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勘違いはまたまた加速する

 祐樹が、各学園のトップヒロインと王様ゲームをしている時、瑠璃学園では、またまた新たな波紋が呼び起こされようとしていた。


 濡羽色(ぬればいろ)の少女、朝凪菜々は、学園長代理を務めている強襲科生徒会長の一宮空羽から、隊室の準備ができたという連絡を受け、朝凪隊以下メンバーは、隊室の方へ移動をしていた。


「菜々ちゃんは、『ヒロイン大運動会』のことはしってるかしら?」


「ほえ?」


 三人がけのソファが四つ、ロの形で並んでおり、その対面に座っていた紫の双眸が菜々を捉えた。


 その単語が神楽の口から出ると、外部入学の菜々以外の全員が「あぁ~」という顔をした。


「そういえば、そろそろあの季節ですわね」


「こうしてギルドも出来ましたし、ギルド所属の人しか出来ない競技にも参加できますね」


 アンナと加奈恵か思い出したかのように言った。


「あの、神楽様……その大運動会というのはなんですか?」


「ふふふ……それは私がお話しようか?朝凪隊のみんな?」


 と、部屋の入口から突如として聞こえた第三者の声に全員の視線が集まった。


「あ、真奈様!」


「はーい、久しぶりね、菜々ちゃん」


 青髪ロングを靡かせながら、朝凪隊室へと入っていく高島真奈。工作科に所属する二年生である。


「真奈じゃない、どうかしたの?」


「いえ、椎菜ちゃんのジャガーノートが終わったんで、届けに来たんですけど」


「あら、そういえば祐樹くんがいないので、真奈様に頼んでありましたね」


「そゆこと。ついでに、ギルド結成おめでとー!って言いに来たの。菜々ちゃん、おめでとー!」


「え、あ、ありがとうございます!」


 椎菜にジャガーノートを渡したあと、菜々の頭をよしよしと撫でる。


「それで、神楽様の代わりに私が説明しようともおもうんだけど、いいかな?」


「えと……」


 チラ、と菜々は神楽の顔を見て、神楽はこくんと頷いた。


「それじゃあ!よろしくお願いします!」


「はいきた!それじゃあちょっとホワイトボード借りるね、中学上がり組も、高等部になって色々と変わってるから、聞いておいて損は無いよ!」


 ヒロイン大運動会ーーーと名前は着いているが、認識的には普通の運動会と差はないと思う。


 違う点と言えば、競技はヒロイン用に全て変えられており、そして、各学校ごとに競技を争っていくことである。


 北海道、雛罌粟学院


 秋田県、雪ノ下学校


 石川県、椿原学園


 東京、瑠璃学園


 島根県、聖百合花女学院


 愛知県、青野学園


 奈良県、撫子女学校


 長崎県、苧環学園


 鹿児島県、蓮華高校


 沖縄県、竜胆女学校


 それぞれの学校が、対抗して総合優勝を目指す。それがヒロイン大運動会。


 しかし、このイベントの主な理由は、ヒロイン同士の結束力を上げるのが一番の目的のため、楽しんでやりましょうというのがコンセプトなため、基本的に怪我をすることは無い。


 まぁ、ギフトの使いすぎで倒れることはあるが。


 しかし、ここでひとつ疑念に残るのが、各学園の防衛はどうなるのか?という話である。


 そこもしっかりと対策してあり、同盟国であるアメリカとドイツ、イギリスから各国のトップ勢力のヒロイン達が1日だけ防衛を変わってくれるので、なんの問題もない。


「そして、やっぱり一番の目玉は、各学園で最優秀ヒロインに輝いた人には、学園長ができる限りなんでも願いを叶えてくれるっていうのが一番の醍醐味じゃない?」


「何でも!?」


「そう、なんでも。まぁできる限りだけどね」


「そ、そそそそれじゃあ……!お師匠様と一日お出かけ券とかもありなんですか!?」


 ピシッ、と空気が固まった。菜々の何気ない一言が、「その手があったか!」という顔に全員が変わっていく。


「!菜々ちゃん!そのアイデア貰い!」


 その言葉に反応したのは、去年の最優秀ヒロインの神楽。


「……祐樹と……デート……」


 いつもながら無表情なはずのアデルだが。珍しく頬を少し赤らめた。


「ふふふ……アンナちゃんでも渡せないかなぁ……これは」


「あらあら、梨々花さんには私絶対に負けませんわ……」


 と、乙女たちの戦いが先に始まってしまった。


 当然、そのセリフは外にいた人達にも様子は伝わってたみたいで………。


「………聞いた?」


 瑠璃学園ギルド格付けランクSSSのハミングバードリーダー、新名花火。朝凪隊にお祝いを言いに来たのだが、入るタイミングが見つからず、こうしてドア越しに盗み聞きの真似をしていた。


 先程のセリフをバッチリと聞いていた花火は、後ろにいたハルモニアに視線を向けると、ハルモニアはゆっくりと頷いた。


「こうしちゃいられないわ……私、祐樹さんとデートするために、今から訓練してくるわね」


「連れないわねハルモニア……私も行くわ」


 と、これをさらに遠くで聞いていたアルフヘイムのリーダーの加藤沙綾が、この部分しか聞いておらず、最優秀ヒロインになれば、祐樹とデートができるというのに変わり、それは、一瞬にして瑠璃学園の中に広まった。


 その事を祐樹が知るのは、7時間後……。

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