが」

「焦らなくていいよ。でも、ずっと拒絶されるのは寂しいなぁ」


 青い瞳がゆっくりとこちらを向くと同時に、彼への罪悪感が湧いてきた。


「す、すみません……拒絶ではなく、お兄様への接し方に困っていただけです」

「正直者だなあ」


「そ、それでですね。お兄様に相談したいことがあってですね」

「言い淀むということは……まずい内容?」

「ち、違いますよ? エミーリャ殿下が南の国への旅に誘ってくださったので、行きたいなあと」

「……エミーリャ殿下と二人で行くのはまずくない?」

「南への旅に行きたがっているメンバーは、エミーリャ殿下にルーカス殿下、メリル殿下にリカルド、そして私です。増えたり減ったりすることもあるでしょうが……」

「ふぅん? リカルドも行くの」


 リュゼの目がすっと細まり、私の心臓が縮み上がる。これは、まずい。


「あー……急用を思い出しました」


 席を立ち、くるりと回れ右をして扉へダッシュする。

 しかし、優秀な従兄弟に先回りされ、長い足で出口を塞がれた。これでは、外へ出ることができない。


「まあまあ、もう少しゆっくりして行きなよ」

「お兄様、そんな格好で扉を塞ぐなんてお下品ですよ」

「ふふ、ごめんね? 足が長くて、つい……」


 なんて嫌味な野郎だ。


(そして、私……従妹なのに、なんで足が長くないんだろう。不公平!)


 脱出を諦めた私は、部屋の中に一歩戻った。


「ねえ、その南への旅だけどさ。僕もメンバーにねじ込めない?」

「へ……?」

「せっかくだから、南の国へ行ってみたいなあ」


 にっこりと、やたら強制力のある笑みに押し切られた私は、コクコクと頷かざるを得なかった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] リュゼの存在そのもの あの時死ねば良かったのに ・・・ [一言] 最初は厄介払いしようとしたくせに 利用価値が有ると分かれば アッサリと手の平返し ・・・ 旅行先でもリカルドの妨害工…
[一言] 今この時点でリュゼに頑張ってほしい! 続きが気になります。
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