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人工ヒロイン

 その後も、同じように陵辱されていた少女たちの介錯を続けた。中には、まだ10歳にも満たないような子どもの姿を見つけ、更に怒りボルテージが上がり、死体蹴りをしてしまった。


 ーーー絶対に殺す。ここに居たやつは一人残らず絶対に殺す。


 そんな思いを抱えながら、さらに地下へ降りていく。隠し通路なんてないのは確認済みである。


「ヒッ!なんで騎士(ナイト)がーーーグワァ!?」


 歩く。見つける。血が吹き出る。


 叫ぶ。見つける。血が吹き出る。


 淡々と機械のように殺していく祐樹。既に心なんてものはなく、ただただ下衆共を殺すためだけの機械となっている。


 ーーーほんと、なんだか戦っているのがバカみたいに思えてくる。


 この惨劇を見れば、なんのために祐樹達が、世界中のヒロインたちがアビスと戦っているのか、目的を見失いそうになる。


 ーーーほんと、こんなクソどものために戦っているわけじゃ……守っている訳じゃないのになぁ……。


 カツン、と祐樹はこの施設最下層の地下三階に辿り着いた。


 まず、視界を覆い尽くしたのは水色に輝く部屋と、何かの容器。そこには元々人が入っていたのだろうか。容器の下には名前が書いてあった。


 ーーー実験施設……には変わりないが、一体なんのだ……?


 一個一個見ていくが、特になんのヒントも得られない。とりあえず全部壊すか、と最後の容器を覗いた瞬間ーーーー


「………っ!!」


 人がいた。謎の液体に入れられ、口元を酸素補給機に繋がれた、黄金色の髪の少女。


 認識した瞬間、その容器を粉々に切り刻む。液体が溢れ出で、流石に機械の腕で受け止める訳には行かないので、全身に纏わせていた機械の腕を外し、優しく受け止める。


 その瞬間、ゆっくりとシアン色の瞳と目が合った。


「君は……一体……」


「…………?」


 パチパチと瞬きし、首を傾げる少女。しばらく見つめあっていたがーーーー


「! 、だ、誰だ!?」


「!」


 人に気づかれたので、咄嗟に少女の視界を塞ぎ、発見した研究員を刺し殺す。


 ふぅ、と息を吐き、もう一度少女と視線を合わせる。


 歳は……大体、14くらいだろうか。比較的新しく誘拐されたのだろうか、体に傷はない。


「……立てるか?」


「……」


 こくんとゆっくり頷いたのを見て、下ろしたが、「あっ……」という小さな声とともに、崩れ落ちそうになっていたので慌てて支える。


 仕方ないので、もう一度抱き上げる。


「……あ、」


「………?」


「あなたは、わた、しに、ひどいこと、しな、い?」


「……!………あぁ。俺はな、君を救いに来たんだ」


「すく、い?」


 精神が弱りきっているのか、途切れ途切れに喋る少女に対し、笑顔をうかべる祐樹。


「あぁ、君を助けに来たんだ」


「たす、け……?いたいこと、しな、い?」


「あぁ。しないさ」


 祐樹は、背中から腕を伸ばし、ゆりかごを作り始め、そこに少女を優しく乗せた。


「君救うために、まだまだ俺はやることがあるんだ……その後、たくさんお話しよう」


「……………うん」


 素直に頷いた少女の頭を撫でて、更に奥へと歩いていく祐樹。背中と繋がっているため、ゆりかごもその後を追って祐樹について行く。


 ーーー間違いないな。人工ヒロインだな、あれは。


 人工ヒロイン。もともとヒロインとしての素養がない少女たちをあの手この手で無理やりジャガーノートを使える体にしてしまう実験。


 勿論、使えないものを使えるようにするためには、代償が必要で、もともと体になかった不純物を無理やり注入しているのだ。最悪、体が器に耐えきれなくなり爆発四散する。


 運が良くて心の壊れた廃人だ。だがしかし、フェンリルは人類の可能性とやらを信じて、その実験を辞めない。


 狂気的だ。悪魔に取り憑かれている。ましてや少女を無理矢理攫い、だめなら職員の慰め者に使うなんて、言語道断である。


 ーーーさて、あと何人殺せばいい?


 断末魔の響く施設を、そんなことを思いながら歩き始める。








「なるほど、それがこの子と」


「はい」


 祐樹は、疲れたのか自身の膝で安心しているように寝ている少女の頭を撫でる。


「しかし、人工ヒロインか……禁止にされているものを、奴らは平気な顔をしてやる……本当に、反吐が出るな」


「そうですね……国際機関でなければ、正々堂々潰してやるものの……」


 あの施設に囚われていたのは三十人程度。本当なら、きちんと供養して、遺体を埋葬してあげたかったのだが、そんな余裕は出来ずに、祐樹は、歯を食いしばりながら施設を倒壊させた。


「んん……」


 祐樹の服を握りしめながら、すやすやと眠る。


「とりあえず、この子は保護だ。どんな形であれ、ヒロインならば私達は保護できる盟約がある」


「分かりました」


「そして、しばらくだがこの子の面倒を見てくれないか?勿論、授業はその分免除にする」


「もともとそうするつもりでしたので………分かりました。この子の面倒、きちんと見たいと思います」


 祐樹は、もう一度少女の頭を撫でる。

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