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初日ーーー①

 ヒロイン大運動会。表向きは、各学園がこれまで仲間のヒロインたちと切磋琢磨しあって身につけた技術を各学園ごとに競い合って、意識を向上させようというものなのだが、実際はただただヒロイン達が頼むためだけのイベント事だ。


 この時だけ、ヒロインは普通の少女のように競技を楽しみ、笑い、競い合う。


 だがしかし、こんな日だからこそ狙う輩もいるわけで…………。


「さてと、諸君」


 瑠璃学園学園長用テントに準備されてある椅子に座り、すぐそばに侍らせている四人に目を向ける。各学科の生徒会長と、祐樹だ。


「お客人の方はどうかな?」


「50名を超える人数が敷地内に侵入しています。それと、無人飛行偵察機が数機」


 椿原より渡されたタブレット見ながら分析をする、後方科生徒会長の綾瀬。椿原の至る所に設置してある監視カメラの映像を見ながら、分析をしている。


「素性は?」


「偽装していますが、大半は国内外の政府系組織ですね。また、自然保護団体や、反政府組織……そして、フェンリルと思わしき研究員も」


「こちらは何を探ります?」


 工作科生徒会長の美結が既に、裕樹がここに来るまえに出くわした壊れた無人飛行偵察機を持ち上げる。


「情報のルートを徹底的に、通信の量とその行き先をお願い」


「挑発行為があった場合は」


 強襲科生徒会長の空羽が、ジャガーノートを構える。


「出歯亀が分を超えた時の場合祐樹に一任してあるから大丈夫……それに、何があったとしても、こっちの有利にしか働かないよ」


 椿原も瑠璃学園と同じく、ここら一体は自治権が認められ、日本国憲法が通じず、またアビスとの前線でもあるので、一般人の立ち入りは特殊な許可がない限り侵入はできない。


「なので、先輩方は遠慮なく、この運動会を楽しんでください。こちらには、椿原に提供してもらった多くの無人機がありますから」


 と、祐樹が耳元でインカム型魔力伝達系コントローラーをいじくりながら、足元にいる様々な無人機の機動テストを行っている。


 椿原学園高等部工作科。その技術力だけなら、世界でもトップの技術力を持ち、様々なジャガーノートオプションの開発に成功し、さらにアビスの研究も独自で進んでいる。


 工作科が今回、祐樹のために惜しみなく作った無人機の数は八体。そのどれもが迷彩機能が追加されており、祐樹は常に無人機から送られてくる映像を見ることが出来る。


「調子の方は?」


 美冴が祐樹に話しかける。


「バッチリです。俺、無人機共に不備はなし。いつでも行けます」


「うん、それならOKだね。まぁ開会式が終わるまで行かせないけど」


 ニコリ、と今すぐにでも邪魔者を排除したそうな祐樹を笑顔で引き止める美冴。


「え、でも今行動すれば、早く朝凪さんや金星達の活躍がーーーー」


「言い訳無用問答無用。空羽達!祐樹を打ち合わせ通りに連れていきたまえ!」


「と、言うことでごめんなさいね、祐樹くん」


「学園長命令はほとんど絶対ですので」


「まぁ、私達も少し面白いと考えているので……抵抗は無駄ですよ」


「え、ちょ!?」


 空羽が右腕抱きつき、美結が左腕に抱きついて完全に自由を奪い、綾瀬が背中を押して強制的に移動をさせる。


「あれ!?こっちって生徒会長達が待機する場所じゃなかったでしたっけ!?俺いいんですか!?」


「大丈夫大丈夫。既に皆には面白そうって理由で許可もらってるし、何よりまた会いたいって言った子がいたから」


 やいのやいのと騒ぎながら祐樹を連れていく三人に、行ってらっしゃーいと朗らかに笑って見送った美冴。しかし、次の瞬間には、はぁとため息をついた。


 ーーー全く、どうしてこうも目の敵にするのかねぇ……。


 祐樹達には見えないように隠していた机の上に散らばっている紙には、現在不法にも侵入しているであろう組織の名前が書いてあり、そのどれもがアンチヒロインとして有名な組織ばっかりだ。


 分かっている。彼らが何故ヒロインを恐れているか、その理由も、美冴には分かっている。


 しかし、だからこそ美冴は言いたい。我々がいつそちらに牙を向けたというのかと。フェンリルは例外だが、ヒロイン達は何も国と争いたい訳じゃない。ただただこの国が好きだから守っているのに、何故庇護下に置かれている人間たちがあーだこーだと口を出すのか。


 解せない。本当に解せない。少女たちの犠牲の上で成り立っている偽りの平和にあぐらをかいておきながら、平気で糾弾する。


「………はぁ」


 こう思うと、美冴には本土にいる人間の方が化け物じみているように感じた。

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