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アビス襲来ーーー②

『現在、推定体長30mのホエール型。予想危険度SS急にアビスがここに時速50キロで接近中です。予想到達時間は………7分です。どうでしょうか?』


 と、祐樹の耳にはめてあるインカムから、椿原学園の後方科の情報を目を閉じて照合させる。


「……うん、情報に差異はなし……しっかりと分析も出来てるから、自信持っていいと思うよ」


『っ、あ、ありがとうございます!』


 と、耳越しに嬉しそうな声が聞こえ、それを聞くと、祐樹も自然とクスリと笑う。


 先程行っていたのは、ここの学園長正吾郎の指示で、祐樹に後方科のアドバイスの方をしていたのだ。


 何様だよお思うかもしれないが、祐樹の探知能力が優秀なことは、前の大侵攻にて効果を示しているため、疑う余地はない。


 もっとも、アドバイスなんてする必要もなく、優秀だった訳だが。


 そのアビスを討伐する人数は10人。本来、難易度SS級は学園の全ヒロインが総出で出撃し、倒せてもジャガーノートの半分は使い物にならなくなる程の実力がある。


 なので、格付けランクSSSのギルドを多数所属している学園はそれほどの実力者が集まっているヒロインだということが分かる。


 リーダーの指揮を渡されたのは、満場一致で祐樹で、その迎撃に、日本で最強のヒロイン10人が集まったのだ。


「ちなみに、あのアビスを討伐するに当たって、被害を最小に抑えるため、『ヒロインズ・チェイン』を行いたいと思っていますがーーー」


 ヒロイン・チェインとは、各々ヒロインが特殊な魔法弾をフィニッシャーと呼ばれる、アビスにとどめを刺す役の人にその特殊弾を発射し、合成させ、全員分の魔力が込められているその特殊弾をアビスに向けて発射し、倒す。


 その威力は、熟練したヒロインであるならばSS+のアビスでさえ、一撃で倒せるほどの威力である。


 しかし、代償として、ジャガーノートの耐久力や、魔力を著しく損なうので、失敗すると大変危険な目にあうため、諸刃の剣でもある。


「ーーーどなたか、フィニッシャーを務めたことがある人……」


 だんだん、語尾が小さくなっていく。だってそうだ。ここにいるのは、全員ギルドリーダーで、ギフトだって共鳴系ーーーつまり、ポジション的にいえばコンダクターになり、フィニッシュを決めるのではなく、最初の一撃を務める人が多い。


 当然、その言葉に誰も手をあげることはなく、シーンとしばらく静かになった。


「……はい、じゃあ俺がやりまーす」


「うむ。それがいいじゃろな」


「頑張ってね、祐樹くん」


「はっはー」


 あまり嬉しくない国崎姉妹からの応援を受け、一同は海を向く。遠くには、既にうっすらとだがアビスの姿が。


「総員、配置へ」


『了解』


 先程まで、緊張感の欠片もなかった一同だが、流石に歴戦の猛者なので、雰囲気を一瞬で切り替えた。


 全員が配置に着いた瞬間、ザザっ、とインカムからノイズが聞こえる。


『こちら、後方科。ギフト連結システムの方は使用しますか?』


 インカムの魔力を通して、ギフトを分け与えるシステム、通称ギフト連結システムは、この前のアビス大侵攻の時に成功したので、今回もするか?という提案だったが……。


「……いや、大丈夫だ。ここの皆でなら知覚系の助けなしでもいける」


 ヒロインズ・チェインの成功率を大きく引き上げる知覚系のギフト。普段なら鷹の目でヒロイン全員の位置を把握しながら特殊弾を集めていくのだが、今回はそんな事しなくても、プロフェッショナルが集まっている。


『……分かりました。小鳥遊さん、皆さん、ご武運を』


『……なんか、祐樹殿にだけ丁寧じゃないかのう?』


『仕方あるまい。椿原にとって、祐樹は英雄と変わりないんだから』


「……英雄って……」


 椿原の過剰すぎる評価に思わず苦笑する。


「とにかく、今はアビスを倒すことだけに集中しましょうーーーーギフト、発動」


『カリスマ!』


『天秤の御剣!』


『レジスト!』


 全九人分の共鳴系のギフトのおかげか、祐樹の体とジャガーノートは物凄い絶好調である。


 祐樹が跳ねる、その瞬間、一発目の特殊弾が祐樹へと発射される。


「綺麗に終わらせてください」


 キン!と美波の魔力の詰まった特殊弾をジャガーノートで受け止め、クルクルと回転して飛ばないようにする。


「受け取るのじゃぁ!」


 二発目、樹莉からの特殊弾をジャガーノートで受け止めると、二つの魔力弾は融合し、一つになる。


「が、頑張ってください!」


 三発目、神奈からの激励とともにやってくる特殊弾を受け止め、またまた一つになる。


「行け!」


 四発目。


「頑張って!」


 五発目。


「はぁ!」


 六発目。


「んっ!」


 七発目。


「任せる!」


 八発目。


「行ってください!」


 九発目。


 九発分の魔力と、祐樹のジャガーノートに貯蔵してある魔力をたっぷりと吸い込み、10人分の魔力。


「いっっっけぇぇ!!」


 キン!と特殊弾を一回浮かし、回転しながらジャガーノートをまるでバッドのように弾へ当てると、勢いよく特殊弾はアビスの元へと向かいーーーー


『……!あ、アビスの反応、沈黙しました!』


 その四肢を、海の藻屑へと変えた。

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