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かくして、大運動会は始まるーーー③

 突如として、空へと現れる黒い点。一瞬にしてそれを祐樹だと認識できたフェリシアは、この後どうするべきなのだろうと慌て始める。


 ーーーど、どうして祐樹さん!?ま、まさか私に早く会いたくて!?


 と、絶賛脳内お花畑になり、少しばかりそんな可能性など微塵もない未来を想像して頬が赤くなった。


 上空何千メートルからのパラーシュート無しのスカイダイビング。何百メートルだったら普通のヒロインでも怪我なしで着地できるが、流石に祐樹が落ちてきた高度ではいくらなんでもヒロインであろうと無傷ではすまないだろう。


 なので、祐樹は着地3秒ほど前に、背中から機械仕掛けの羽を展開して、ゆっくりと地上に降り立った。


 そして、祐樹脳での中でぐったりとしている瑠璃学園学園長の姿を見て、急いでフェリシアは彩春に命令を出した。


「っ!彩春!勇気さんにお姫様抱っこされている学園長を急いでトイレに連れていってあげて!」


「は、はい!それでは小鳥遊様!美冴様を預かります!」


「あぁ、頼んだ………結構ギリギリだから、なるべく優しく運んでくれ」


 と言ったものの、先程何千メートルから吐きそうな人抱えてスカイダイビングしたやつが言うセリフではない。


 優しく美冴を彩春に渡した祐樹は、改めてフェリシアと向かいあった。


「……お久しぶりです。祐樹さん。会いたかったです」


「お、おう……」


 思ったよりも直球だったので、少し照れた祐樹。フェリシアは、祐樹に近づくと、故郷ではお馴染みの挨拶である、チークキスをする。


 祐樹に抱きつき、まず右頬擦り寄せ、左の頬へ移動。本来ならばここらで終わるのだが、何を思ったのかフェリシアはもう一度右頬を擦り寄せた。


「ちょ!?フェリシア!?」


「チークキスです。ご存知なかったですか?」


「いや知ってたよ!?知ってたけど、アメリカってあんまりしないんじゃなかった!?」


「確かに、あんまりはしませんけど……祐樹さんは特別……ですから」


 といい、少し離れたフェリシア。その頬は少し赤く染っている。


「……そ、その。やはり異性にチークキスをするのは少し恥ずかしいですね」


「……俺も初めてだったからものすごく恥ずかしかったんだが」


 はぁ、とため息を吐いてから、頭上を見上げる。もうそろそろ祐樹以外のヒロインも降りてくる頃でーーーーー


「祐樹さん?先程そちらのお方と一体何を?」


「詳しくお願いね、祐樹くん」


 ーーーー既にハミングバードのメンバーはなにやらラブコメの波動と、自身の想い人に近づく女の気配を感じたため、早めに降りてきていた。


「………は、ハルモニア先輩……花火先輩………」


 珍しく、彼女達の剣幕に押され、ダラダラと冷や汗をかき始めた祐樹。二人に掴まれている肩が悲鳴をあげている。


「……ま、まさか瑠璃学園だけではなく、祐樹さんを好きなお方が別の学園にもっ!?」


 後ろの方で、カタリナが思わぬライバルの登場に戦慄し、その後ろでは玲音と霧江がカタリナの恋路を心配している。


「ま、まずいよ……祐樹くん、どこまで手を出してんのこれ!」


「既に何人かには手を出しーーーいえ、祐樹くんに堕ちていると見ても大丈夫そうね……カタリナ、大丈夫かしら?」


 そうこうしてる間にも、ヒロイン達は続々と頭上から降りる。


 もちろん、朝凪隊のメンバーもーーーー


「ほ、本当に大丈夫なんですかこれ!」


「大丈夫ですわ!というよりも、アビス大侵攻の時も大丈夫だったでしょう!?」


「あ、あの時よりも高いじゃないですか!」


 菜々はアンナに抱きついており、アビス大侵攻の時よりも飛び降りる高度が高いことにしり込みしていた。


「………菜々、情けない」


「それじゃ金星ちゃん。私たちは先に行っておこっか?」


「そうですね、あまり遅れる訳には行きませんし」


 と、梨々花と椎奈が金星に手を伸ばすと、金星は嬉しそうに二人の手を握り、ヘリから飛び降りる。


「菜々さん。怖いなら私も手を握りましょうか?」


「お、お願いしてもいいですか……」


「はい、それでは行きましょう」


 加奈恵の助け舟に遠慮なく乗っかった菜々は、手を握るでは無く、加奈恵に抱きついから、目をつぶってヘリから飛び降りる。それを見届けたアンナも華麗にヘリから飛び降りる。


 今日は、日本のヒロインが一同に集まって己の力を見せつける3日かけて行われる大運動会の始まりは、もう目の前だ。



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