第15話
■side:京都私立華聖女学院高等学校 1年 清水 冬華
我が華聖女学院は、初出場で全国大会への切符を手に入れた。
あとはクジ運にもよるだろうけど、適当に勝ってそれなりに目立つことが出来ればお嬢様の目標も達成となる。
つまり私のお役は御免だ。
少し寂しい気もするが、かといって積極的に参加したいのかと問われると……。
実際、今行われているプロの指導もどちらかと言えばサポートに回っている。
……そうそう、プロと言えば。
「あのマントはどういう技術なのかしら!?」
「片手であのサイズをバランス崩さずに制御出来るのはどうしてだ!?」
「足回りの安定感は、バランサー?それともプログラム?」
地方大会が終わってからの最初の指導で。
なぜか私はプロ達からの質問攻めに遭っていた。
聞くところによると、見たことが無い技術らしい。
確かにアレは私のオリジナルであり、こだわった部分でもあるが。
特に秘密という訳でもなかったので情報公開というと大げさだが、技術を提供した。
するとお返しとばかりに最近技術をこれでもかと教えて貰ってしまった。
少し離れていただけなのに技術の進歩はすごいなと思ってしまうほどの量で、逆に申し訳ない気持ちになる。
でもそのおかげでもう一度戦うかは別として、私の相棒の基本スペックは大幅に向上した。
特に大剣の振りと重心バランス、足回りとの連動による攻防一体の調整が飛躍的に上昇したと言える。
それに地方大会の決勝で戦ったBCSによる暴走状態ともいえるツインマスターとの交戦データは非常に価値が高い。
―――そういえばその暴走した子は、半年は病院生活になるらしいと風の噂で聞いた。
どうやら卒業する先輩達のために全国に行きたかったらしい。
それを聞いて胸が押しつぶされるような気持ちになるが、私が後悔してはダメだ。
勝った私がこんな気持ちを抱くのは、負けた相手を侮辱することになる。
今はまだ堂々と胸を張れないヘタレだけど……いつかは必ず。
■side:京都私立華聖女学院高等学校 2年 鹿島 真琴
プロを相手に練習出来るなんて、かなりの良環境だ。
私はここで更に強くならなきゃダメなんだ。
最初こそ勝ちきれたことで喜んでいたが、冷静になって考えて見ると危ないと言える。
これが全国大会で優勝出来たのだったら良かったのだろう。
けどこれは地方大会だ。
全国ではもっと強い相手が出てくるのに、今がギリギリでは勝ち目など無い。
私の家は、大家族故に貧乏だ。
本来ならこんなお金のかかるスポーツなどやれるわけがない。
しかし何の運命か、私にはコレの才能があり、運良く支援を受けれるようになった。
そしてこのまま運良くプロに入れれば、そこで一定の活躍が出来れば私が家族を十分に養ってやれる。
弟や妹達にも好きなものを買ってやれる。
念願の家族旅行だって行けるようになるだろう。
だから私はここで負ける訳にはいかない。
どれだけ苦労しようが食らいついてでも這い上がってみせる。
他のメンバーがどうだろうが、私が個人で圧倒的な活躍をすればいいだけだ。
そうしてスカウトにアピール出来れば、チャンスは十分あるはず。
次の全国大会は、ある意味で試練となる。
私が全国に通用するかどうかのだ。
そのためにはまず―――
「目の前のプロを倒せるぐらいに強くなるんだッ!!」
*誤字脱字などは感想もしくは修正機能からお知らせ頂けると幸いです。
あまりにも放置し過ぎているので、ちょこっと更新。




